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九条先生の過去⑨ ー愛しのカレンー

<簡単な登場人物紹介>

九条くじょう まこと Ω(オメガ)

黒髪の美青年。20歳。

小中高大飛び級を繰り返し16歳で医学部を卒業し国家試験も満点で合格。特例で医師免許取得。自身が院長のΩ専用メンタルクリニックに勤める。

番は人気俳優・天上院 蓮だが、彼には一途な想い人「カレン」がおり、自ら身を引いて息子と二人で暮らしている。昔から今も蓮のファンであり、彼を愛し続けている。


天上院てんじょういん れん α(アルファ)

茶髪、切れ長の瞳にスタイル抜群、圧倒的イケメン。25歳。生粋の方向音痴。

国内外で人気のアイドルであり俳優。また世界的に有名な天状製薬の次期社長であり、投資家などさまざまなジャンルを席巻している。

高校の時から真を愛しており、離れ離れになった後もずっと探し続けている。

テレビに露出するたびに想い人「カレン」に愛を囁く。


九条くじょう 修二しゅうじα

38歳。真の父親。

容姿端麗・文武両道。九条病院の院長であり、医学界の神と称されている。

世界で初めて認知症の治療薬を作り、世界最年少でノーベル賞を受賞している。

家族LOVE。害するものは許さない。

番であり、真の母である藤宮花恋は難産により亡くしている。


・「カレン」

蓮の想い人。詳細は不明。


ひいらぎ β(ベータ)

蓮の敏腕マネージャー。

蓮が幼少期から担当している。


天上院てんじょういん まもる α 

蓮の父親。世界的に有名な天状製薬の代表取締役社長 。

修二とは幼馴染で親友だが、とある事件をきっかけに彼に逆らうことができない。

愛しい君が、

俺から離れるというのなら、

君を地の果てまで追い求めて、

君が俺から離れないよう、

愛して愛して、愛し尽くそう。

ーーーーーーー


「天上院さん......!子役の時からずっと好きです!もし良ければお付き合いしていただけませんか!」

ドラマの撮影後、ヒロイン役を務めた人気の若手女優・相良さがら ひとみが他のスタッフがいる中で自分にそう告げた。

蓮は彼女が自分に好意があることに気が付いていたが、まさかこんな大勢の前で告白するとは思っていなかった。

ざわつく周囲をしり目に蓮は目を伏せると、はっきりと彼女に告げる。

「ごめんね、その気持ちには応えられない」

「て、天上院さん.....!」

「好きな人がいるんだ」

その言葉に周囲がざわつく。

「だ、誰なんですか......!私を振るために、適当に言っているんですよね......!」

蓮は彼女を真っすぐに見ると、周囲にも聞こえる声量で言った。

「この世界のどこかにいる、俺だけの運命の番」

そう言うと優しく微笑みその場を後にする。

その場に立ち尽くす瞳に彼女のマネージャーが慌てて駆け寄った。

「瞳さん・・・!いくら好きだからって、時と場所を考えてもらわないと!」

「・・・・・・・」

「それにしても、さすが天上院蓮さんですね...!断り方も、ロマンチストといいますか、上手ですよね!ああ言えば、誰だって引き下がるしかないといいますか.......って瞳さん、どうかしたんですか!泣いているんですか!?」

呆然と立ち尽くし涙を流す瞳にマネージャーが目を丸くする。

断る時の、蓮の優し気な瞳ーーーー周囲は気が付いていないようだが、彼は愛しい者を思い浮かべて、自然と笑みを溢していた。

演技でも見たことがない、優しくて、甘くて、それでいて切ない笑みを。

「はは...........失恋しちゃった、あんなの見たら、諦めるしかないじゃん」

どこかすっきりした表情を浮かべて、瞳は蓮の後ろ姿に苦笑するのだった。




「父さん!!!!俺の番の居場所を知っているだろう!?」

蓮はリビングでパソコンに向き合って仕事をする天上院守を怒鳴りつけた。

目が覚めた時、自分は自室のベッドにおり、傍に番である彼の姿はなかった。

三年も会えずにいた愛しい彼を番にし、もう二度と離さないと誓った矢先ーーーーーーー知らない男性に番を攫われた。

しかも父がその男性と番を自分から引き離そうと、容赦なく柔道技をかけられ自分は意識を沈められたのだ。

守が彼らの素性を知らないはずがない。

「知らない」

「とぼけるのもいい加減にーーーー!!」

父の胸倉を掴んだ蓮は、彼の顔を見て目を見開いた。

泣きはらしたせいか、彼の両目は腫れており、瞳の奥は暗く沈んでいる。

いつもポジティブで明るい父の面影がそこにはなかった。

泣きたいのは自分だ。引き離したのは父自身なのに、なぜーーーーーー。

バチンッ

そう言いかけた直後、頬に鋭い痛みが走った。

掴んだ手を緩め、蓮は傍で両目から涙を流す母・天上院てんじょういん 玲香れいかの姿が目に入る。

いつも冷静沈着で、感情をあまり表に出さない母の泣き顔に目を丸くした。

「蓮・・・・!父さんが、どんな思いで・・・・どんな思いでいるか...........!どうして、あんなことをしたの............あなたが、あなたの軽率な行いが.......最愛の番を失うことになったのよ・・・どうして分からないの!!」

