第四十六話 降臨黒烏/人の英知は救いの為に
「おいおい、ドラゴンの巣の前は歩かない...じゃなかったのか?」
そんな風に赤い目をした男はこの世界の諺を言った。
意味は...まあほぼ”危ない橋は渡らない”と一緒だ。
「おいおい、少し間違ってるぞ。”分の悪い賭けはしない”ってだけだ。残念ながらギャンブルは好みじゃなくてね。コツコツと堅実に稼ぐ方が性に合ってるんだ」
俺はそう言って笑う。できるだけ馬鹿にしたように笑うのがコツだ。
「...まあいい。...いや、どうやって麻痺から脱した?どうやってこいつらを殺した?」
地面に横たわる仲間を指さしつつ男が言う。
「さあな。ま、運よく解毒剤でもあったか...こいつらに関しては...そうだな。変態的な妄想でもしてゆでだこになったんじゃないか?」
まあ、両方ほぼ嘘であるが。麻痺に関しては単純に口内で解毒剤を”作った”だけだ。
刺客たちを殺したのは...”マイクロ波”だ。
マイクロ波、約2.4Gヘルツの周波数帯の電磁波。ぶっちゃけると電子レンジが放ってる奴だ。
こいつを物に当てると極性を持つ分子...主には水が振動し、熱を発する。要するに内側から温められる、と言う訳。
だから卵なんかを電子レンジで温めるのは厳禁なのだ。内部で水分子が膨張するからな。
これを人に、頭部に当てればどうなるか。だ。
脳みそ味のグラタンの完成である。
これに関しては、少々...俺からするとかなり昔の作品だが、ソード〇ート・オンラインで語られている通り。死ぬシーンはまあ直接は出てこないが、あの死に方だ。
一瞬で死ぬのかの問いには当然だと言っておこう。
マイクロ波による発熱はほぼ物質に作用するマイクロ波の電界の強さにのみ比例する。熱伝導率やらなんやらは関係ない。よってスムーズなかまゆでが可能なのだ。...まあ、えぐい死に方なのは間違いない。
「ふざけた事を...」
思ったよりも男を怒らせることができたっぽい。...もう少し冷静さを欠きに行くか。丁度良い煽りとかは良く分からんが人の煽り方は昔そう言うのが滅茶苦茶得意な奴に聞いて知っている。
やりすぎるかもしれんがまあその時はその時だ。
「は、人族のエロ妄想じゃ抜けないか?まあ、そりゃあ、そうだよなあ、”狼の獣人”さん?」
「...!」
ゆら、と男が揺れる。
「...なぜわかった」
徐に男が仮面を外す。異形の仮面から現れたのは毛皮に覆われた顔。
まごう事なき狼男である。
「まあ、勘さ」
本当は魔眼だが。...本当はもう一つ、気になる事実を視たが...今は良いか。
「ち...まあいい。俺たちの目的は...」
「人間社会への反逆。被差別種族である獣人の解放者を名乗ること。...違うか?」
「...そうだ」
獣人。それは日本のサブカルチャーで語られる通り、獣の特徴を持って生まれる者達。狼、獅子、虎、猫、犬、モグラ、果てはトドやセイウチなど、おおよそ”哺乳類”に分別される動物の獣人はいる様だ。(地球世界と名前の異なる生物やこちらの世界限定の動物もいるが)
獣人は差別される種族である。
まあ、前の世界ですら肌の色の違い如きであそこまでに至った人類だ。骨格から違う種族がいるなんて、どうなるかは明々白々である。
獣人は魔法を使えない代わりに力が強い...ことが多い。
