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第八話「アガルズの伝説、最強の勇者」

 

 伝説の勇者。


 それは三百年前、かつてこの国【アガルズ王国】に実在した男のことだという。

 出身、年齢ともに不明、性別は男であった記録されている。


 勇者に関する文献で正式に残されているものは数少ない。

 そのため多くの情報が推測の域を出ないのだとか。


 魔法使いだったのか剣士だったのか、具体的な戦闘スタイルは不明。

 それなのになぜ実在した人物として後世にまで語り継がれているのかというと、勇者に関する記録がかつて敵対していた数々の国にも残されていたからだという。


 この国の兵士として戦い、兵力も乏しく常に各国からの侵攻に怯えていたこの国を勝利へと導いた存在。

 それがアガルズの伝説、最強の勇者。


 そんな彼は国を繁栄させたあと、ある日突然置手紙一枚を残しこの国から去っていったという。

 その置手紙には、『故郷に帰る。探さないでくれ。この世界がやばいよーって時に呼んでくれたら助けに行く。そのための方法をここに残す』と書いてあったらしい。


 その置手紙を見た当時の王は、自らこの地を去った勇者を無理やりに呼び戻すことは恩を仇で返す行為だといい、禁止した。

 この世界に災いがきたときに、その時初めて彼を呼び戻そうと。


 勇者は何を考えどこに行ったのか、それらは全て不明である。

 だが三百年経った今もなお、いつか戻ってくることを信じるものは多い。

 それほどまでに彼の残したものは大きいのだろう。



 ーーーそして今に至る。



「三百年前の話なんだろう?普通に死んでるんじゃないのか?」


「普通ならな。だが勇者はそうではない。残されている文献その全て〈世界に災いが起きたとき、勇者は必ず戻ってくる〉と書いてあったそうだ。おそらくはそう信じさせる何かがあったのだろう」

「信じさせる何か、か」


「他にもわずかだがその人物像や私生活についての文献もあるのだが」


「へぇ、どんなの?」


「見るに堪えんものだ。わざわざ言う必要もないだろう」


 ろくなやつじゃなかったんだな。

 そんな気はしてたけど。


「置手紙に書いてあった、勇者を呼び戻す方法ってなんなんだ?」


「魔法陣が書いてあったんだ。今までに見たこともないほど複雑なものが。この置手紙が見つかった当時の技術ではこれを完成させることはできなかったらしい」


 勇者様は相当凄い魔法使いだったんだな。

 っていうか試そうとしたのか、王の言いつけ全然守ってないじゃん。


「だが数年前、この魔法陣を完成させようとアガルズ王が自ら立ち上がってな、国中の魔法学者を集めてついに完成させたんだ」


「三百年経ってやっと勇者の魔法に追いついたのか、改めて化け物だな」


「ああ。勇者が残した魔法陣が本物だと知るや否や、すっかり王は勇者にご心酔だ」


「そうだろうな。すっごいニコニコしてたし。でもなんで今になって勇者を呼び戻そうとしたんだ?」


「この国が今危機的状況だからだ」


「そうなのか?そんな感じはしなかったけど」


「それはお前がきたからだ。みな安心したのだろう」


 あっ、ごめんなさい。


「複数の国と睨みをきかせあっている。今のままだといつ戦争になってもおかしくないだろうな」


「勇者が帰ってきたら戦争にならなくて済むのか?」


「いや、それは分からん。だが手を引く国も現れるだろう。勇者とはそういう存在なのだ」


「勇者勇者って、本名はなんていうんだ?」


「わからん」


 わからない?

 それだけ有名なのに?


「記録にはなぜか【伝説の勇者】としか残ってないんだ。だからみな伝説の勇者とか勇者と呼んでいる」


 なにそれかっこい。

 いいなそれ、俺もなにか凄いことしたら本名を隠そう。

 俺には縁のない話だけれど。


「何を変な顔している貴様」


 あら失礼。顔に出てたわね。


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