第五十四話 顛末備忘録2/動き出すはドリームチーム
と、いう訳で翌日。俺たちはいつぞやも通された部屋で尋m...事情聴取を受けていた。
「...成程な。...ふむ、ここの担当が夕べ聞いたという話と相違点もないし、まあ、分かった」
急いで駆けつけたらしい校長が深く嘆息する。
「それにしてもお前はトラブルを引き寄せるんだな?たった二か月でここまでとは」
「はは、俺はその時々を必死に生きているだけですよ」
瞬々必生、ってな。
「...まあ、いいさ。こちらとしては礼を言わねばならぬ話だしな。みすみす王族を拐かされたとあっては我々の首が吹っ飛ぶからな、物理的に」
冗談にもならんな。まあ、王族はそれだけのものではあるが。
「ああ、それと王国の判断としては、今回の一件は”秘密裡に処理したい”とのことだ」
「...なぜでしょう?」
「ま、獣人国家と西方大陸の国に関するイザコザが怖いのさ。それも教師一人の犠牲で済んだが故だが」
...こちらには有利、かな。大々的に動かれた方が俺的には面倒かもしれない。
「だが、アッシュのその...あー、”モルガーン”とか言ったか?その鎧と、アイリーンが聖剣を使えることの報告がなかったことが少々問題だな」
う。
「ま、まあ...その、秘密兵器と言うことで」
「あはは、その...まあ、秘密の必殺技、みたいな?」
アイリーンと二人、冷や汗をかきつつ頭を掻く。
そう言えばある程度は報告義務があるんだったな。カリキュラムとか戦力把握の観点上。
「それがダメだと言っとろうが。...まあ、良い。十分な功績を引っ提げてきた以上我々には咎められん」
あはは、まあ、許せ。多分今後もっと増えるけど。
「ああ、そうだ。恐らく近々...一か月後程度だろうか。ゴタゴタが多少片付いたあたりに王城に呼ばれると思う」
「え?」
「秘密裏に処理する出来事とは言え王族を救ったのは純然たる事実だからな。王が褒美を出さないという訳にも行かんだろう」
まあ、それもそうか。何処への義理にしても王族はそれを果たす必要がある。そうでなくては国民はついてこない。基本。
「そう言う訳だ。それと、その娘に関してもお前が保護することを許可しよう。マリアとか言ったか?」
おお、その言葉は中々嬉しい。
「その娘が言葉を喋れず、お前としかコミュニケーションを取ろうとしないのは事実の様だしな」
近付いただけで泣かれた(演技)校長である。わりと本気で傷付いてそうだな。まあ、マリアの”かわいそうな女の子”の演技がやたら上手かったというのもある。...前世のトラウマ刺激されてないと良いけど。
「ま、そう言う訳でとりあえずはお前の部屋で共に暮らせ」
「!?」
アイリーンが驚く。
「なんだ?兄妹なのなら別に問題は無かろう?念のため、クロウ家にも連絡は取ったしな」
通信の魔道具まで使っての高速連絡だったそうな。尚、通信の答えは『よかった、見つかって!アッシュに感謝を伝えてほしい!』だったそう。状況理解からの口裏合わせが早すぎる。
正直まだ連絡を取らないと思って焦ったよ。伝書が今頃届いてるころだろうな...。
「え、っと。でも、一応は男子寮でしょう?」
食い下がるアイリーン。
「まあ、それはそうだが。アッシュは特別個室だしな。スペースもあるし、鍵もしっかりしている。...まあ、風呂さえ気を付ければ問題はないだろう」
まあ、浴場は流石に女子の方に入ってもらうしかない。まあ、そもそも演技だし。設定上は...そうだな、他の女子が出た後に一人で入ってもらうとかになるのだろうか。
「ま、問題はないだろ、俺の部屋に押し入ってくる男がいるなら話は別だが」
「他人の部屋に押し入ったらそれだけでここじゃ重罰だ、やらんさ」
ま、だろうな。万一もしそうなったら半殺しにしてやるが。
「...わかった」
どこか不服そうだがアイリーンも了承した。
ま、これで俺の秘密もなくなったし、気楽にやるとしようか。
エピローグ、第二章は終了です




