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第七話 トクさん…初体験

 ……最高だったぜ……。息が上がる。久しぶりに動いたせいで明日は筋肉痛確定だ。この野郎。たくさん汗かいて……俺はもう何度絶頂に至ったか。


 ……生の美玲ちゃん、可愛すぎた。最後の最後まで、なんてことさせるんだ。可愛い声に予期せぬ動き……。こんな快感……今まで味わったことない。



「君、初めての割にはすっごい良い動きだったけど……本当に初めて?」




「……はじめて……です。……ヲタ芸!!!」

 テレビでは見ていたものの、こんなのようやるなぁと鼻で笑っていたが、好きな美玲ちゃんのためならと自然と体が動いた俺って。


 親衛隊たちに握手とハグを求められた。みんな汗臭い……まぁあんだけ踊って汗だくだもんな。俺も臭い! 混ざり合えば臭くない! 柔軟剤の匂いしてる奴もいるがそれもキツすぎて逆効果だぞ! でもちゃんとその辺のエチケットもしっかりしててそれはそれで努力は認める!!!


 するとチビもやってきて俺はがっしり手を握った。手汗がすごいぜ!

「僕は錦之介きんのすけ。みんなからキンちゃん、て呼ばれてる。他のみんなも地元でバリバリ働いてる奴とか、近辺に住んでいるやつばかりで、こうしてイベントになったら集まるんだ。仲良くしてやってくれ。」

「……俺は……徳山……。」

「じゃあ、トクさん、よろしくな!」

 見た目は幼いけど俺よりも年下なのか? 彼も美玲ちゃんのタオル持ってるから美玲ちゃんファンか。親衛隊のやつはそれぞれ名前が違うタオルをぶら下げている。……そのタオルはどこで手に入るのだ?


「あ、これ? 物販で売ってるんで後で買いに行く? Tシャツとかマグカップもあるし」

 僕は高速で首を縦に振った。グッズ、ようわからんがなんとなくほしい、無駄なものは買わない主義だが今の気持ちは買いたい、買う! の方向だ。

「正直なところ、毎週やるライブで買った方が購入金額に応じて握手券もらえるんでその時にしましょうか」

 は? なに? なんだと? なんというシステムだ!!! 買えば買うほど握手ができる? てか買わないと握手できないのか? お金でしか彼女たちとは握手できないのか? そうだよな、そういう仕組みだよな。世の中はそう甘くない。でもキンちゃんや親衛隊隊はグッズをいくつか持っているからたくさん握手しだろう。


「でも今日は特別にフリー握手会だから。並びに行こう。いつもよりも長く握手できるチャンスなんだ」

 ……え、今から握手会? え、今から握手できちゃうの? 何も買ってませんけど? 手、手は洗ってないし……。


 何がなんだかわからないまま、親衛隊に押されて握手会場に連れて行かれる。遠くからトオルが手を振ってる。

 いや、手を振ってる場合やないやろ、てか親衛隊! そんな汗だくなまま行くのか、おい!


「デビューしたてなのにたくさんファンいるんだな……」

「あーもともと、リーダーの大野ちゃんが東海ローカルの番組で人気あって。その子が地元でアイドルユニット作りたい!と言ったのが始まりで」

「確かにあの女の子見たことある……」

「でしょ。大野ちゃんも可愛いけど、やっぱり可愛い子の周りには可愛いが集まるもので。最初は普通の女の子だったけど大野ちゃんの肥えた目で集められた子達たちだ、さすがだな。今じゃご当地アイドルなのにこんなに集められるグループになっている」

 並んでいる最中にキンちゃんがいろいろ教えてくれた。

 俺はあのケーブルテレビの番組しか見てないからわからないことだらけだった。


 地元タレントの大野郁美おおのいくみがオーディションで四人の岐阜出身の子を集めて組んだユニットが清流ガールズ。


 メンバーはリーダーの大野郁美20歳、美玲ちゃん19歳、恵18歳、由美香18歳、葉月15歳。あらま美玲ちゃん、まだ未成年なんだ……未成年……18歳超えてるから合法か? そうに見えない大人っぽさと色っぽさがある。7歳差かぁ。


 あくまでもリーダーはプロデュースしたい立場。運営側も一番スター素質のある美玲ちゃんをセンターにして他の引き立て役の三人は影が薄いがそれなりにファンはついている模様。美玲ちゃんは特に多く、リーダーのファンが、そんなに推すのならということもあって人気は出ている。


 これ以上メンバーの人数は増やしたくない、とのことだが清流ガールズに入りたいという子はたくさんいるらしく、近々オーディションをするそうだが、役者やモデルの卵が多く、ナチュラルな自然体な逸材が見つからずに前回のオーディションは該当者無しだったらしい。


 ……ってそんな長ったらしい話をするほどかなり並んでいる。


「フリーライブだし……剥がしが甘い。一人一人長く握手してるから並んでるんだよ。まぁこういう地域のイベントこそ、顔と名前を覚えてもらえるチャンスだからしょうがない」


 そういうことか。そりゃ長く握手したい、したいさ。でもそしたら時間かかってしまう。

「この待った分、会えたときの幸せと言ったらぁ」

 デレデレっだな……俺もこんな顔してないよな……ほっぺを触る。ちょっと剃り残しあるな……。


 どんどん近づいてくる。こんなにドキドキしたのはいつ以来なのか。女の子に対して。

 何度拭いても手汗がっ、手汗がっ! ……て、あっという間に目の前に若い子が……!!!

 そして僕の目を見て、ガシッと両手で握手して


「今日はきてくれてありがとう!」

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