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未来世紀から異世界へ!  作者: 桂木けい


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第02話 異郷の空

『……システム再起動……OSセルフスキャニング終了、オールグリーンを確認。現在システムにハッキング等の痕跡を含む障害レポートはありません。続けて周囲の索敵及び現況を確認、半径1キロメートル以内の範囲において作戦対象となり得る脅威は確認出来ませんでした。これよりシステムから本体のマインドウェイクを行い、ユーザーログインを開始します……』




 目が覚めると、そこは月面基地にあった病室の白い天井では無く、どこまでも続く青空が広がっていた。


 先の戦闘で重傷を負ったオレは月面にある軍の施設で治療を受けていたはずなのだが、気がつけば何故か地球型惑星の地上、それも深い森の中で木々の間から大空を見上げて寝っ転がっていた。


 周囲には背の高い石柱が36本も建っていたから、まるで古い遺跡にあるストーンヘンジにしか見えないが、これは敵に判らない様に擬装された物質転送装システムだと思われる。


 ここから月面のオノゴロ基地へと戻れないか調べてみたが、施設が老朽化しており再度の転送は無理だと判断した。


 それにAIの構造解析では、ここは受信専用の簡易ゲートらしく通信プロトコルも不明と言う事だったので、どのみちここから帰るのは難しそうだ。


 そんな場所で空を見上げて、大きな羊みたいな形をした大きな雲がゆっくりと東へ向かって流れて行く様子をじっと見つめながら、何故こんな場所にたった一人で居るのかメモリー内にある記録を思い返してみる。


 確かオレは大型の決戦用機動兵器となって部隊への復帰を希望していたはずなのだが、今の状況から考えると、それは何かの手違いで、まだ侵略者(アグレッサー)どもの脅威に曝されていない平和そうな後方惑星へと送られたらしい。


(念願の巨大ロボには、なれなかったみたいだな……)


 脳内に埋め込まれたバイオチップに内蔵された通信ユニットからは、まだ新たな作戦コードや命令それに任務等に関する記録は無く、もしかしたら本当に軍から離脱させられたのかも知れないと考え少し不安になる。


 天涯孤独のオレたちに家族や故郷と言った概念は存在しない。その代わりと言っては何だが、物心ついた頃から出入りしていた軍の施設と、心許せる仲間たちが居る地球防衛軍のJ隊だけが心の拠り所だった。


 だが、密かに想いを寄せていたアイナ1尉のピンチを救う為、自分の身を犠牲にした結果このような状況に陥ってしまったのは仕方が無いと言うべきだが、熟練の兵士であれば救った相手は勿論の事、自身の身の安全も確保して然るべきだろう。


 もしあの時の大ケガが原因で、もう戦えないと上層部から判断されたのであれば、このように安全そうな惑星へ搬送される理由としては尤もな話で直前までの記憶が失われているのは、退役者が軍の作戦内容を知ったままでは何かと不味かったから処理されたのかも知れないが、退役者が戦争の悲惨な記憶を引きずる事で、今後の人生に障害が出るのを防ぐ為の措置だったと考えれば、そこに異論を唱えるつもりなど更々ない。


 今時の日本人と言うか……現代人であれば、誰もが体内にバイオコンピューターの1台くらい内蔵しているのは普通の事だし、例え知らない場所に飛ばされたとしても、その場所にある惑星ネットワークへ接続さえすれば其処が何処かなど瞬時に判るはずだ。


 それに、もし何か危険な目に遭遇したとしても、元宇宙自衛官のオレなら自力で何とか出来るだろう。


 そんな現代人たるこのオレだが、先程から不安を隠せないのは通信システム障害のせいで、今居るこの惑星が一体何処なのか全く判明しない事がストレスの原因となっている。


 この場所には何故か軍用GPSはおろか商用GPSすら稼働しておらず、こちらから何度も信号をリサーチしても現在の座標を得る事が出来ないので、地上に居るにも関わらず、まるで大海原にたった一人で放り出された遭難者ような気分を味わっている。


