第二十七話 異世界魔法鍛冶/ステキにハンドメイド
がちゃり。
「と、言うワケでアイリーンの杖を作ることになった」
「なにがと言うワケよ説明してから言いなさいよ」
「かくかくしかじか」
「内容を言え!」
かくかくしかじか。
まあ、カーネリアンは放課後確定で工房に居る。
気軽に突撃していきなり作らせてもよかろう「よくないわよ」あっはいすみません。
...。
「成程、芯材を持ち込むから杖を作れってことね...情報追加されてもあんまり変わらないわね」
「結局”杖作れ”に集約されるからな」
「そうね。今日から”鎧”作ると思ってたから驚いたわ。...で、武器にするの?”非常識”だったんでしょう?」
カーネリアンは杖を使わない種族たるドワーフ故に杖と武器の複合が非常識なことに思い至らなかったそうだ。寧ろどっかにはあるだろと思ってたらしい。まあおれもそう思ってたし知らなければそんなモノだろう。
「鎧はちょっと”例のアレ”に関するアレコレのめどが立ってからだな...あー、そうだな。少なくとも”剣”はオミットするというかどっちにしろそうする。あいつの怪力に刃が多分ついてこれない」
「な、なるほど。...”銃”は?」
「そこは本人に聞くしかないな。まあ正直、あった方が邪魔な気がする」
「じゃあただの杖を作るってこと?あなたにしてはつまらない事言うのね」
ほう、中々言ってくれるじゃあないか。
「当然”NO”だぜカーネリアン。面白いものを作るとも。まずはーーー」
がちゃり。
「貰って来たよー!!」
「...今日は皆ノックしないわね」
すいません。
踊り出さんばかりに興奮しているアイリーンを宥めて備え付けのソファに座らせて一息つく。ふう。
「で、何の芯材を貰ったんだ?...竜種とか言わないよな?」
頷きやがった。マジかよ。
「...あ、ごめん、違うの。竜と言うか亜竜」
あー、吃驚した。流石に竜種の素材は渡さないよな。そもそも持ってないって言ってたし。
「えっとね、ワイバーンの延髄だって」
ぬっと取り出された、瓶に入ったひも状のモノ。うーん、覚悟はしてたがグロいな。
ワイバーンの延髄って言うと...
「確か、素材の特製としては”膨大な魔力を受け止められる”...だったっけ。芯材としての特製が同じかは知らないけど」
成程?ふむ、それは確かにぴったり、か。
「で、どんなの作るの?」
アイリーンが問う。
「そうね、私も気になるわ」
カーネリアンも興味深々だ。まあ設計方針の担当は俺だからな。
「ああ、まず第一にだが...アイリーン、銃機能は必要か?」
「ん?...あー、要らないかも」
「だろうな。まあ形は銃にするんだが」
狙いやすさは重要だからな。
「ん?形は銃にするの」
「ああそうだカーネリアン。さっきも言ったが、銃弾程度じゃアイリーンの邪魔になる。」
言うとカーネリアンは訝しんだ。
「?あんたの作る銃は結構な威力あったみたいだけど、それでも?」
「まあ、それでも。だ。だから銃は形だけ...あくまでも狙いをつけやすくするためだけに採用する」
「ふうん...てことは今回はギミックはナシなのね?」
「いいや?さっきも言ったが”面白いもの”を作る。それはつまりギミックを付けるということだ」
少なくとも俺にとってはな。
「そう。でもどうするのよ?剣も銃もつけないんでしょ?」
「え?剣もつけないの?」
「いやアイリーンは折る。絶対折る。パキパキ折る。流石に俺もワイバーンの素材を使い捨てにする程アホじゃあない」
ぶぅ垂れるアイリーン。可愛いが開発者としてそんなものは作らん。
「まあ、俺が常々...って程でもないが、アイリーンに必要なんじゃないかと思ってたものだ」
「...へえ」
現金なやつめ、不満顔が嘘のようなワクワクっぷりだ。
「”盾”だよ」
アイリーンの顔が再度曇る。
「ええ...あれ重いって言ったじゃん...」
まあ、ただの盾なら当然そうなる。
とりあえず今のアイリーンの強みを生かすなら、
・極力身軽
・左に魔法発動体
・右に長剣
の全面攻撃構成が最適なのは間違いではない。普通に装備をみつくろうなら、な。
「重くない盾を作ればいい」
「?」
「げ」
分からなかったアイリーンと分かったカーネリアンで反応が分かれた。
まあ、使用者優先で詳しく説明するとしよう。
「要するに魔法盾、障壁さ。イメージは銃盾じゃなくて仕込み傘かな。ああいう感じに作る」
折り畳み傘の設計に近い。魔法盾を発現させる傘で言う骨を開いて魔法盾を展開させる訳だ。
「まあ俺は魔法盾なんて作れないからカーネリアンに丸投げするしかないんだが」
「はあ、そんなことだろうとの思ったわよ。傘のイメージってことはいくつかの発動体から展開する方式?」
「そ、サイズとかもろもろの設計は後から詰めるができそうか?」
「当然。」
流石頼もしい。魔法系工作の感覚は分からないが多少無茶なお願いでも叶えてくれる。
ホントに知り合えてよかったな、運がいい。
「あ、本体サイズは?あなたのみたいに長剣くらいのサイズが良いんじゃ?」
「ああ、いや。拳銃サイズが理想。取り回しを優先したい」
「ふうん?あ、本人はどうなの?戦闘スタイルは自分でちゃんと決めた方がいいんじゃない?」
カーネリアンがアイリーンに問うと、彼女は微笑んだ。
「いいの。面白いと思ったから。それに、アッシュのアドバイスは大体あってるから」
間違えることがないでもないがな。
まあ今回のは自信あるけど。
「...わかったわ。じゃあ...えっと、いつまでぐらいに作れると思う?」
「んん、”あっち”の予定の調整もしつつだから...一週間後ぐらい?」
「だって、...楽しみにしててね」
「うんっ!」
カーネリアンの言葉に笑うアイリーン。笑顔の花と言うのはこういうことを言うんだろうな。
...さ、頑張るぞ。
折り畳み傘(布ナシ)にハンドガンのグリップくっつけたモノをイメージしてください。




