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ショートショート7月〜3回目

花火

作者: たかさば

花火の季節がやってきた


なじみのスーパーの一角に、花火コーナーが設けられている

涼しげなディスプレイに惹かれて、どんなものが並んでいるのかと…のぞかせてもらう


線香花火に、手持ち花火

吹き出し花火に、へび花火

仕掛け花火に、爆竹……


お店に並ぶ花火を見ると…ついつい、手が伸びる


安いの、高いの、ショボいの、豪華なの、でかいの、派手なの、かわいいの……

見たことのない花火には、特に目がない

なじみ深い花火にも、目がない

セットの花火も、単品の花火ももちろん好き


「ねえ、花火大会、やろうよ」

「いいねえ」


自分の庭で開く、小さな花火大会


蚊取り線香を焚いて、水を用意して

大きなバケツ入りのろうそくに火を灯して

花火の先で、燃える炎を頂いて


シューっ……

ば、ばばば……

ザザザザザー……


黄色、赤、緑、水色、オレンジ、白、ええと…それから、それから……


夕暮れに映える、鮮やかな光

夜空の下で輝く、力強い花火


しゅばばばば……

パチパチパチ……

じゅわーっ……


昔はもっと、派手な感じに火花が飛び散っていたような

昔はもっと、派手な感じに煙がモクモクしていたような

昔はもっと、派手な感じに音が鳴り響いていたような


思い出の中にある花火と、つい比べてしまう


あの時の花火は面白かった

あの時の花火は怖かった

あの時の花火はキレイだった

あの時の花火は大変だった

あの時の花火はひどかった


目の前ではじける火花を見ながら、脳内の花火大会も楽しむ

耳に届く音を聞きながら、脳内の花火大会も楽しむ


あの時は、たくさん並んでいる出店で色々食べたな

あの時は、観覧席で幼なじみとあってびっくりしたな

あの時は、会場で娘の前歯が抜けたんだった

あの時は、初めてはかせた草履で靴擦れができてかわいそうで

あの時は、知らない人に席を譲ってあげたんだっけ

あの時は、買ったタコ焼きが生焼けでおなかを壊したんだった

あの時は、会場で息子と会って散々奢らされて財布の中身が空っぽになったし

あの時は、知らない人に席を譲ってもらったんだった


あふれ出す、火花

あふれ出す、思い出


フシュゥー……

じ、じじじ……


……じゅっ


最後の花火が、消えた


私の、脳内花火大会も…色を、落とす


眩しい光を見つめていた目に映るのは…深い、闇

薄暗い庭の、どこにも…華やかな輝きは見当たらない


「……片付けよっか」

「うん」


花火はとても好きだけど、楽しんだ後の時間が、少しだけ……切ない


……また、花火…やろうかな

……また、花火…やれるかな

……また、花火…やりたいな


無言で花火の残骸を片付けながら、私は…次回の花火大会の事を、思った

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