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九条先生の過去⑧ ー運命の歯車が狂いだすー

<簡単な登場人物紹介>

九条くじょう まこと Ω(オメガ)

黒髪の美青年。20歳。

小中高大飛び級を繰り返し16歳で医学部を卒業し国家試験も満点で合格。特例で医師免許取得。自身が院長のΩ専用メンタルクリニックに勤める。

16歳で妊娠、17歳で出産しており3歳の愛息子・ルイがいる。

番は人気俳優・天上院 蓮だが、彼には一途な想い人「カレン」がおり、自ら身を引いて息子と二人で暮らしている。昔から今も蓮のファン。


天上院てんじょういん れん α(アルファ)

茶髪、切れ長の瞳にスタイル抜群、圧倒的イケメン。25歳。

子役時代から俳優として活躍し、今や国内外で人気のアイドルであり俳優。また世界的規模の天状製薬社長の息子であり、投資家などさまざまなジャンルを席巻している。

テレビに露出するたびに想い人「カレン」に愛を囁くことでも有名。


九条くじょう 修二しゅうじα

38歳。真の父親。

容姿端麗・文武両道。九条病院の院長であり、医学界の神と称されている。

世界で初めて認知症の治療薬を作り、世界最年少でノーベル賞を受賞している。

家族LOVE。害するものは許さない。


・「カレン」

蓮の想い人。詳細は不明。


ひいらぎ β(ベータ)

蓮の敏腕マネージャー。

蓮が幼少期から担当している。


天上院てんじょういん まもる α 

蓮の父親。世界的に有名な天状製薬の代表取締役社長 。

修二とは幼馴染で親友。

憎まれても、

嫌われても、

呪われても、

殺されても、

それでも僕は、あなたを愛し続けるでしょう。

ーーーーーーーー


「なんだ、この騒ぎは・・・・」

握手会場に着いた九条修二と天上院守は、警備員やスタッフが慌ただしく会場から人を外に出している様子を見て目を丸くする。

出入口は規制され中に入ることができない。

守は人だかりの中に蓮のマネージャーである柊の姿を捉える。

「修二、俺は蓮の父親だし柊に掛け合えば恐らく中に入れる。来い!」

駆け寄る二人に気付いたのか、柊は少し安堵したような表情を浮かべると守に駆け寄った。

「守さん!実はヒートになってしまったΩがいまして、急遽このような対処を・・・・。今回のΩ参加者は、みんな事前の申請では問題なかったはずだったんですが・・・!天上院さんがまだ中にいましてーーーー」

「!」

修二は携帯を取り出すと真にコールするが、彼がそれに応答することはなかった。

自身の呼吸が早くなるのが分かる。心臓がバクバクとうるさい。

なぜこんな人混みの中に真を一人で行かせた?

自分は同じ過ちを、何度繰り返せば気が済むのだろうか?

「入らせてもらうぞ・・・!!」

「あ、ちょっと・・・!」

柊の静止を押しのけ、修二は会場内に入ると目を見開いた。

会場内に充満する、嗅いだことのある、懐かしい匂いーーーーーーー。同じではないが、自分の番である花恋のフェロモンの匂いに酷似している。


ーーーーー世界で一番愛しい人・・・この子たちを・・・お願いねーーーーー


「真・・・・・!」

嫌な予感が、的中した。



真は目を開ける。

頭が先ほどより冴えており、呼吸が幾分か楽になった。体が軽く、熱も引いている。

「(蓮を、煽って・・・・僕は・・・・・・・・・)」

自身の言葉、そしてフェロモンにより蓮は理性を失い、コンドームを付けずに何度も自分を犯した。子宮に彼の精子をたくさん注がれて・・・・慣れない快楽、初めての経験に体力の限界を感じた時、うなじを強く嚙まれた。

その瞬間、全身に電流が走ったような感覚がして、その衝撃で真は気を失ったのだ。

「(首が痛い・・・・夢じゃ、ない・・・・蓮と、番になったんだ)」

うなじは噛まれたばかりということもあり、まだ痺れるような痛みを全身に感じる。

この痛みは現実だ。

幼少期からずっと愛した彼の、番になったーーーーーー。

自分を抱きしめ続ける蓮を横目で見ると、彼は肩で息をしながら静かに目を伏せていた。

真を番にしたことの安堵からか、それとも・・・・・・。

「(番にしたことの、後悔からかーーーーーーーー)」

真は自身の犯した罪の大きさを痛感する。


ーーーーー彼を連れてきて!!!!!!僕が発情期を利用して彼にレイプさせたんだ!!!!!!彼は悪くない!!!!!!!彼はどこ、彼はーーーー!!!!!!ーーーーー


精神科で一人叫び、懺悔する患者の姿を思い出した。(九条先生の過去⑥ ―再会、そして―参照)

国内外問わず絶大な人気を誇る俳優・天上院蓮。誰もが見惚れる美しく完璧な容姿、持ち前の高いポテンシャルでさまざまな仕事もミスなく熟す・・・まさにαの頂点に君臨する人間だ。

自分のような、たかが一般人が近づいていい存在ではない。

ましてや彼にレイプさせ、番になるなどーーーーーーーー決してあってはならないのだ。

画面越しで彼を応援する一ファンで良かった、それなのに、自分の気持ちを優先させて、彼の気持ちを微塵も汲み取らず、自分は・・・・・。


ーーーーー君は、俺のものだーーーーー


涙が頬を伝う。

「(僕はあなたのものだ・・・この先、ずっと・・・・・。でも、あなたは・・・・決して、僕のものにはならないーーーーーそうでしょう?)」

我に返ったあなたはきっと、僕を拒絶し、嫌うだろう。

そもそも自分は、彼の事情を何一つとして把握できていない。

高校の時、自分と出会っていたことを覚えていますか?

