第四十二話 ダーク・イン・ケイヴ/蠢くモノは
そこは、暗い洞窟の中。
そこが、彼らの拠点だった。
真っ暗な闇の中、いくつもの眼だけが色とりどりに輝いていた。
「情報は確かなんだな」
ひときわ高い位置に浮かぶ、紅い眼のソレが声を発する。
「ああ。”ボス”直々の命令だ、これは」
冷たい青色の瞳が声を返す。
「肝いり、ってことか。...成程な、内容も内容だ、信憑性はかなり高い。...か。」
少し紅い瞳が伏せられる。どうやら悩んでいるらしい。
「確か...”例のアレ”を用いた実験があっただろう」
「ええ。モノとしては成功だが試験としては失敗だったわね...それが?」
緑色の瞳がそう呟く。
「その”失敗”の部分が気になるんだ」
「...ほう?」
青い瞳が聞き返す。
「状況については知らんが、そこにいた奴は少なくとも人間をもとにした肉の魔物を瞬殺するだけの実力があるのだろう?」
「...まあ、そうだな」
「そいつが付いてくる可能性はないのか?」
そう紅い瞳が問うと、緑色の瞳が面白がる様に弧を描く。その視線は青い瞳へ。
どうやら緑より青の方が地位が高いようだ。
「そうだな、...可能性は十分にある」
「...そうか」
「ああ。...こちらとしても確実な状況は知らん。だから何とも言えないのだが、...教師ではない可能性が浮上している」
紅い眼が驚愕に大きく見開かれる。
それまで黙っていたほかのモノたちもざわつきだす。
「なんだと、生徒がやったということか」
「ああ。...それも、」
「初年度...か。でなければ付いてくるとは言わんか」
「ああ」
はあ、と紅い眼がため息を吐く。
「念のためだ。”アレ”を連れていく」
「...おい」
青い瞳が咎める。
「どうせ用済みだろう?首輪を握っているのは俺なんだ、どう使おうと勝手じゃないか」
「...まあ、”因子”の培養は既に量産段階まで成功しているし...研究材料としての価値はもう薄いのは確か、か」
視線を向けられた緑がため息とともに言った。
一瞬瞑目したように青い光が消えたが、すぐに再度灯る。
「...まあ、良いだろう。万全を帰すと言うのならこちらが止める意味もない。...重要な任務だ。必ず成し遂げろ」
「頑張ってねぇ」
ふ、と青と緑が消える。今度は再度灯ることはなく。
「...ああ。了解した。場所はノーザルク大森林。任務は”トルディアナ王家第四王女の誘拐...。準備だ、貴様ら!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
紅の声に残りが答える。それは紅に頼もしさを感じさせる。
「人間に反逆を!」
「「「「「「我らに栄光を!」」」」」」
それは、彼らの合言葉。
人ならざるモノの誇りの言葉。
ざあ、と光が引いていく。
そこは、暗い洞窟の中。
さらなる悪意が、蠢こうとしていた。
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少々の設定の変更により”教会最強の騎士の妹”を削除しました。