はっきりと言ってしまおう。この世界において、これほど奴隷に向いた特徴は無い。
ウサイン・ボルト以上の脚力と室伏広治以上の筋力、吉田沙保里並みの戦闘力を持ったところで機関銃を持った人間に勝てるかという話である。それは例えそこそこの一般人...初級しか使えない程度であろうとも、だ。魔法を持った人間と言うのはそれほどの存在なのである。
奴隷とは、未成熟な社会にとって必須とも言えるものではある。
例えば農業や鉱石採掘など、大規模かつ労力の大きい仕事、少々の危険が伴う仕事等、地球世界では大型機械やロボット等が担当できる仕事が、それがない社会では奴隷を欲すると言える。あとは誰もやりたがらない仕事とか。奴隷は就職に文句を言わないからな。
とは言え、当然ながら奴隷とは忌避される存在である。よって自国民を奴隷に堕とすと言う行為は古来より犯罪等よほどの事情が無ければ行われない事である。
よって結局は他国、それも簡単に人材を輸出するような国から仕入れることになる。
獣人たちも国を持っている。俺たちの国が存在する”西方大陸”、大体来陽や中華が存在する”東方大陸”の中間に存在する”中央大陸”のほとんどが獣人の勢力圏である。”魔族”の支配する”南方大陸”もあるが...そこはおいおい。
位置的には地球で言うインド~中東辺りを彷彿とさせるこの大陸だが、実体はほぼほぼ奴隷貿易全盛期のアフリカだ。奴隷商人が貿易用の品物を持って上陸し、沿岸部の国が対価と称して奴隷と交換する。
三角貿易における北米と欧州を西方大陸が兼任する形だが、似たような貿易が成り立っている訳だ。
全く持って酷い話である。
当然、奴隷貿易全盛期の様相を呈しているとあって奴隷の扱いは酷いものだ。ましてや明らかに普通の人間と異なる見た目をしている彼らである。
恐らく、まだ職人の振るうハンマーの方がいい扱いを受けているだろう。
男は鉱山では肺炎になろうが一生外に出れず、農場では死体を肥料にされたりもする。戦場では肉壁にされることすらある。女は奴隷を増やすための道具として扱われるか、人間的特徴の多い体や顔をしていればちょっとしたエログッズとして使われる程度。
人権何それ美味しいの、である。
ただ。この国は西方大陸の中でも東の端...つまり中央他陸よりであり、狭いながらも地続きであると言う地理的要素も手伝って獣人奴隷は明確に禁止されている数少ない国だ。
こいつらが他国でも似た事をしているかは知らないが...この国を狙うのは悪手では?と思わなくもない。
いや、どのみち暴力的手段では悪手だが。
「解放者を気取るのは自由だが、暴力的な手段は賛成しないな」
「...人間風情になにが」
「あなたが正しいとき、過激になりすぎてはいけない。憎しみは憎しみで追い払うことはできない。...だっけ、混ざってる気もするけど」
黒人差別の撤廃に動いたキング牧師の名言、だった筈だ。たぶん二つが混じってるけども。I have a dreamの演説で言ったものではないことだけは確かだ。
「そのような軟弱な心持で何になる!」
「はッ!解放、いや革命は多数派だからこそ取れる手段だ!少数の権力者に多数の市民が反逆すると言う状況でな!解るか?革命の失敗=虐殺だ、この大陸で成功すると思うのか?」
「思うな。でなければ動くものか」
つまりは、数の差を覆すものがあると?
