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九条先生の幸福への道① ー再会は目前にー

<簡単な登場人物紹介>

九条くじょう まこと Ω(オメガ)

黒髪の美青年。20歳。

小中高大飛び級を繰り返し16歳で医学部を卒業し国家試験も満点で合格。特例で医師免許取得。自身が院長のΩ専用メンタルクリニックに勤める。

番は人気俳優・天上院 蓮だが、彼には一途な想い人「カレン」がおり、自ら身を引いて息子と二人で暮らしている。昔から今も蓮のファンであり、彼を愛し続けている。


天上院てんじょういん れん α(アルファ)

茶髪、切れ長の瞳にスタイル抜群、圧倒的イケメン。25歳。生粋の方向音痴。

国内外で人気のアイドルであり俳優。また世界的に有名な天状製薬の次期社長であり、投資家などさまざまなジャンルを席巻している。

高校の時から真を愛しており、離れ離れになった後もずっと探し続けている。

テレビに露出するたびに想い人「カレン」に愛を囁くが、実は真の名前を「カレン」と勘違いしている。


九条くじょう 修二しゅうじα

38歳。真の父親。

容姿端麗・文武両道。九条病院の院長であり、医学界の神と称されている。

世界で初めて認知症の治療薬を作り、世界最年少でノーベル賞を受賞している。

家族LOVE。害するものは許さない。

番であり、真の母である藤宮花恋は難産により亡くしている。


ひいらぎ β(ベータ)

蓮の敏腕マネージャー。

蓮が幼少期から担当している。


天上院てんじょういん まもる α 

蓮の父親。世界的に有名な天状製薬の代表取締役社長 。

修二とは幼馴染で親友だが、とある事件をきっかけに彼に逆らうことができない。

狂った運命の歯車が、

長い年月をかけて、

ようやく正しく噛み合い、動き出す。

ーーーーーーーー


九条修二は突然途絶えた通話に首を傾げる。

再度折り返そうとした直後、医療秘書の花宮が院長室をノックした。

「来たか・・・」

修二はスマホを机の上に置き、静かに入ってくる花宮を見る。

「天上院蓮がお越しです、お通ししても?」

「通してくれ」

軽くお辞儀をし去ろうとする花宮に修二は声をかけた。

「案内は久月にさせる。花宮は天上院と顔を合わさずに帰っていい」

「ーーーーーーーーー助かります」

花宮は深々と頭を下げるとその場を後にした。

九条修二の医療秘書・花宮翔太はなみや しょうた

彼は天上院蓮の母である花宮玲花の息子であり、蓮とは義兄弟に当たる。

二人は面識もあり仲も良いが、花宮は蓮に自身の職業を詳しく明かしていなかった。

蓮が探している番の居場所を知っていたにもかかわらず、蓮に今まで話すことができなかった。

花宮がずっと心を痛めていたことを修二は理解していた。

花宮を蓮と鉢合わせしないよう帰したのは、二人の仲を配慮した修二なりの気遣いである。

部屋に一人残された修二は、窓から見える美しい月を見る。

「守ーーー俺はお前のことを愛している・・・息子のことも、許した」

窓辺に近づき、その月の眩しさに目を細める。

花恋を失った日の夜も、恐ろしいほど月が美しかった。

「真との結婚も認めている。それでも・・・・真は大切すぎる息子なんだ」

ドアが再びノックされ、久月が顔を覗かせる。

そして彼の背後から、真の番が姿を現した。

三年ぶりの対面である。


天上院蓮ーーーーー許したとはいえ、

俺はお前が嫌いなんだ。


守によく似た美しい容姿の彼を、修二は真っすぐに見つめた。



*********



九条真は息子である九条ルイの寝顔を横目に、やり残した仕事を片付けていた。

クリニックから徒歩10分ほどの距離に自宅があり、帰り道にクリニックに寄ったところだ。

ルイは保育園で疲れたせいか、待っている間に診察室のベッドで眠ってしまった。

「それにしても、ルイがあんなことを言うなんてーーー保育園で何かあったのかな?」

帰り際に、もっと自分との時間を作ってほしいと言ったルイを思い出す。

今まで自分のせいで我慢させていることは分かっていた。素直に甘えてくれるにはどうしたら良いかといろいろと策をめぐらせていたのだが、今日ルイは何かのきっかけがあったようで、自分に本音を伝え、甘えてくれた。

