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プロローグ
断言しよう。
これは私の人生の中で最悪な、つまり、最も悪い出会いだった……と。
じんじんと熱くなった手のひらを気にしながら、あの男のせいですっかり汚れてしまったハンカチを取り出す。
右下の隅に鮮やかな紫色の糸でスミレの花が刺繍された、私の一番大切な物だ。
きちんと手入れをして何年も使っているハンカチだけど……今はホコリや土汚れが目立ってしまっている。
これ……洗濯すれば落ちるかしら? ああ……もう。本当、最低最悪の気分だわ。
私は制服の袖でぐいっと目元を拭うと、誰もいない廊下をズンズンと歩き出した。