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第一話「アンラッキーな日」

 

 俺の名前は松平駆まつだいらかける、大学3年生。


 どこにでもいる普通の大学生だ。

 普通に中高を卒業し、普通の大学に通っている。


 ただひとつ、周りと違うことがあるとすればそれは【ラッキー】が多いこと。


 昔からやたらと運だけは良かった。

 ただ運がいいのではなく、「あぶねぇぇぇ!ラッキーーー!」という感じの運のよさ。

 例えば、ベタな話だが靴紐を結びなおそうと立ち止まると目の前に車が突っ込んできたとか、電車に乗る際に使うICカードの残高が帰りの分でちょうど0円になるとか、そういうものだ。

 そういう大きいラッキーもあれば小さいラッキーもあり、あらゆる場面で「ラッキー」が起こってきた。



 ーーーだけどその日は様子が違った。



 アラームをかけ忘れるとかはたまにあるのだが、アラームの時間がなぜか一時間遅く設定してあり大寝坊をかました。


 大学生には単位というものがあり、決められた単位数を越えなければ留年になってしまう。

 今日は後期最後の授業、つまりテストの日だ。

 俺の単位数はギリギリ、これを落とせば留年が決まってしまう。


 欠席による別日等の処置なし、遅刻は欠席と同じ扱いとなる。

 尚、評価は100%テストの点数。


 かなり外れの授業だった。


 目が覚めてから今の状況を把握するまでに数秒のロスタイムこそ生まれたものの、そこからは見事なものだった。

 ICカードと筆記用具だけを持ち、真っ直ぐ家を飛び出す。

 当然、寝ぐせマックスの寝巻姿。

 家の鍵も閉めていない、靴もコンビニ用のサンダル、これは走りずらいので判断ミス。


 数分後、駅に到着、そして乗車。


 乗車時間は10分、テスト開始まであと15分、駅から大学までは徒歩3分だが走れば1分ちょい、ギリギリ間に合う計算。

 一番大事なのはこの乗車時間だ。

 各駅停車の際にいかにスムーズにいくかに全てがかかっている。


 幸運なことにまったく混んでいない。

 出口側の席にも座れた。


 1駅、2駅、3駅、4駅、5駅・・・・・・


 かなり順調だ。

 あと二駅、もうこの次だ。


 もういいだろうと席を立ちあがり出口側のドアに立つと、目を疑いたくなる光景が広がっていた。


 なんと目的地ひとつ手前の駅、ドアが開くなり大量の群衆がなだれこんできたのだ。

 そのまま勢いに流され一瞬にして出口とは反対側のドアまで追いやられた。

 人の乗り降りが少ない駅のはずなのに⋯⋯⋯。


 今日に限って想定外の出来事が立て続けに起こる。

 なんで今日なんだ、くそ。


 そして目的の駅に到着。

 とにかく一秒でも早く降りようと人と人の間をやや力強く押しのけ出口まで向かう。


 ドンッ


「え?」


 出口一歩手前で足が止まった。

 前を見ると、ボディービルダーのような筋肉をした三人組が出口側を陣取っていた。


 彼らを前に力ずくでは通れないことを察し、かなり強めの声を出した。


「降ります!降りますよ!」


 そのあまりの気迫に周りが一気に静まりかえりこちらを見た。

 恥ずかしいが仕方ない、これで一発で通れるならそれでいい。


 しかし三人とも無反応。


 ~~~♪ ~~~♪ ~~~♪


 そこで気がついた。


 三人とも音楽聞いてるーーーーー


 ずっきゅん♪ ばっきゅん♪ どっきゅん♪


 イヤホンなのに周りにまで歌詞が認識できるほどの音量。

 その見た目でそんな曲を聴いているのか⋯⋯⋯



『ーーードアが閉まります、ご注意ください』



 いけない、そんなことはどうでもいいんだ。

 もう時間がない。こうなったら力ずくでも降りるしかない。



「うおおおおおおおおおおおおおおおお」



 人間に対し全力で突進をするのはこれが人生最初で最後だろう。

 全ての力を振り絞り、男と男の間に突撃した。



 ーーーベコンッ



「⋯ん?」



 情けないの音をあげ、軽々と弾き飛ばされた。


 不意打ちなのに⋯後ろからなのに⋯


 ドアは閉まり、無情にも電車は次の駅へと進み始めた。



 ーーーーーー



「なんやお前?」


「どした?」


「いやなんか後ろから急に⋯⋯⋯」


 喧嘩を売られたと勘違いした三人がなにやら言っている。

 留年が決まったんだ。

 もう全てどうでもいい。


「お前次の駅で降りろや」


「おうおう兄ちゃん、顔真っ青にしてからどないしたんや?話きいたるでな」


「さっきから無視しとんちゃうぞコラッ」


(ちゃんと中身は見た目通りなのか⋯⋯⋯)


 アラームもそう、満員電車になったのもそう、この三人もそう。

 本当に今日はついてないな。


 次の駅でおろされ、ひとけのない場所に連れていかれた。



「謝れや」


「すいませんでした」


「もっとちゃんとや、誠意みせんかい」


「すみませんでした」


「なめとんなこいつ。お前、服脱げ。裸で謝ればなんもせんと許したるわ」


(なんだよそれ⋯⋯⋯)


 まあいい、早く終わらせよう。


 言われた通り順番に服を脱いでいった。

 それを見ながら、「ほんまに脱ぎやがった」と爆笑してる三人組。

 最後の一枚、パンツに手をかけおろそうとしたその時、足元が激しく光はじめた。



 キュイーン



 ーーーーーー!?



 目の前が真っ白になり、次に目を開けたときには見知らぬ場所にいた。


お読みいただき、ありがとうございます!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思ったら【ブックマーク】と広告下の【☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!


モチベーションに繋がりますので、何卒よろしくお願いします!

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