それはもちろん嬉しいことではあるのだが・・・ルイをそうさせた「きっかけ」が気になってしまう。

自分の息子にこういうことを思うのは良くないかもしれないが、彼は普通の三歳児ではないのだ。

「明日、保育園の先生に聞いてみよう・・・」

ブーブーブー

携帯のバイブ音が鳴る。

真は自身のスマホを見るが通知はない、ルイの寝ている方に視線をやると、診察台のそばにあるルイの携帯が震えていた。

ルイの携帯に登録されている人物は、九条真、九条実、九条修二、真と修二の職場、そして通っている保育園の連絡先の六つしかない。

緊急性は少ないだろうが、バイブ音で折角眠っているルイが起きてもと思い、真はルイの携帯を手に取った。

悪気なく画面に映し出された文面を読んでしまう。


< 不在着信 1件 天上院 蓮 >

<メッセージ 1件 天上院 蓮 これから迎えに行く、着いたら..........>


「ーーーーーーーーー」

息をすることすら忘れ、現実か夢か判断ができず思考回路が停止する。

きっと家族の誰かからの着信だろうと思い、軽い気持ちで覗いた通知。

「天上院、蓮・・・・」

久しぶりの言葉にした彼の名前。

携帯を握りしめる手が震える。

指先が徐々に冷たくなり、わなわなと全身が震え始めた。

蓮とルイが、自分の知らないところで接触している。

もしかしたら、ルイが変わる「きっかけ」を作ったのは、彼ーーーー?

ルイを起こそうと手を伸ばすが、その手を止め眠っている彼を見つめた。

起こさないよう彼の髪にそっと触れる。

生まれた時から、蓮と同じ瞳を持ち、髪の色以外ほぼ蓮の幼少期とそっくりな容姿のルイ。

彼の才能を受け継いだこともあり、ルイは三歳児にして驚異的な頭脳を誇る。

番から三年間も逃げ続けた自分が、世間から、そして蓮から、ルイの存在を隠し通せるはずもなかったのだ。

「(ルイを問いただす権利は、僕にはない・・・・)」

メッセージの全ては読めていないが、蓮はルイに「これから迎えに行く」と言っていた。

恐らく、蓮はルイだけを引き取りに来るのだろう。


--------------それでも、確かめなければならない。それが、「僕ら」の責任だから。


あの時、現実と向き合わずに逃げ続けた自分の罪、そして罰を受ける時が来た。

体の震えが止まらず呼吸が荒くなる。急速に体温が上昇し、体が火照り始めた。

「(・・・・!?)」

混乱しパニックを起こしていると思っていた真は、覚えのある体調変化に目を見開く。

ヒートだ。

自身のスマホ画面を見て日付を確認するが、本来の発情期が来る時期より二週間ほど早い。

いつもは発情期が来る前に効果の強い抑制薬を飲み、ヒートが来たとしても微熱や軽度の倦怠感で済んでいた。

抑制薬を飲まなければ、真の発情期は到底耐えられるものではない。

番がおり発情期が来ても自分のフェロモンで相手を誘惑しないとはいえ、真の容姿からフェロモンがなくとも襲われることは今までに多々あった。

そのためクリニックのそばに自宅があるとはいえ、迂闊に自宅にある抑制薬を取りに行くことができない。

「(こんな醜い姿を、ルイに見せるわけにはいかない・・・)」

真は壁に寄りかかりながらルイから距離を取る。

部屋の隅まで移動すると、真はその場に座りこみ横たわった。

三年前の出来事が、いや、初めて蓮と出会ったときの思い出が、走馬灯のように頭に流れる。


ーーーーー頑張ってね

ーーーーー君・・・・・・・・明日から、ここにいないの?

ーーーーー君は、俺のものだーーーーーー二度と、そんな言葉を口にするな


カレン・・・必ず君を見つけ出す。そしたら死ぬまで君のそばにいることを、どうか許してはくれないだろうか。


目を伏せながら、真は絞り出すような声で呟いた。

「蓮・・・・・・どうか俺を、見捨てないで」

三年前の真実を知る時が、もう目の前まで迫っているーーーーー。


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