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異世界学術論~結局のところ物理が最強~  作者: N-マイト
第二章 解放宣言編/悪意と正義は矛盾せず
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第二十六話 報酬決定/非常識な制作秘話

「杖の芯材...か」


リリネがゆっくりとアイリーンの言葉を反芻する。


「あ、ちょっと待ってね、結界切っちゃうから」


おい流れを止めるな、神妙な雰囲気出しておいて!

俺の内心をよそにぱちん、と指が鳴らされる。


「あ、腕が戻りましたわ」


ノーノの腕が回復したようだ。

成程、ケガ状態で結界から出るとそのまま戻るのか。


「さて、話を戻そうか。...一応、何でか聞いていいかな?」


「えっと...なんでそんな真剣なんです...?」


アイリーンがおずおずと言う。

まあ...


「ん?そりゃ単純(シンプル)だね、()()()()()。...おっとそこ、ふざけてるだけだと思ってたでしょ」


指を指される。

はい思いました。


「えっと、その、アッシュが作ってたので...私もほしいな、と」


「え”」


だみ声を出した後固まるリリネ。

ぎい、と壊れたロボットの様にこちらを向き...。

飛びかかってきた。


「いや、なにしてるの!?!?」


「え?ちょ、なんだっての!」


閑話休題。


「「はあ、はあ、はあ...」」


リリネが落ち着くのに30秒ほどかかった。

全く。

肩で息をしていたリリネだったが気を取り直したのか、俺を指さして言った。


「いーい?”杖を持つ”ってのはそれなりに重要な儀式なの!杖を使わない魔法使いもこの国は多いけど、重要職に就いてる人は大抵持ってるし、それが一生の相棒になることも多いの。頻繁に杖を乗り換える人は”浮気性”なんて言われたりもするから、”最初の一本”はすごい重要なの!例えるなら女の子の勝負下着くらいね!!」


分かり辛いわ!

ノーノが頷いている当たり女子には通じる例えなのかも知れんが俺は男だ!


「だからそう簡単に自作していいモノじゃないの!で、どれ?ちょっと見せなさい!」


持ってなかったらどうするんだ、と思わなくもなかったが持ってる...というか割と活躍したので大人しく取り出す。


「これですが」


「「「は?」」」


ノーノ、ネア、リリネの三重奏。

ええいマヌケ顔のまま近づくんじゃあない!


「剣...銃?なに...これ」


呟くリリネ。「あれが...杖?」と呆然としているノーノも中々妙だ。え?そこまで変か?


「確かに指輪型とか変則的な杖はあるけどね?武器に合成するのは初めて...って言うかクオリティ高いわねこれ...」


「まあ、ドワーフの女子と共同制作ですからね」


「ああ、居たわねそういえば。...その義手を製作できる腕とドワーフの技術があれば出来る...か。」


「あれ、杖剣みたいなのは無いんですか?」


アイリーンが聞く。それが欲しかったのか?


「断言するけどないわ。杖が折れる可能性があるもの...え?二人とも何で知らないの?」


「いや、ウチの母が「杖なんて消耗品」って言うもんで...」


俺の言葉にうんうんと頷くアイリーン。そも俺たちの修行中に二本ぐらい折ってたし...。

その様子を見たリリネは額に手を当てて深くため息を吐いた。


「”暴走の魔女(あのイノシシ)”なら言うわね...。うん絶対言う」


「知り合いなんです?」


「知り合いって言うか冒険者時代の腐れ縁?今はだいぶ...だいぶ?まあ落ち着いたけど昔はもう猪突猛進を絵にかいたような奴だったからね~...」


はあ、とため息。

どうも苦労していたらしい。うちの母がすいません...何したのか知らないけど。


「まあ、いいわ。この杖...まあ杖ね。クオリティは申し分なさそうだし。この子に預ける気なのよね?」


こくりと頷くアイリーン。


「ならまあいいでしょう。あんまり武器につけてほしくはないけど。それならウチに残ってる素材の方がいいわね。買うとちょっと高すぎるくらい高いし。いくつか合いそうないいのがあるから見繕っておくわ」


まあ、アイリーンのためなら作るが。

カーネリアンにも協力を仰がないとな。


「有難うございます」


「いいってことよ。将来有望な若者への投資、ってね。あの素材どもも持て余してたから在庫処分にちょうどいいわ」


ぷらぷらと手を振って言うリリネ。

まさか買い手がつかないレベルで高価な素材だったりするのだろうか。竜種とか。


「期待を込めた目で見られても竜とかああいうのはないわよ。現役時代に魔物の暴走(スタンピート)狩った時に”値崩れするから”って止められた奴が大量に余ってるの。急に希少(レア)な連中がいっぱい出てきたからね...」


ああ、なるほど。腕利き相手だと買取も大変だ...。


「あ、そう言えば、貴方の杖の芯材は?」


「え、ああ。たしか金属妖精(レプラコーン)の女性の毛...だったかな」


言うとリリネが驚愕した顔になる。


「え、ほんと?」


「え?校長曰くそうらしいですけど」


「へえ...それはまた、随分と...」


「そんなにレアなんです?カーネリアン...ドワーフ曰く、割と見る妖精らしいですけど」


言うと、遂にリリネが天を仰いだ。


「あー...まあ、ドワーフだと逆に知らないよねぇ...。言っていいのかなぁ、これ」


「いや、そこまで行ったなら教えてくださいよ」


気になるだろう。


「........まあ、いいか。えっとね。妖精の毛を杖の芯材にするにはね、”全身の毛”が必要なの」


全身ね。そんなもったいぶって言うようなことか?


....ん?


()()?」


「全身。」


「...余す事無く?」


「余す事無く」


...oh。

女子三人が顔を真っ赤にして杖剣銃...アグレシアを凝視している。

うん、まあ、うん。俺もなんていえばいいかわからないや。


「まー、だから妖精の毛...特に女性ね、それを芯にした杖はとんでもなく希少なの。妖精だから一日で元に戻るとはいえ、ね」


それはそう。


「妖精自体はそんなに珍しくもないから大体の素材は性能的には安いんだけど、こればっかりはね。...好事家相手だと城が立つわよ」


「変態相手に商売する気にはなれないですね」


キモいわ。


「まあ、でしょうね。...ま、性能は君に間違いなく合ってるでしょうね。君のあの、ものを出す魔法とか」


まあ、こっそり試しに使ったら効率が結構上がったからな。相性がいいと言われればそうなのかも。


「ま、そんなもんね。...ま、私、相手の魔法の特徴を見抜くのは得意だから、多分合うのが見つかると思うわ。お楽しみにね」


「有難うございます」


ふむ、そうなると、俺も”杖”の案をいくつか用意しておかねばな。

短い。


杖を乗り換えること自体はままあります。

でも道具として扱う人は少ない。

余り買い替えるのは良くないとされていて、多くても練習用の杖とずっと使う杖の二本くらい。折れたら流石に買い替えるけど。


だから魔法を習っている段階で買う人は少ない。

買う場合は子供の成長を推測して買う。当然難しい。主人公はスペシャライズド(厳密には違う)なので選んでも問題ないだろうという校長の考え。ちなみに主人公との相性は最高です。これ以上のものとなると竜種を狩らないといけないレベル。

因みに素材のレア度の高さより素材と魔法使いとの相性のほうが大事。相性が悪い高レアより相性のいい低レアの方が強いです。

相性のいい高レアがめっちゃ強いのはそう。

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