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異世界学術論~結局のところ物理が最強~  作者: N-マイト
第二章 解放宣言編/悪意と正義は矛盾せず
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第四十三話 森林サバイバル訓練/怒りの槍は下ろされず

「.......」

「.......」

「.......」

「.......いや気まずいよ!!」

アイリーンの叫びが森の中に木霊する。

結果から言えば、カリオペ王女との”仲直り”は失敗に終わったのである。

森林サバイバル授業までにカリオペと仲直りしておけ...そんなことをエレーナ先輩から言われて一週間。


先輩の言った通り、俺はカリオペを含むチームに所属させられていた。


面子は、Sクラスから俺、アイリーン、ネア、Aクラスからカリオペ、ライゼンという男子、ジョセフィーヌと言う女子の六人。

カリオペはAクラス内で成績一位、二位三位は非戦闘科だそうでライゼンとジョセフィーヌは四位、五位。

どうも各クラス内での順位で組まされると言ったところか。

他人を含むパーティだが実力は近い、か。連携訓練としては優秀な設定なのかもしれないな。


連携する気がないのが若干一名含むことを除けば、だが。


「....」


カリオペはと言うと、俺の...と言うか、俺を含むSクラスの面々を”いないモノ”として扱うことにしたようだ。そもそもの口数も少ないが、先ほどから僅かな会話もAクラス側としかしていない。

現にアイリーンの叫びも完全に黙殺した。

どこまでの情報を彼女が持っているのかは知る由もないが、Sクラスの連中は彼女の中ではある意味俺の共犯の様な立ち位置なのかもしれない。


「(一応の事情は聴きましたが、思ったより根深そうですわね)」


ひそ、とネアが俺に耳打ちをする。

...答えを求めるうえで耳打ちは不適当じゃないか?まあいいけど。


「(ああ。...曰く、”婚約者を殺された”ことになるらしいからな)」


「(やむを得ないとは言え、という奴ですわね...)」


まあ、恨みはとんでもなく根深いらしい。校内では肩書は関係ない、と言う建前は”王女”の肩書の前では霞むらしい。諸事情があるらしく数は少ないそうなのだがカリオペにもそれなりに取り巻きは居る。

そいつらを使ってまでこの一週間、カリオペは俺を視界から排除するように動いていた。

これでは話しかけることもできはしない。

まあ、話しかけたところで火に油と言われればそうであるが。


まあ、ガリアスタの野郎は嫁がいるのにアイリーンにコナを掛けたことになるのだが...次期公爵と考えると寧ろ側室が居ない方が不自然となる。...ナンパした下級爵の娘となると妾になりかねんが。


と言う事情もあり結局カリオペの頭の中に残るのは”婚約者を殺された”という事実のみである。

...アイリーンに恨みがある様子は見られないのでナンパとかの経緯は知らないのかもしれない。

尚、アイリーンには”王女に恨まれた”程度にしか伝えていない。伝えたら絶対に気にするからな。ネアには相談せざるを得なかったが。


都言うワケで現在は完全に”三人パーティが二つ”の状況だ。

コソコソ隠れて付いてきている教官の心証は一秒ごとに下がっているだろう。絶望的に苦手だったギャルゲーで死ぬほど聞いた好感度が聞こえるようだ。女々しい野郎どもの詩、と言うには女子率が高いが、バッドエンドルートに乗りかねない。

ホントになんであんなもん遊ぼうと思ったのか。


閑話休題。


さて、高得点の道は閉ざされたも同然だが、だからと言って放棄する訳にもいかない。

この課外授業...”にゅーびー☆さばいばる”とかいうふざけた看板を掲げられたこの授業では、俺たちは最低限の野営セットだけを持ってこの森...ノーザルク大森林に放流される。ま、要するに二日間生き残れと言う訳だ。

このノーザルク大森林は深度によって難易度と環境が大きく変わる、と言う特性を持つ。サバイバル訓練は毎年行われ、学年が上がる度に深い所でやらされるのだとか。

俺たちが居るのは当然一番の浅瀬。つまらなそうにしていたノーノ曰く”深度1”の範囲だ。

ここにいる魔物と言えば棘兎(スパインラビット)索狐(シーカーフォックス)程度。あとは普通の兎や猪くらい。索狐(シーカーフォックス)にいつの間にか荷物を盗まれない様に気を付けていれば他に脅威はないに等しい。


ああ、因みに、ちょっとした保存食は持たされるが、その量はかなり少ないし臭い乾燥野菜スティックだ。

肉を食いたければ狩れという訳である。


「「....!!」」


その時、俺とアイリーンが同時に反応する。


俺は魔眼(スキル)で、アイリーンは...恐らく野生の勘。


「【飛び散る氷塊(アイスヴァレッジ)】!」

「【音響衝撃砲(ソニックブラスト)】ォ!」


氷の弾幕と音の壁が放たれる。


狐の悲鳴が幾重にも重なり、途絶えた。

索狐(シーカーフォックス)だ。

奴らは集団で狩りをする。人間を襲うことは少ないが、ある程度背景に溶け込む能力を持つため見つけにくい。さらに言えば知能も高いため奴らには”人間の持ち物を盗む”という選択肢がキチンとある。

食料や運搬物がごっそりいかれた日には商人などは咽び泣くと言う。

探索者(シーカー)と言うか泥棒(シーフ)だが、コレが飼いならす(テイムする)と優秀な斥候役になるのだとか。


べろ、と緑と茶色のまだら模様を引っぺがす。...もう見るからに迷彩服(ギリースーツ)の様な毛を生やしている。

死んでもこの通りだが生きていればこの模様が背景に合わせて動く。

見つけづらい事この上ない。


ぷらーんと項垂れ血を流す狐の死骸を一瞥する。

狐の肉は不味い。毛皮を取るのも悪くないが一応”サバイバル”なので余分は捨て置くか。

鞣そうにもタンニンもクロムも持ってないしな。出そうと思えば出せるケド。



「悪いな」


死骸を血の匂いが広がらない様に一応埋めてから合流する。どうもカリオペは置いて行こうとしたらしいがジョセフィーヌが止めてくれたらしい。

抵抗してないあたり本気ではないのかもしれないが。


「...いいえ」


少々ジョセフィーヌが返答に詰まる。

まあ、この状況では仕方がない。


...いやはや、先が思いやられることだ。

風邪ひいてました

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