ばかばかしい。
「いつの世だって数=力だ。失敗するぞ。確実に」
「そう言っているのも今の内だ。...いや、お前は今ここで死ぬのだから最後まで言えるのか、幸せだな?」
すらり、とナイフを二本掲げて狼男が嗤う。
これ以上は喋らない、という意思表示か。
...ふむ、まあ、どうにかなったか。
「まあまあ、もう少し喋ろうぜ」
「これ以上はだめだな」
「そう言わずにさ。...一番初めの疑問の、ちょっとした補足をしてやろう」
「...は?」
「俺はギャンブルが嫌いだと言ったのはさっきの通り。確率100%以外は大嫌いだ。ましてや50%未満なんかくそくらえだ」
ポケ〇ンでも命中100意外は使ったことがない。
「さっきは俺たち三人が無事に帰還できる確率が低かった。具体的に言えば感情要因のあれこれを考慮しないとして35.76%。いやはや酷い確率だ。...だがな、実験結果というものはいつだって、条件によって大きく変わる」
「...まさかッ!」
煽り散らかしたのも、無駄話をしたのもこのため。まあ要するに時間稼ぎだ。
「今更気付いてももう遅い!今、条件は整ったッ!!」
本日は曇り。星すら見えない真っ暗闇を、見上げれば切り裂くかのような一筋の流れ星。
蒼く炎を吹き出すそれは。
俺と、走り出した狼男の狭間に突き刺さった。
どおん!と爆風が巻き起こる。
亜音速だ、それなりの運動エネルギーは持っている。
「ぐッ!...烏、だと」
土煙の後に現れたのは、シルクハットを被った、巨大な鋼鉄の烏と言うべきモノ。
それは、俺が作り上げた《偽・魔導義手・白銀の絡繰腕》をも超える、前世すらも含めた、言わば俺の最高傑作。
「俺は...そうだな。はっきり言って薄情そのものだ。人でなしとも言って良い。基本的に身内除いて人命なんかどうでも良い」
テレビ見て可哀そうとか言っている連中も似たようなもんだろうが可哀そうとも思わない辺りはもうちょっと酷いだろう。
「まあ、ヒーローとか向いてない事この上ない。だがな...」
左腕を水平に掲げる。するとふわり、と浮き上がった鋼鉄の烏がそこに降り立つ。
「100%可能という状況下なら話は別だ。ちょっとした正義の味方の真似事程度なら、ご覧に入れて進ぜよう」
ジャマになるので適当に作った拳銃を捨てておく。
「貴様、何を...」
困惑する狼男に俺はニヤリと笑って見せる。
まあ、こういう発想はこの世界には無いだろう。地球世界では...具体的には日曜の朝辺りには常識だが。
「まあ、そうだな。あえて言おうか。...《変身》」
がちゃん。
鋼鉄の烏が鳴動する。顔...仮面となるべきモノが外れ、炎を噴きながら飛び上がる。少々歪な左足がそのまま義手に取り付いていく。胴体は胸当てに、翼はロングコートに、尾羽は脚甲と靴に。
そして右足が腕へと変形し、気障な動きでシルクハットを頭に被せ、俺の右腕に覆い被さる。
そして仮面がカアン!と俺の顔を覆い隠す。
そうして”変身”が完了した。
...仮面の取り付く勢いは少し強すぎたかもしれない。
「...鎧、だと。...魔道具か」
「そんな所だ。字は《破壊の黒烏》。鋼鉄に鎧う、殺戮の化身」
「気取るなよ、ガキが。鎧如きで変わると思うか!」
「知らないのか?主人公は変身してからが本番だ!」
ナイフを振り抜き飛び掛かる狼男に、回し蹴りで答える。
がああああん!!!という強烈な金属音と共に狼男が吹き飛ばされる。
「グッ...獣人を真っ向から、だと。一体どんな強化幅だ!」
ま、自前の強化魔法を”一切使っていない”からな。驚くのも無理はない。
「そうだな、パンチ力にして2t、キック力にして6tと言ったところか。...純粋な強化魔法じゃないぞ、そもそも鎧自体も動くんだ」
「鎧と言うより自動人形もどきか!ふざけた性能を!」
核融合式超低燃費スタイルも実装、長時間戦闘もなんのそのの逸品だ。この世界には,,,いや、地球世界においても一歩兵が保有していい性能ではない。恐らく後々提示することになるが、人間サイズの戦車や戦闘機といって差し支えない。本当に特撮ヒーローやアメコミの様な性能だ。