「ーーーーーー」

母の言葉が刃となって心に刺さる。

ずっと想い続けていた彼を、自分の欲望のまま、乱暴に抱いた。

彼の名前すら、彼が自分に抱く思いすら、何も知らないままーーーーーー。


ーーーーー番にしないのなら・・・・僕は、別の人間と番になりますーーーーー


彼が自分以外と番になることなど、決してあってはならない。想像しただけで反吐が出る。

だが、彼の言葉を鵜吞みにして、あの場で番にする必要などなかった。

彼と短い期間一緒にいただけで、彼の人柄を多少は理解していたはずだ。

『神の子』と謳われても、青春を送れなくても・・・他人に憎しみを向けずに、懸命に生きる彼が、安易に他人と番になる人間ではない。

頭では理解できていても、彼の口からそんな言葉は聞きたくなかった。聞いた瞬間、塞き止めていた想いが決壊してしまった。

「(きっかけがどうであれ、彼を傷つけたのは間違いなく自分だ・・・)」

彼を傷つけたからこそ、彼は今こうして自分の傍にいないのだろう。

愛しいのなら、彼の言動に、彼のフェロモンに抗って、大切な宝物のように、丁重に慈しむべきだった。


ーーーーーお会いできて、本当に良かったーーーーー


握手会でようやく彼と巡り合えてた運命を、自分はいとも簡単に棒に振った。

「たとえ私たちが、あなたの番のことを知っていても.........蓮、あなたにそれを教えることはできません。それが、あなたの運命だからです」

「・・・・・・」

真っすぐに自分を見つめる母の様子から、どれだけ頼みこんでも番に関しての情報を話さないことは伝わった。

自分は彼に罪を犯した、だが、彼とは一生を添い遂げる覚悟で番にした・・・生半可な想いじゃない。それは両親も分かっているはずなのに、それでも頑なに教えられないという・・・それはつまりーーーーーーー自分の番か、自分から攫ったあの男性が、それを望まないということ。そして、両親は恐らく、何かの理由で、彼らに逆らうことができない・・・・。

考えを巡らせ口を閉ざす蓮に対し、守は涙を流す玲香の肩をそっと抱き寄せる。

「お前の番への想いは、母さんも父さんも分かっている・・・・だが、話せない。こうなっては、俺たちの口から、話すことができないんだ」

「・・・・・・」


「だが、探すな、と言うつもりはないーーーーーーーお前の培ってきたものを活かして、自力で、見つけなさい」


「!」

「俺たちからの話は以上だ。握手会の騒ぎもテレビに取り上げられている。柊と話して、対処しなさい」

「ーーーー・・・はい」

蓮は両親に頭を下げると背中を向ける。

「さっきは・・・・八つ当たりをして悪かった.........父さん、あの時は止めてくれて、ありがとう.........」

そう言い残すと蓮はスマホで柊に連絡をしながら自室に戻っていった。

息子の後姿を見届けながら、玲香は気が抜けたようにその場に座り込む。

「..........愛する者と離れる辛さを、私たちは十分に分かっているのにーーーー愛する息子に、何一つしてあげられないなんて・・・・親失格ね」

泣き崩れる玲香にそっと触れると言った。

「きっと大丈夫だ・・・蓮は、必ず番を見つけ出す...........信じよう、「運命」の導きを」


だが蓮は、この後開かれた握手会の騒動の謝罪会見から、誤った行動に出ることになる。

「カレン・・・必ず君を見つけ出す。そしたら死ぬまで君のそばにいることを、どうか許してはくれないだろうか」

蓮は守に柔道技をかけられ意識が飛びかける中、修二が真のことを「花恋カレン」と呼んでいたこと思い出し、番の名前を「カレン」だと勘違いする。

そのため蓮はテレビに映るたびに、九条真に想いを馳せながら、彼をカレンと呼び、愛を囁き、許しを請う。

それにより、真を自分から遠ざけてしまうことなど、何一つ知らないまま。


運命の番は、今日も「彼女」に愛を囁く。 

次回で『九条先生の過去シリーズ』完結です。

ここまでお付き合いしてくださり、ありがとうございます。

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