決戦兵器
「帰宅部は帰宅するスピードが大切だと思うんだ!」
部室でヨミ先輩が余計なことを言い始める。
「というわけでここに移動用電磁砲をご用意しました。」
ご用意すんな、物騒すぎるわ。
「試し撃ち役のミライちゃんよろしく!」
なんでだよ、自分を飛ばせよ。
「いや、それ絶対危ないですよね。」
「大丈夫だよ、人の形をしてるかどうかはわからないけど家には着くよ。」
「それを人は大丈夫とは言いませんよ。」
「さすがに試しにミライちゃんを使うのは可哀想だよ。ほら、ミライちゃんの等身大ぬいぐるみ作ったからこれを乗せなよ。」
マユラ先輩が私のぬいぐるみを取り出した。
「これなら、どんなにぐちゃぐちゃになっても大丈夫でしょ?」ニコッ!
複雑すぎる、自分に似せて作られたぬいぐるみをぐちゃぐちゃにされるの複雑すぎる。
しかし、そんなこと言ってられない、私には飛ぶかぬいぐるみを犠牲にするかしかないのだから。
「じゃあ、とりあえず試しに……」
電磁砲が「ゴォォオ」と大きな音を立てて起動する。
「発射口オープン!!」
教室の窓側の壁が折り畳まれながら開いていく。
「これやったのナユタ先輩ですよね。」
「そうだよ、面白そうだったから造ってみたの。」
当然かのように返答する化け物。
今度、「ド○えもん」の道具でも造って貰おう、この人ならなんでも造れそうだ。
「角度良し、射程良し、ミライちゃん人形良し。主電力充電開始……10……20」
カウントが進むたび青白い光が強くなる。
「50……60」
頼む、私の人形、無事に家に着いてくれ。
人形「任せろ、私がこの馬鹿げた物語を終わらせてやる。」
に、人形!!お前………頼んだぞ、私の命の為に!
「100%!!電磁砲発射ァア!!」
ドゴォオオオン!!!と爆音を上げながら青白い光に包まれた人形が飛び出した。
人形「あ、これ無理だわw」
人形が空中で灰になった。
人形ォオオオオ!!
「あーー、やっぱ無理かー。」
「そうだよ、ただの人形じゃ無理だよw」
wじゃねぇよ!こんなん、私も灰になるわ。
「ミライちゃん……乗る?w」
笑ってんじゃねぇよ!乗らねぇよ!
「乗りませんよ!」
「そっかぁ、ざんねんw」
この部活辞めようかな。この部活にいると命がいくらあっても足りない……。
「でも、やっぱり、これに耐えれる物質を探さないとな……なにかあるかな…………はっ!これは」
そう言って、ヨミ先輩が手に持ったのは某有名チョコ菓子。
「たけのこの町!!これを宇宙に届けよう!」
「確かに「たけのこ」の耐久度と軽さであれば宇宙に到達することも可能だね。」
まさか、また、その名前を聞くことになると思わなかったよ。本当にそのお菓子何で出来てるの?
「よし、これをセットして……よし!充電開始!」
「60…80………100!充電完了!いつでもいけます!」
マユラ先輩が伝える。
「決戦兵器・ミライ・ブレイカー発射!!」
いつの間にか超絶物騒なネーミングがついた電磁砲が「たけのこ」を宇宙に向かって放った。
「たけのこ」は青白く光り輝きながら宇宙へ向かって飛んでいく。
どこまでもどこまでも飛んでいく。
私は打ち上がった「たけのこ」を眺めながら思った。
私もあの「たけのこ」のように強く生きよう……と。
「たけのこ」打ち上げエンド。