「【墳進点火】!ついでに【演算仮定・運動不定式&力量演算式】!」
ゴオ、と炎が体の各部から噴き出し、俺の身体がはじき出される。小回りの利かない超加速を機構と魔法で押さえつけ、急旋回からのノーモーション飛び回し蹴りを叩き込む。
「くおっ...!飛行も出来るのか!」
「高速飛行は必須技能!!」
主にアメコミの。
跳躍で数キロ飛ぶ例も散見されるが。
狼男が俺の蹴りを避け、体勢が崩れた隙にカリオペを回収する。拘束を解くのは面倒だったのでそのまま適当にアイリーンの傍に放り捨てた。
「ぶべぇ」とかいう王女らしからぬ悲鳴が聞こえたが無視。多分背中から叩きつけられたんだろうがまあヨシだ。顔じゃないし。
「ッチ!」
舌打ちをしつつ斬りかかる狼男。左腕の追加パーツから短剣を展開し応戦する。
一応の魔法をカーネリアンに付与してもらったモノ。奴のナイフも魔剣の類。ただ受けるには少し心もとない。
右腕をテントの近くに向ける。そこにはアグレシアの入った鞘が。
きしゅ、と空気の抜けるような音と共に針のような物が射出される。
フックショットは男のロマン、と言う訳で放たれたそれは正確に剣に取り付き、かなりの勢いで引き寄せる。がし、と掴んだそれは頼もしい手ごたえを返してくる。元々モルガーン形態で装備することを前提に設計した装備だ。手甲の厚み込みの今の方が寧ろ握りやすい。
「っ!」
ヴォン!と無造作に、しかし豪速で振り抜かれた剣を狼男は跳び退ることで回避する。
「【炸裂式多弾頭衝撃打】!!」
義手に仕込んだギミックの一つ、爆風そのものを拳から打ち出す機構を起動する。
「ぐ...」
残念なことに奴の黒装束は耐火らしい。吹き飛びはしたものの燃焼している様子は全くない。
「安心する暇は与えない!オラァ!」
「追いついて!?ぐはっ!」
「オラァ!おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらオラァ!!」
どこぞの守護霊的なアレの如き掛け声を上げながらの超連打。半ば残像で分身しながらの攻撃と考えるとまた違う攻撃だがそれはそれ。攻撃の密度と言う意味では大差無いのだから。
「オラァ!」
全力でジェットを吹かしての左腕パンチ。右と比較して左腕にはブースターが多く装着されている、当然ながら高威力。
「ぐはっ!」
だが流石は獣人の高耐久、未だ戦闘不能には陥らない。
直ぐに立ち上がり、はあ、と溜息を吐いた。
「...やはりついてきていた、と言うべきか。...全く、聞きしに勝るとはな」
その発言に引っかかる。
いや、引っかかっていた事への確信を持ったと言うべだろう。
異常なモノ、しかし”そう”と捉えればある意味で当然なコト。
「成程、お前たちか。先日の魔物化事件の首謀者は」
「まあ、そうだ。...本当に察しが良いな?」
「胸に例の”クスリ”を忍ばせてれば怪しいとは思うさ。確信を持ったのは今しがただが」
そう、魔眼には映っていた。胸元に収まる”魔物化薬”のアンプルが。
胸に一撃も喰らっていない(そもそもが急所なので当然ではある)あたり抜け目ない。
「は、そうか。...まあいい、さっさと続きをするか」
体勢を立て直すための時間稼ぎだったのか。言いたいことは言ったとばかりに構えなおす狼男に...。
俺は敢えて、待ったを掛ける。
「いいや、少し聞け。...アレの首謀者には言っときたいことがあってな。...直接は関係なくてもとりあえず聞いとけ」
「...はあ、一応は聞いておく。またくだらない内容なら...今度こそ本気で殺すぞ」
「そうか。ではまあ一つ。...どうせ”聞いている”んだろうしな。こういう手合いは。...まあ、シンプルだ。『クソ喰らえ、似非薬剤師めが』」
「...言いたいことはそれだけか?...他人の命はどうでも良いのだろう?」
怒りなのか何なのか、低い声で問いかける狼男に俺は仮面の下で苦笑する。
