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マイノリティパラレル

作者: 星野☆明美

彼はふと、作業の手を止めた。

軽いデジャヴ。前にこんなことがあった気がした。

「俺は、ここにいちゃいけない」

何かに急かされて、持ち場を離れる。ひょいと物陰に隠れて作業の監督と鉢合わせるのを免れる。

そのまま、工場を抜け出して、外の世界へ。

背後で爆音が聞こえて、工場で爆発事故が起こったと知る。

「俺は何回かあそこで事故に巻き込まれて死んだ」

なんだ?なぜこんなことになっているんだ?

彼は人混みに紛れて脱出に成功する。右へ行け。なぜ?最寄りの駅は左だぞ。

軽い葛藤。

右へ行く。

今までの経験からすると

駆けつける消防車のサイレンの音がわんわん響く。

「行かなくちゃ」

どこへ?もちろん、彼女に会いに。

今朝大げんかして出て行った彼女。彼はいつも通りに工場に出かけたが、そこで何もかもがおしまい、という結末から、今逃れようとしている。

「会いに行かなくちゃ。そして謝らなければ。俺は彼女をまだ愛してる」

でも、どういうことだ?今までの経験からすると、ってどういう意味だ?

駅の方で警笛とブレーキ音が鳴り響いた。あっちへ行かなくてよかった。

「俺は何回か、これを経験しているらしい。パラレルワールドのマジョリティ(多数派)世界では、俺は死んで終わるのに、マイノリティ(少数派)世界の、生き残る方へと向かっていく」

不可思議な現象。

彼女に会いに行くことが、そんなにも重要なのか?

自宅へ向かう。もうそこには彼女はいないはずなのに、足はまっすぐ家の方向を目指す。

ドアノブを回すと、鍵があいている。

ガチャ。

「あなた!無事だったの?今、ニュースで工場が爆発したって言ってて心配して」

「ああ!君に会うために生きているよ」

「どういうこと?」

そうだ、どういうことだ?

「今朝、君と大げんかして、謝らなければって思って」

「そんなこと気にしなくてよかったのに!それより、良いニュースがあるのよ」

「なんだい?」

「お腹に赤ちゃんがいるの!あなたの子よ」

「えっ」

このうえない喜びでいっぱいになる。これを知るために生き延びたのか!

彼は彼女を抱きしめた。

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