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第9話 攻略キャラとサブ攻略キャラ

 自分の使用人に圧をかけられ、若干の心労を抱えつつ寮室に戻る。お帰りなさい、と早速笑顔でルーリィに迎えられ、心労が更に増した。


「あの、エミリオをクビにはしないであげてください。私がお願いして無理に手伝ってもらっているだけなので」

「本職を疎かにしない限りは、クビにする予定はないわ」

「よかったあ……」


 客人用の椅子がないのもあってベッドに座っている彼女は、ほっとしたように大きく息をついた。私も椅子に座り、気が進まないながらも彼について探りを入れることにした。


「プライベートな話題だから、話したくないのなら無理に教えてくれなくていいわ。貴方とエミリオは……普通の幼馴染なの?」

「はい、エミリオは攻略キャラの好感度を探ってくれたり、噂を調べてくれたり、ルート中でも色々協力してくれたり、絶対に裏切らないでくれるサブ攻略キャラなんですよ!」


 何よその使い勝手のいい駒は。幼馴染にそこまで尽くすのって、平民の間では普通なのかしら。というか、微妙に聞きたい内容とずれている。


 『境界のシルフィールド』によると、エミリオは白魔法の素質がないため学園には入学しない代わりに、幼馴染として全面的にサポートする裏方らしい。ただし彼と結ばれる可能性もあるらしく、そうなると当然ながら関係性も変化する。


「今までただの幼馴染や兄だと思っていたのが、学園という異なる環境で距離を隔てて、ふとしたきっかけで互いに自分の感情を自覚する……という王道展開なんです!」


 どんどんずれていく話題をどうにか止めるべく、片手を上げる。


「実際の所、どういう関係だったのかと聞いているのだけれど」

「はい、世話好きで頼れるお助けキャラです!」

「予言書の内容ではなくて、リリアの記憶の中では、彼はどういう存在だったの?」


 聞きたいのはリリアの記憶の方だ。ルーリィは私の質問を受けると、両手を頭に当ててうーんと唸りだした。リリアとルーリィが完全には融合していないからか、相手の記憶を掘り起こすのには手間取っているらしい。


「えーと……エミリオとは、孤児だった彼をリリアが助けたのがきっかけで……小さい頃はお兄ちゃんみたいに思っていた、のかなあ……。成長してからは頼り過ぎないように自重しつつ、大事な家族には変わりない、みたいな……?」


 やけにあいまいな説明ね。もしかして、リリアの記憶は読み取れても、感情までは分からないのかしら。エミリオが頼られたがっているのは、兄離れした妹を寂しく思っているから、とか。つまり……シスコンを拗らせすぎて、兎に角誰かを世話したいのかしら。世話好きと評されているし、ありえるわね。


「クロリンデ様も、気軽にエミリオを頼ってくださいね。彼には事情を伝えてお願いしているので、快く協力してくれますよ!」

「遠慮しておくわ」


 話を聞いた後だと、色んな意味ですごく頼り辛いわ。それに私の使用人とはいえ、『幼馴染に頼られたから』協力してくれるというのは、ちょっと引っかかる。とはいえ私にも協力者がいれば便利でしょうね。できれば喧しいルーリィ以外で。権力があればなお便利かしら。と、なれば。


「それよりもノーレス先生を味方につける方が、色々と便宜を図ってくれそうね」

「よりにもよってそのルート!? そこはやめときましょうよ!」


 ルーリィはぶんぶんと首を横に振って猛反対した。この子、やけにノーレス先生には辛辣というか、警戒しているわね。


「あの人性格が悪いですし、リデルの方がよっぽどマシですよ!」

「……悪魔の方がマシなの?」

「はい、ノーレスに比べたらリデルなんて可愛いもんです! むしろ純愛!!」


 純愛って。あの悪魔がルーリィに可愛く純愛って。駄目だわ、想像の限界を超えてしまっている。ある意味すごく気になるわ。


「他にも、トラヴィスとかの方がずっと信頼できますよ!」

「誰よその方」

「王子の護衛です!」


 先生どころか王子の護衛まで呼び捨てなのね、この子。結構図太いわ。護衛の男は見かけたことがある程度の仲だから、ルーリィの推薦通り信頼できるかの判断はしかねる。ノーレス先生と会話したのもほんの少しだけれど、ここまで悪く言われると、逆に気になってくるわね。


「うう……どうしても彼に協力させたいなら、これを伝えれば関心は引けると思います。どう転ぶかは保証できませんが」


 ルーリィは心底嫌そうに顔をしかめ、声のトーンを落として秘密を伝えてくる。そんな厄介な切り札、使わない方がいいんじゃないかしら。


 まあ聞くだけ聞くけれど、本当に誰かと手を組みたいわけではない。悪魔の鬱陶しいアプローチを無視していれば、悪魔にならずにすむのだろうし。特専クラスの方々が結界を張り直すべく試行錯誤しているのをしり目に、私は平和に学園生活を送れるのではないかしら。


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