第七章 月下の選択
【敵か、味方か?】
「ルシウス……パパ……」
アザゼルの声は泣き声を帯び、月光に琥珀色の瞳が涙で輝いていた。「離れないで……傍にいて……」
彼女の尾は無意識に彼の手首に絡みつく。毛皮の下の肌は驚くほど熱かった。修道服はもはや乱れ、優雅な肩線と首筋を露わにしている。
「あの……アザゼル、すごく苦しい」
傷ついた小獣のように咽び泣く彼女。
「傍にいて……怖いの……」
ルシウスは干し草の寝床に片膝をつき、大きな手をそっと彼女の頭に置いた。柔らかな黒灰色の毛皮に指が沈み、その下で速やかに鼓動する脈拍を感じ取れる。
「ルシウス……」
彼女は突然顔を上げ、眼中に葛藤と羞恥がちらついた。
「あなたの唾液を少しちょうだい……」
その言葉で空気が凍りついた。アザゼルはすぐに顔を干し草に埋め、声を曇らせて言い訳する。
「だって、あれは聖水みたいなものじゃないから……少しは自分を抑えられるから……」
彼女の尾の先は緊張して丸まり、声は次第に小さくなっていく。
「つまり……そういうこと……もう……恥ずかしい……」
ルシウスの手が一瞬止まった。月光の下、彼女の赤くなった耳先が微かに震えているのが見える。これは甘えではなく、血脈の本能に駆られた絶望的な助け乞いだ。
「まったく……どうしようもない子だ」
彼の低い声には珍しく諦めが含まれ、指先で彼女の熱い耳朶をそっとなでる。その動作にアザゼルは全身を震わせ、泣き声のような嗚咽を漏らした。
彼の指先が彼女の顎を支え上げた時、アザゼルは目を堅く閉じ、長いまつ毛は濡れて互いに絡み合っていた。しかし、予想されていた接触は起こらなかった——
ルシウスは短刀で手のひらに細い傷をつけ、鮮やかな血のしずくがゆっくりと滲み出る。
「この方が効果的だ」
彼は手のひらを彼女の唇元に差し出し、声は人を安心させる落ち着きを示していた。
「俺の血には、光の遺民の力も流れている」
アザゼルはぼんやりとその鮮紅色を見つめ、本能に促されて注意深く近づいた。彼女の柔らかな舌先が傷口に触れた瞬間、二人は同時に軽く震えた。
「もう十分だ」
三滴目の血を飲み込んだ時、ルシウスは手を引いた。傷口の血はすでに止まり、淡いピンク色の新しい傷跡だけが残っている。
アザゼルは彼の膝の上で丸くなり、激しい震えは次第に収まっていった。あの甘ったるいフェロモンは徐々に消え、代わりに彼女本来のすみれの淡い香りが漂う。
「ルシウス、パパ……」
彼女は眠そうに彼の膝にすり寄り、声にはかつてない依存と安らぎが込められていた。月光が彼女に銀の縁取りを施し、その銀灰色の角がそっと彼の脚の側面に触れている。
この混乱した月夜に、契約よりも深い何かの絆が静かに育ち始めていた。
「もう……」
アザゼルは熱い頬を彼の膝に埋め、声はこもって聞こえた。
「私が苦しんでる時にキスされるかと思ったのに……」
彼女の尾は無意識に彼の手首に巻き付き、柔らかな毛皮のブレスレットのようだ。
月光は壊れた窓から差し込み、彼女の銀灰色の角に柔らかな光の輪を落とす。
「まじめな人なのね……」
彼女は小さく呟き、その口調は失望とも安堵ともつかない複雑な感情を帯びていた。
「もう……嫌い……」
ルシウスの手は依然としてリズムを保って彼女の背中を軽く撫でており、手の下で張り詰めた筋肉が徐々に緩んでいくのを感じ取れる。あの甘ったるいフェロモンはすでに薄れ、彼女特有の、少し乳香が混ざったすみれの香りだけが残っている。
「あの」
彼女は突然顔を上げ、琥珀色の目が暗がりで微かに光る、水に浸った蜜のようだ。
「今夜は私と一緒に寝てね……」
ルシウスが答える前に、彼女は急いで付け加え、指は無意識に彼の黒い聖服の裾をつかむ。
「抑えきれないかもしれないから、ちゃんと面倒見て……」
彼女の声は次第に小さくなり、最後の言葉はほとんど夜の闇に消えそうになる。