 可能性としては低いが、この惑星軌道上にあるGPS衛星が全て破壊されたと仮定して今後は行動する必要があると考え、それならオレが自分で行動してレーダーで探知した範囲を自動マッピングするアプリでも起動しておけば、時間は掛かるだろうが地形情報を集める事は出来るはずだ。


 もしこの惑星の制宙権が、もう既に侵略者(アグレッサー)どもに奪われてしまっているのだとすれば、ここでの戦闘も熾烈を極めるだろうが、それでもオレは必ず生き延びて皆が待つJ隊へと復隊すべく行動を開始しなければならない。


 周囲に生い茂っている植物の植生を調べても、アーカイブの中に照合可能なデータは見当たらないが、所々に食用が可能そうな実が成っている事もあり、この先数日は森の中を彷徨ったとしても食料確保の見通しは立ちそうだ。


 それに転送ゲートがあったのだから、きっとこの付近にはどこかの人里まで繋がる街道があってもおかしくないし、そこで町か村でも見つかればこの惑星に関する情報が手に入る。


 そしてより大きな都市まで辿り着く事が出来れば、いずれは軌道エレベーターで皆が待つ宇宙へと舞い戻る事が出来るだろう。




 ……などと考えていた時があったのは、もう今では良い思い出だ。


 おかしい。


 あれからどれだけ進んでも森から抜ける事が出来ないのは何故なんだ? ここは兵役を退いた者が余生を送る為の安全かつ快適な辺境惑星ではなかったのだろうか?


 それともオレを搬送する時に何かの手違いが発生して、誰も知らない何処かの未開惑星にでも送られてしまったのだろうか……など次々と疑問が湧いてくる。


 もしこれが事故なら、そうと判断出来る何か証拠の様なものがメモリーに残されていても良さそうなものだが、今の所そういった記録は無い。


 それでも搬送時の手違いだと仮定して行動を始めたのは、もしこれが本当に何かの事故で見知らぬ辺境へ飛ばされたと考えたら、自力で帰って来る自信が無かったから……ではないと思いたい。




『システムより警告。前方12時の方向、距離100メートルに3体の未確認生物の接近を感知しました』


 オレの肉眼に映る風景に脳内マップの映像が網膜の内側へAR(拡張現実)表示される。


 そこには緑に埋め尽くされてたフィールドマップの上に、赤い光点が3つ表示されており、それらがこちらに向けて移動して来るのが確認できた。


 そしてこの赤く光るマーカーは敵が武装しており、その行動から攻撃又は敵対の意思ありとAIシステムが自律判断した結果を示してくれている。


「システムコール。これより防衛または迎撃モードに移行する。火器管制システム起動、何か武器は無いのか?」


『システムより回答。現在、火器管制システムに深刻なERRORがあり、ユーザー及びアドミニストレーターからの命令実行は不可能な状態です。現在使用可能な武器は腰部にマウントされたアーミーナイフのみとなります』


 なに?! 現代戦を戦う地球防衛軍の機動兵士であれば、誰もがその体内にいくつかの火器や兵装が内蔵されているはずではなかったのか?


 確かに部隊から支給された刃渡り30センチ程度しかない対装甲ブレード(オレがJ隊へ入隊した時に部隊の皆から記念に送られたナイフ)なら、今も腰のベルトホルダーに帯刀しているが、侵略者(アグレッサー)どもを相手にこれだけで戦うのは少々無理がある。


「アーミーナイフ、これだけか?!」


 今、樹木の間からチラリと敵影が見えた。


 その体長は約130センチメートル程度で皮膚は緑色の人型をしているが、普通のヒューマノイドには見えなかった。


 あと敵の武装は錆びた剣(?)と棍棒にしか見えないが、あれはオレがこれまで戦って来た侵略者(アグリッサー)と言うより、古い西洋のファンタジーの物語に出てくるゴブリンにしか見えないのは目の錯覚だろうか?


 いや、まてよ……もしかしたら侵略者(アグリッサー)の新種と言う可能性もあるし、オレを見つけて攻撃するつもりなら敵に間違いない……はず。


 そして、あれが敵なら自衛官であるオレは、それを専守防衛かつ殲滅するだけで何処にも悩む要素はない、いつも通り戦って生き残る。それだけだ。

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