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異世界学術論~結局のところ物理が最強~  作者: N-マイト
第三章 組織闘争編/影を照らす光となれ
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第六十五話? BADEND/TITLE1_死山血河都市

どすり。


王都。本来は人が溢れる一大都市にして、市場賑わう王家のお膝元。


けれど。今は。


「きゃあああああああああーーーう”」


ぞぶり。


本来は買い物帰りだったのだろうか。まだ年若い女性の胸元から凶悪な刃が生える。


ぶしゅう、と裂く鮮血の華。

ぶち。

凶悪な刃が何本も、その町娘をつかみ、引き裂いた。


「KYKYAKYAKYAKYA」


兎のぬいぐるみを凶悪にしたような顔が、今しがた町娘を引き裂いた凶悪犯が不気味に笑い狂う。


がぶ。


踊り食い、と言うには既に町娘は絶命しているが、その兎は町娘を口の中に落とし、喰らった。


ばん。


次の瞬間、次はその兎の頭部が消え去った。


()血溜まりの中に立っている。


濛々と煙を上げるのはアンツィオ20mm対物ライフル。威力がクソ強い事で有名な対物ライフルだ。


()()()皮肉か、勝利の台詞でも言うところだが、俺は無感動に見下ろし、その場を去った。


始めに死んだのはカリオペだった。


例の”組織”壊滅のため王都を訪れた俺達。何故だかカリオペが父に呼び出されたと王城へと赴くと言う。

勿論と了承し、俺、マリア、アイリーン、エレーナ先輩、ネア、カガミの六人は少し早めの食事をとっていた。そんな折。


突如王城が爆発した。


轟々と立ち上る紅蓮の華と、飛び散る石の破片。何故か”この俺”はカリオペが確実に死んでいることを予見する。


直後、街の人々から悲鳴が上がる。

そちらを向けば兎の様な、人の様な魔物がいる。


「ーーー!」


恐らくは”組織”の仕業。そう直感し、王城で何が起こったか何となく察しつつ、眼前の魔物に対処しようとした、その時。


「ーーーーぇ」


アイリーンの口から刃が生えた。


カガミの頭が何処かへと飛んだ。


ネアの胸部が圧壊した。


エレーナ先輩の上半身が飲み込まれた。


ぎぎ、と俺が壊れたように後ろを向く。


先ほどまで店員が立っていた場所に、店員の制服の切れ端を張り付けた、兎の顔。


魔眼が訴える。仲間たちの死を。

魔眼が訴える。眼前の兎もどきこそが犯人と。


「.....う”お”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!!!!!」


じゃきん、と空中から砲が生まれる。怒り故か、それは単純な構造。19世紀の滑腔砲。しかし、その魔物に耐えられるものではなかったようで。


べこり、と頭がちぎれた。


しかし、その間にも兎もどきは俺の周りに集まってくる。


俺を、仲間の死体を喰う為に。


寄るな、触るなと泣きじゃくる様に繰り返し、次々と兎を撃ち殺す。しかし、多勢に無勢と言うべきか。俺が周辺の兎共を駆逐した時には、既に仲間がこの世に居た痕跡は、肉片一片そこには無く。


ふつり。


俺の心の”線”が切れる音がした。


一気に表情が抜け落ちる。


仲間。それは人でなしを人の形に保っていた唯一の要素と言って良い。

心の支えと言って良い。


それを喪い、殺され。


そうだ。俺は絶望したのだろう。


ただ、物言わぬ機械となり果てた。


ずがん!ばがん!


魔法は最早俺の味方だった。

”考える”という機能が失われた俺の殺害衝動を拒む理は其処になく。


無言にて凶悪な、前世の物理法則を超える兵器を生み出し、撃ち放つ。


時には弾丸そのものを空中に出現させて飛ばす。


燃やす。貫く。凍らせる。切り裂く。

殴る、蹴る、薙ぎ払う、穿つ。


それはある意味で歩く厄災が一つ追加されたに過ぎなかった。


助けを求める人々に目もくれない。寧ろ射線が被れば無感動に”それ”ごと撃ち抜く。


人は”俺”にとって最早単なる肉塊と変わりなく。


ふと、獣の匂いがする。


どんな因果か、俺は偶然に”組織”の本拠地を探り当てていた。

辺りの景色は不明。しかし俺の起こした爆発で地面は抉れ、そこから、恐らく地下施設に続くであろう入口の残骸が覗く。


前に立つのは二人の獣人だ。顔は分からないが、確実に獣人だった。


何事か言っている。だが”俺”は聞いていない。

前触れも無く。獣人の片割れが爆ぜた。

驚愕する間もなく、二人目も。

返り血がかかる。


視界が塞がれないように払い、除く穴に掌を向ける。


ごう!


まるで、ガスの充満した洞窟に火をつけたかの様に。

入口が内側から爆発した。


ひゅるるるる、ずがずがずがずが。...どどどどどどどど!!


続いて、次々と上空から地下深く、金属の槍が突き刺さり、次々とその身に宿す烈火の炎を撒き散らす。

地中貫通爆弾(バンカーバスター)が俺の出番とばかりに鳴き踊る。


ふと、俺が思いつく。どうせ生きている意味など無いのだと。


何故そう思ったのか?知りはしない。もうそう思う事すらできはしない。


だから、衝動のままに俺はその権能を振りかざす。


ひゅるるるるるるるるるる


独特の風切り音を奏でながら、上空の曇り空の灰色を突き破り、それは空に落ちてきた。


丸っこい体、四角い枠に短い翼を四つ納め。


鋼で出来た醜い鳥ですらない何かが、その図体に対して妙にゆっくりと振って来る。


ぴし。


割と前世から特技であった指鳴らし。


すこし上手く行かず気の抜けた音であったが。変化は劇的で。


ほろり。

先ずはその胴体が解けた。


ひか。

瞬く星の様な。蒼いひかりが底から除く。


ちろり。

白色の炎が、蛇が巣から出てきたかのように、その舌を舐めずらせ。


かっ。

視界は。その地は。消え去る。









そして、俺の意識は浮上した。

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