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九条先生の過去② ―君と再会する少し前の話―

<簡単な登場人物紹介>

九条くじょう まこと Ω(オメガ)

黒髪の美青年。20歳。

小中高大飛び級を繰り返し16歳で医学部を卒業し国家試験も満点で合格。特例で医師免許取得。自身が院長のΩ専用メンタルクリニックに勤める。

16歳で妊娠、17歳で出産しており3歳の愛息子・ルイがいる。

番は人気俳優・天上院 蓮だが、彼には一途な想い人「カレン」がおり、自ら身を引いて息子と二人で暮らしている。昔から今も蓮のファン。


天上院てんじょういん れん α(アルファ)

茶髪、切れ長の瞳にスタイル抜群、圧倒的イケメン。25歳。

子役時代から俳優として活躍し、今や国内外で人気のアイドルであり俳優。また世界的規模の天状製薬社長の息子であり、投資家などさまざまなジャンルを席巻している。

テレビに露出するたびに想い人「カレン」に愛を囁くことでも有名。


・九条 ルイ

真と蓮の間に生まれた子供。三歳。

三歳児とは思えない風格をしており、容姿は親譲りの端麗さ。すでに三か国語を習得する神童。

真をこよなく愛している、父親が蓮であることを知らない。


九条くじょう 修二しゅうじα

38歳。真の父親。

容姿端麗・文武両道。九条病院の院長であり、医学界の神と称されている。

世界で初めて認知症の治療薬を作り、世界最年少でノーベル賞を受賞している。

家族LOVE。害するものは許さない。

 

・「カレン」

蓮の想い人。詳細は不明

Ωもβもαも関係なく、みんなが住みやすい国を作りたい。

僕や君みたいな子が、生きやすいような国を。

ーーーーーーーー



九条真は医者になると決めてから、仕事の合間に父から勉強を教わり、小学校に上がるころには大人顔負けの知識を有していた。

教えられたことは勿論、この先教わるであろう知識すらも理解できる自分がいる。時々自身の才能が怖くなる時があるぐらいだ。

「いやいや、これは飛び級を認めざるを得ないな・・・小学一年生で過去問まぜまぜオリジナル医師国家試験満点は、さすがにヤバすぎ。αの僕が試しに解いてみたら8割ぐらいしか解けなかったのに・・!」

現・内閣総理大臣である美濃部みのべ 礼二れいじ首相と繋がりのある父は、国の最高権力者の前で真の飛び級を認めさせるため、彼の自宅を訪ねていた。

実際、真の実力を目の当たりにした美濃部は、彼の実力に感心を通り越してドン引きさせていた。

みのるくんも恐ろしいぐらい天才だけど、真くんも凄まじいな・・・」

「美濃部、俺の時みたいに飛び級を認めてくれるだろう?」

「いや、うん、いいんだけど・・!というかさ、元から僕に拒否権ないよね!君には借りしかないし!」

「それもそうだな。認めろ、美濃部」

父と美濃部のやり取りを見ながら真は苦笑いした。

父の伝手があまりに広すぎ&深すぎて怖くなる時がある。

「でも飛び級しても他の生徒と一緒に授業を受けさせるわけにもいかないから、授業は真くんと、僕と九条で選出した専任講師一対一にさせてもらうけど、それでも良い?」

「当然。綺麗で可愛くて優秀で優しい真を知らん人間たちに囲まれながら生活させるわけにはいかないだろう」

「父さん・・・!」

美濃部の前で堂々と息子自慢をする修二に真は恥ずかしそうに裾を引っ張った。

赤面する真を見て、その可愛さに美濃部は思わず頬を赤らめるが、我に返ったのかわざとらしく咳払いする。

「あながち間違いではないけどね」

「?」

「それに『世界の宝』やら『医学界の神』だのとされている九条修二の息子・・・。しかも君はΩだ。君に何かあったら、私一人の首を刎ねても到底足りないしね」

「ーーーーーーーーーーーーーー」

真は元から学生時代の青春など捨てる覚悟はできていた。

そもそも飛び級しなかったとしても、九条修二の息子という時点で青春は捨てているようなものだ。

しかもΩ。・・・・そう思っていても、やはり面と向かって口に出されると少しショックである。

自分の第二性が社会的弱者であることを痛感させられた。

だからこそ、早く大人になり証明する必要がある。Ωだからなんだというのだ。そう胸を張って言える存在になりたいのだ。


ーーーーー君は、外に出る努力をしたの?ーーーーー


Ωだって、努力すれば他の第二性と同等、いや、それ以上の力を発揮することができる・・・!

「美濃部さん・・・僕は、早く夢を叶えたいんです。力を貸してください!」

「・・・・・・・・」

美濃部はしばらく真を見つめると頭を優しくなでた。

「そこまで言うのなら、やってみなさい」

「はい・・・・・!」

蓮と同じように、また人から背中を押してもらえた。それが嬉しかった。

「あーー真くん、修二と違って可愛げあって応援したくなっちゃう」

「手続きは美濃部に任せる、文部科学省が騒いだら俺の名前を出して黙らせろ」

「あーー真くん、こんな大人にはなっちゃだめだよ」

呆れたような表情浮かべる美濃部は深いため息を吐く。

修二は面倒くさい手続きをすべて美濃部に放り投げると真に笑顔を向けた。

「帰るぞ、真。途中で夕ご飯の買い物を一緒にしよう」

「うん!」

「あと美濃部、いつもの物はさっき机の上に置いておいた。何かあればすぐ連絡するように」

「はいはーーーい!ありがとね!あとは僕に任せなさい!」

美濃部は帰路をたどる二人の後姿に声をかけると机に頬杖をつく。

「(真くんの背中、小さいなあ・・・・)」

九条修二の息子の時点で、九条真が普通の人生を送れるはずもないことは美濃部自身も分かっていた。

しかも修二にとって唯一無二の存在である藤宮ふじみや 花恋かれんが残した宝。

「(修二は真くんが医療系に進んでさぞ安心しただろうな・・・修二に逆らう奴なんか、医学界では誰もいないだろうし。いや、全世界どこにもいないだろうし)」

学校なんかに通わせるよりも、真が医療業界にいた方が修二としては目が届くため安心なのだろう。真自身も早く大人になることを望んでいる様子だったが、修二のエゴが大きいのだろうと美濃部は思う。

飛び級の手続き書類に視線を落とす。

学生時代はこの先長く生きる上での宝物になる。人と関わることで得られる喜怒哀楽は自身の成長の糧になる。だが真はそれを知ることなく大人になる・・・・それがどれほど残酷で、切ないことか。

「修二・・・君はちゃんと理解しているのかい・・?君のせいで、九条真は大人にならざるを得なかった。ーーーーーーーーそれとも・・・・」

美濃部は修二が机の上に置いた紙袋を手に取ると、中に入っていたものを机の上に出す。

「Ωがまだ弱者として扱われる、この国のせい・・・?」

机の上には、修二が美濃部に処方したΩの抑制薬が散らばった。

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