「まあ、そうだ。アイツ...魔物化したガリアスタ・ガリオンをこの手で殺した事、アイツが死んだこと...それそのものには、どうにも無感動だった。...アイリーンがいる場で言うつもりは無かったが...まあ、その、俺は”ずれている”様なんでな?」
「ならば何故だ」
「少々、”死に方”には文句を付けたくなってしまってな。は、クソみたいな薬剤師にクソ以下のクスリを飲まされてゴミの様な魔物になり果てて汚泥しか残さずに死ぬ?馬鹿じゃねえの?人の死に方じゃねえ」
吐き捨てる。この時ばかりは怒りを隠さない。
「本当にバカだ。薬も、魔法も、如何なる術理もだ。それが人の...人間、亜人、獣人、魔族...種族に関係なく、それが英知が生んだ”技術”なら、それは人のために使われるべきだ。あんな...最悪の死に方を、哀れな男に与えるために生まれていいモノじゃない」
俺の心の師...我が祖父の遺した言葉だ。
彼は戦争に使われ、多くの人を死なせた技術を生み出した者の一人だった。元々は平和なただ一般の技術に過ぎなかった。しかしどこぞの超大国が悪用する手法を見つけ出し...というオチ。ままあることだ。しかし祖父はこう、形骸化し果てた国連の壇上で、半ば見世物として出されていた壇上で、それでも叫んだ。
「化学は人々の為にあり」
と。
「...今までに、何人の獣人が失われてきたと」
「それをなくすのが技術屋の仕事だろう。復讐の水掛け論をしようとするのは5流未満だ。母親の腹...いやもう種から人生出直せ腐った脳みそめ」
戦争なんて、主義主張のぶつかり合いなんて頭目同士の殴り合いで決めろと思う。もうガン〇ムファイトでもしてろってんだクソッタレ。
「ま、只この世には救われねえ...救っちゃならん類の人間もいる。この世には正義はいないが、絶対的な悪はいる、ってな。それを裁く時にのみ、科学はその牙を剥いていい。俺はそう位置付けている。ああ、今みたいにな」
そこは祖父とは違うところ。
祖父は死刑とか警察の銃携帯は反対派だったからな。
「いいか、よく聞けドグサレ共。今は田舎貴族のミソッカスみたいなガキでしかないが、数年後には世界を変えてやるよ。技術や的にイラっと来ることが多すぎるからな。それまでには全員墓穴の下に送り込んで置くから化石でも加えて眺めていやがれ」
「...そうか。殺す」
それは、己の目的を否定されたことへの怒りか。やつの言葉とは裏腹に、皮肉にも察しの悪い俺にはうかがい知れないが、少なくとも奴は、恐らく奴が持つであろう最強技を切ってきた。
「『それは全てを覆い隠す霧。煙る真名、燻る灯。眼は、全てを見通さず』起動しろ魔道具!【冷たく凍える霧の穹窿】!」
薬の納められた方とは違う方の胸元から、奴は球体状のモノを取り出す。
呪文と共にそれが投げられると、ぼわ、と辺り一面が霧の様な、煙の様な何かに覆われた。
「文字通り、一歩先すら見通せない霧の牢獄だ!...おっと、俺に判らないと思うなよ!!」
がん、と衝撃。成程、言っていることは嘘ではないか。
がん、がん、がん、と連続した衝撃。中身にダメージは通っていないが、鬱陶しい。
大体のカラクリも解ったし。
「ち、硬いな。だが、狙いはついた」
そりゃそうだ。と言うかもとより狙いは関節の隙間、もっと言えば頸だろうに。
「音、後は鼻か。ナイフに香料でも塗ったくったか?」
イヌ、と言うか狼は鼻が良い。あとあまり注目されていないが鼻も良い。
目で見えないなら鼻と耳、か。
「だからと言ってどうしようも無いだろう!?正確な位置は只の人間の貴様には分かるまい!」
攪乱するためか、周囲を跳びまわる音。
「十分だ」
落ち着いて、冷静に。
まるで、解剖するカエルにメスを入れるかの様に。
確実に、丁寧に、引き金を引き絞る。
ドパン、と銃声が鳴り響いた時には。
狼男の全身に穴が穿たれていた。
ちょっと長くなってきたので分割。
実は狼男さんは主人公より速い設定で行きたかったんですが初戦から主人公強化形態より速いとか後々の速度帯がバグる気がしたので却下。




