第七十四話 事態収拾/怒りの説教と途方に暮れる道
「「「...................」」」
三十分後。俺達三人は草地の上だと言うのに正座させられていた。
...あるんだな、ジャパニーズ・セイザ。
「.......」
そして目の前で仁王立ちしているのは、言わずもがなフランキスカだ。
「....あのですね」
漸く彼女が口を開く。
「我々騎士が居る中で、その保護対象が、しかも子供が戦闘を行うものではないんですよ」
ああ、うんごもっとも。
でも保護対象、それも王族を正座させてることについては良いんですかね?
「私は一応ですがカリオペ様の教育係を務めてもいるのでいいんです」
顔に出ていたらしい。ご学友補正?
「でも倒せたからいいじゃん」
「...」
「ハイすいまでんでした」
カリオペがたじたじである。
「そも、近衛騎士はあの程度なら撃退できるだけの実力はもともとあるんですよ」
そうだろうな。さっきは20人、つまり過半数を俺達が倒したとは言え一瞬で制圧してしまっていたし。
「いいですか?下手に危険に飛び込むことが許される立場ではないんですよ?特にカリオペ様は」
「「「はい...」」」
結局、説教は30分ほど続いた。
「さて、どうすっかなぁ...」
俺は横倒しになった馬車を眺めて唸る。
「最悪私は徒歩でも文句は言わないわよ」
現状最も身分の高い存在であるカリオペがそんなことを言う。意外と健脚だもんなお前。
「流石に王女が徒歩で王都に参上は色々と不味いですよ。そも徒歩だともう二日は見なければですし」
まあなあ。とは言え。
「軽く見たが廃車確定だなこりゃ」
軸受けも軸自体も完全に破断。フレームも大きく歪んでる上に車輪が二個が完全に破砕、そもそも前部は俺達が出る時に破壊したし、右側面は焼け焦げて白煙を上げている。
修理より新造した方が楽だ。
「どうにかならない?」
アイリーンが言うが、俺にいい答えは無かった。
「どうにもならんな。...馬車だけなら...まあ、ちょっとしたものを作れはするが...馬どうすんだよ、って話でな」
「あー...」
馬車を引かせていた馬は一頭が爆発に巻き込まれて死に、一頭は既に何処かへ逃げていた。
自動車でも作るか....?いや、色々と不味いしそもそも二日では完成しないので徒歩の方が早い。
「騎士の馬があるじゃない」
馬ならいっぱいいる、とカリオペ。だが...
「騎馬と馬車馬は訓練の内容が違うのですよ」
フランキスカの言うとおりだ。多分いきなり馬車を引かせたって上手くはいくまい。
「職種が違うってことね?」
「はい」
「...困ったわね」
本当にな。
「なるべくなら報告もさっさとする必要があるのですよね。...盗賊団の首領が逃走していますし」
そう、奴等のボスであろう大柄の男は、俺達の倒した人間にも、騎士たちが制圧した連中にも居なかった。
他にも仲間がいるかも知れない以上はすぐ王都に行った方がいいのは間違いなかった。
ちら、と上を見る。
約上空1000m付近には今も《破壊の黒烏》が積雲に紛れて待機している。あれなら馬代わりにもギリギリなろうが...うーーーん却下。
俺の考えを察したか、アイリーンとカリオペがフルフルと首を振っている。うん、やはり却下だ。
困っていると、遠くから、ぱかぽこぱかぽこと駆け足の馬の足音がした。
警戒する騎士たち。が、現れた人物の服装に警戒を解く。
「第11騎士団の者だ。遠くから魔法の...って、カリオペ様!?」
その男は、騎士の恰好をしていた。