好きな人はいますか?

どんな人がタイプですか?

恋人はいますか?

自分以外にーーーーーーーーーーーー番は、いますか?

「(・・・・・・)」

考えれば考えるほどひどい頭痛がする。

先ほどとは違う熱が全身を襲い、うまく呼吸ができない。

最愛の番に拒絶され、嫌われ、彼が自分以外の人間と歩む未来を想像しただけで吐き気に襲われる。

自分で蒔いた種。自己責任。取り返しのつかないことをしたのは、間違いなく自分なのに・・・なんて自分勝手な人間なのだろう。

バンッ

控室の扉が蹴り倒され、中に二人の男性が駆け込んでくた。

強い力で蓮と自分は引き剥がされ、真は一人の男性に抱きしめられる。

「真・・・!!!!!!」

視界がぼやけ、男性の姿をくっきり捉えることができなかったが、声で父だと分かった。

「父・・・さ・・・・・・ん」

「真、もう大丈夫だ・・・すぐに病院に連れて行くからな・・・・・・」

修二の絞り出したような声から、彼の怒り・悲しみなどの負の感情が読み取れた。


ーーーーーお前にもし何かあったらーーーー・・天上院蓮の人生を、確実に潰してから、殺さなければならないーーーーー

(九条先生の過去⑤ ―さよなら、僕の青春時代―参照)


「(!!!)」

父の言葉で背筋が凍り付いたのも思い出す。

父は家族のためなら血も涙もない人間だ。現に今まで自分や兄に危害を加えようとした人間に対し、陰で制裁を加えていたことを知っている。

「(違う、父さん。違う・・・・・!)」

蓮は、被害者だ。加害者は僕ーーーーそれに蓮は、この先訪れるであろう発情期の苦しみから、自分を救い出してくれた。番にしてくれた・・・。むしろ、感謝すべき存在なのだ。

この先、蓮から嫌われても、憎まれても、かまわない。ただ蓮がこの世界からいなくなったら、自分は生きていけないだろう。

それぐらい、それぐらい彼のことを、愛しているんだーーーーーーーー。

世界の最高権力者とも渡り合う力を持つ父が、自分の愛しい人を傷つけないように、真は必死に言葉を紡いだ。

「僕が、彼を、ああさせたんだ・・・・・僕は、番になりたかった・・・・・彼は、悪くない・・・」

その言葉に修二の顔が歪むが、視界がかすむ真はその表情の変化に気が付けなかった。

真は自分の言葉が修二のトラウマを呼び起こしているなど、夢にも思わないまま話し続ける。


「だからお願いーーーーーーーー蓮を・・・・・殺さないで」


その言葉を言い終わらないうちに、真は修二に強く抱きしめられた。

滅多に人前で泣かない修二が静かに涙を流す。

「花恋・・・すまない・・・・私がいつも、不甲斐ないばかりに、大切な者を、守ると誓ったのに・・・!花恋!!!!!!!!私はーーーーーー!!!!!!!!」

そして父は、最愛の番である藤宮花恋への懺悔の言葉を口にした。

蓮だけでなく、大切な家族である父すらも傷つけた。そして父の思い出の中で生きる、母の花恋すらもーーーーー。

真の意識はプツンと途切れた。


「蓮、落ち着け!大丈夫だ!!!!」

蓮は自分以外の男性に抱かれる真に駆け寄ろうとするが、阻止するように守が蓮を押さえつける。

国内でも数人しかいない柔道十段保持者の守は、暴れる息子に抑え技をかけるが、蓮はそれすらも凌駕しようとした。だが守は冷静に抑え技から絞め技を容赦なくかける。

失神しかけても尚、真を追い求める蓮の姿を見て守は両目いっぱいに涙を溜める。

愛する息子の運命の番・九条真。

蓮は高校の時から、ずっと真だけを想い、愛し続けた。

彼が姿を消してから、彼との運命を信じて、必死に仕事をこなし、数多くの結果を残した。

理不尽な芸能界を若くして席巻し、その傍ら、天状製薬の仕事も共に熟して。

それも全て、この世界のどこかで生きる真の目に、少しでも自分の姿が映るため。

もし真ともう一度出会えたら、蓮は芸能界を引退して、天状製薬の仕事を引き継ぎ、真と今まで一緒にいられなかった分、多くの時を彼と共に過ごしたいとよく話していた。

そんな一途で自慢の息子の、一生の味方でありたいのにーーーーーーーーーーー。

「(どうして、真くんを傷つけるような真似をしたんだ・・・・・大切にしたいと、言っていたじゃないか・・・・なのに、なぜーーーーー)」

ぐったりして修二に体を預ける真、そして泣きながら彼を抱きしめる修二。守はぼろぼろと涙を流しながら、その二人の姿を目に焼き付けるようにじっと見つめた。

天上院守は、九条修二に逆らえない。


ーーーーーパパ、僕・・・生きてる?ーーーーー


なぜなら天上院守は九条修二に、大きすぎる借りがあるから。

「蓮・・・僕は、この運命を応援することができない。ーーー蓮・・・本当に、すまない・・・・」

どうして息子の運命の番が、よりにもよって修二の息子なんだろう。

修二の息子でさえなければ、叶う運命もあるというのに。

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