「あの……私の体はとても温かいの、可愛いの……悪魔だからって怖がらないで……」
この言葉は支離滅裂で、威勢よく見せたい一方で、心底の恥ずかしさを隠しきれていない。常に活発に動くあの耳でさえ、今は緊張して銀髪の間にぴったりと貼り付いている。
ルシウスは膝の上で丸くなる悪魔の少女を見下ろす。さっきの騒動で、修道服はさらに乱れ、襟元は歪んで精巧な鎖骨を露わにし、スカートの裾は膝まで捲れ、細かい毛で覆われたふくらはぎを見せている。あの強靭な山羊の後ろ足は落ち着きなく互いに擦れ合い、主人のまだ完全には鎮まっていない心情を露わにしている。
「それと……」
彼女は突然何かを思い出し、目を輝かせ、幾分かの期待を込めて彼を見つめる。
「市場に行ったら、私に寝間着を買って」
彼女は身に着けた皺くちゃな修道服を引っ張る。
「これで寝るのは不快……」
要求が多すぎると気づいたのか、彼女はまた小声で付け加える。
「普通のでいい……柔らかいのが……」
指で形を描きながら。
「できればレースの飾りがついてるやつ……」
夜が更け、ルシウスは壁によりかかって座り、アザゼルを自分の腿の傍らに枕をさせた。アンジェはいつしかこっそりと近づき、アザゼルの背後で金色の毛団のように丸まり、今夜ばかりはこの捻くれた仲間を特別に見守るかのようだ。
ルシウスが彼女が眠ったと思った時、突然指先に温かな感触が走った。アザゼルは無意識に彼の指を一本握り、慰めのおもちゃを抱えるように胸に当てている。
「ルシウス……パパ……」
彼女は夢の中で呟き、口元をわずかに上げる。
「ピンクの……買って……」
月光はこの奇妙な三人組の上を静かに流れる。屋外では、晦暗たる境の夜風が新しく生えた野菜の苗を撫で、アンジェが触れたあの苗は月明かりの下でそよそよと揺れ、葉脈の中の金色の光がちらちらと見え隠れする。
そして遥か東の峡谷では、最初の一缕の月光が秘密の入口を照らしている。幾つかのかすかな影が露店の日よけを設置し、満月の夜が正式に訪れる時の喧騒を待ちわびている。
明日、彼らを待ち受けるのは未知に満ちた冒険だ。しかし今夜だけは、このようやく手に入れた安らぎに浸らせてやろう。
……
待て
なんなんだこの展開は……違う!
ルシウスの指先には、まだアザゼルの毛皮の温もりが残っている。鼻先には、彼女の乳香とすみれが混ざった甘い香りがまとわりつく。しかし、一陣の寒気が脊椎から頭頂へと駆け上がる。
「罠か?」
この考えは冷たい水を頭から被ったように、彼を瞬時に清醒させた。
事態が普通でなければ、必ず妖しい。
軍事訓練を受けた悪魔の斥候、上古の悪魔の末裔が、どうしてこれほど簡単に全ての防御を脱ぎ、ひよこのような依存すら示すことがあるだろうか?あのいわゆる「発情期」は、時期が偶然にもあまりにも都合が良すぎる、敵対勢力の市場へ向かう前夜にちょうど重なり、最大限に彼の警戒心を解くことを目的としている。
あの特別な情動は、今や彼に愚かされたことへの怒りしか感じさせない。
彼はそっと、まだ眠っているアザゼルが彼の服の裾を握っている手を離し、瞳は再び冷たい鉄のように硬くなる。温情は奢侈品であり、復讐の道に損失は許されない。彼は音もなく立ち上がり、聖水ガトリングの発射機構を点検し、さらに幾つかの警戒符文が刻まれた小さな道具を休憩ポイントの周囲に密かに配置した。
「その芝居をやりたいなら、付き合ってやろう」
ルシウスは冷たい銃身を撫でながら、心中で冷笑する。
「だが最終的な審判は、俺が引き金を引く」
あとがき
読者の皆様、いかがでしたでしょうか?
悪魔の甘えとルシウスの警戒心、そしてアンジェの覚醒…三者三様の関係性が少しずつ紡がれる第七章となりました。
アザゼルの「発情期」が本当なのか、それとも何かの策略なのか――この答えは次章以降で明らかになっていきます。ルシウスはこの絆を信じるべきか、それとも貫くべきか。皆様のご感想が非常に気になります!




