表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/53

第31話 肝試し後

 真っ白な天井。カーテンの裏側から差し込む太陽の光。朝だわ、と直感的に理解した。ルーリィの言っていた、悪魔の罠……夢の世界から、帰ってきたのね。


「クロリンデ様―っ!!」


 目を開けた私に、がばりとルーリィがのしかかってくる。あの妙な異常空間に晒され過ぎていたからか、本当に自分は戻ってこられたと実感が湧いてきた。すぐにでも引きはがしたいという思いとは別の感情が湧きかけて、一時的な気の迷いだと自分に言い聞かせる。


「よ、よかった、よかったです! もう本当に、目覚めなかったらどうしようかと」

「ルーリィ、お願い。一つだけ教えて」


 羞恥よりも今は、確認しなければならない事があった。しがみついてくる両肩に手を置き、そっと顔を寄せる。驚いた彼女の瞳の中には、真剣な表情を浮かべる私の姿があった。


「悪魔令嬢の私は化粧が深くて、こんな感じに露出過多の服を着て、リデルとべたついていたのかしら」

「はい、そうです」


 絶望的な宣告に、脱力した私はシーツを頭から被った。なんということ。あのような黒歴史が本来の私だなんて、最悪だわ。絶対にああはなりたくない。突然シーツに埋もれた私を心配する声が届き、どうにか平静を取り戻してシーツを払いのけた。


「貴方の方こそ、何ともなかったの?」

「えーと……私はエディトと合流したんですけど、いつの間にか夢の世界から脱出していたみたいで」


 彼女の発言をまとめると、ルーリィだけが先に元の世界に戻っていたらしい。自分の周囲で寝入っている皆に大層驚き、どうにか医務室まで全員を引きずっていったのだとか。悪魔の罠にかかるどころか、自力で脱出してしまうだなんて。ルーリィの素質が、予言書の展開を上回っていたのかしら。いえ、ならそもそも一度夢の中に囚われはしないわよね。夢から醒めた理由を本人も分からないというのが、少し奇妙ではあるけれど……。


「ちょっと待ちなさい、貴方、エディトと一緒だったの?」

「大丈夫です、フラグは立てていませんから!」


 そちらの心配はしてないのだけれど。あの頼りない男と同行して危険な目に遭わなかったか、心配だっただけ。ほんの少しだけ、ね。


「おっ、あんたも目が覚めたんだな」


 カーテンを無遠慮に開けたヒノが、にかっと笑う。朝焼けに映る制服はどこも赤く染まってはいない。夢の中で怪我をしても問題ないとルーリィが言っていたのは事実だったと、改めて確認して小さく息をつく。この感情も、ヒノには読まれているのかしら。いえ、私の感情についての指摘は、出鱈目だったので、信憑性は低いのだけれど。ヒノルートについてルーリィに教えてもらうのは遠慮しておこうと、何となく思った。


「他の連中は皆部屋に戻っていったし、あとは、ノーレス先生だけだな」

「まだ起きていませんの?」

「そうそう、爆睡してる」


 ヒノの視線の先には、カーテンで覆われたベッドがあった。立ち入り禁止と書かれた紙が貼られているのは、彼の仕業だろう。寝ている彼をそっとしておこうと判断したのかしら。ヒノから何があったか聞かされていたのだろう、ルーリィは呆れと驚きの混ざった表情でベッドの方を見やった。


「無理やり自力で夢の世界を探索して空間を壊すなんて、やっぱチート……」

「流石は魔法学の先生だよな。前の決闘だって、トラヴィス先輩に楽勝だったし」


 そう言えば、私達の前に現れた先生は大人の姿だったわね。そこを何も指摘せずにいるなんてと思っていると、ヒノはルーリィが見えない角度で口に指を当てた。内緒にしておこう、という配慮だろう。まあ、ルーリィは彼の正体を知っているのだけど。


「滅茶苦茶ぐったり寝てるし、起きるまでそっとしておこうぜ。クロリンデ、誰にも邪魔して起こされないように、見張っておいてくれよ」

「ええっ!? クロリンデ様だって疲れてるんだし、寮で一緒に休みましょうよ!」


 紙まで貼っておいて、私に敢えて見張らせようだなんて、作為的なものを感じるわ。でも……今回ばかりはその案に乗ろう、と思った。


「ルーリィ、貴方は先に帰っていて」

「で、でも私」

「私が戻ったらテストを行うから、復習でもしてなさい」

「いやいやいや、もう今日はのんびりしません!?」

「へー勉強か、折角だし俺も付き合おうかな」


 わざとなのか、彼が話題に乗ってくる。テストの人数が増えた所で問題はないから頷くと、ルーリィはひええと悲鳴を上げた。励ますように、ヒノはぽんと彼女の肩を叩いた。


「テストが無事に終わったら、一緒に食事に行こうぜ。今度は三人でな」


 当たり前のように私を頭数に入れられ、少し驚く。それ賛成、とルーリィがやる気を取り戻して同意したから、拒む必要もないかしらと思い直した。ただ、同年代の人達と損得抜きで、こうやって外出の約束をするなんて学生らしい経験が初めてだったから。戸惑いつつも、悪くないと感じている自分がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