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第三十七話 強制依頼 その6

2021/12/21 誤字修正

 その後も何度も森から溢れ出てくる魔物を倒して倒して倒しまくった。

 いやー、いろんな魔物がいるんだね~。

 猿と狼くらいなら、以前の魔物解体の依頼で見たけど、それ以外にもいろんな種類の魔物がいたよ。

 魔物だよねぇ? 野生動物とか混じっていないよねぇ?

 今なら「襲ってくるのが魔物だ!」という魔物の定義に賛同できるよ。

 向かってくる奴は魔物だ! 向かってこない奴はよく訓練された魔物だ!

 あれ、なんか違う?

 午後になって日が傾きかけたところで、森の中のルークさん達に合図を送って作戦は終了した。日のあるうちに撤収しないといけないからね。

 ふぅ、これでようやく一息……つけないよ!

 これからがぼくの仕事の本番だよ!

 むしろ、昨日来た時とこの先だけがぼくの仕事だったんだよ!

 ええい、日が暮れるまでにさっさと終わらせなくちゃ。

 ぼくは大急ぎで魔物の死骸をポーチに詰め込み始めた。

 この場所の魔物は、森から魔物が出てこないタイミングを見計らって少しずつ収納して行ったから残りの数は少ないけど、魔物を倒した戦場は広い範囲に散らばっている。

 ぼくはセルフブースト全開で駆け回って魔物を回収して行った。

 どうにか日が暮れる前にベースキャンプに戻れたよ~。


 夜はベースキャンプ留守番組が作った食事をみんなで取る。

 昼は魔物を警戒しながら携帯食をちょっとずつ齧るだけだったらか、ごちそうだよ。

 「皆が頑張ってくれたおかげで、前回以上の魔物を狩ることができた。報酬は期待してくれ!」

 「「「オオー!!」」」

 おっさんの一言で冒険者たちが盛り上がる。

 冒険者の収入は出来高払いだ。依頼主から提示された固定の報酬に、倒した魔物から得られる素材の売却益を加えたものが冒険者の手に渡る。

 それにはもちろん魔物を倒しただけでは駄目で、倒した魔物を解体して必要な素材を取り出さなければならない。

 前回は持ち帰れずに捨ててきた魔物の死骸も多かったそうだ。

 あれだけ猿の解体をさせて、それでも一部だけだったの! などと言いたいところだけど、今日の討伐を経験すればそれも納得できる。

 あれだけの数を持ち帰ることは、普通は無理だよねぇ。必死になってぼくの魔法倉庫(マジックストレージ)を使いたがるわけだよ。

 「皆も気が付いているだろうが、予想以上に魔物の数が多く、また普段なら東の森にいないはずの強い魔物も確認されている!」

 へー、そうなんだ。ぼくは普段の東の森の様子なんて知らないし。

 「そこで、食糧も十分にあることだし、もう一日二日討伐作戦を延長しようと思う!」

 「「「オオー!!!」」」

 え、ちょっと、聞いてないよ! 明日もまたこんなことをやるの!

 げんなりするぼくとは裏腹に周りの冒険者たちは盛り上がっていた。

 多くの冒険者にとっては今回の強制依頼はボーナスのようなものらしい。

 領主からの依頼と言うことで報酬が割り増しの上に、森の外で待っているだけで魔物が向こうからやって来る楽な仕事なのだそうだ。

 その分、割を食うのが高ランクの冒険者なんだけど、彼らもランクの低いうちは同じように先輩の世話になっているし、高ランクの冒険者として優遇されている者の義務でもあるのだそうだ。

 ねえ、ぼくの立場は!?


 翌日、おっさんの言葉通り作戦の二日目が行われることになった。

 ただ、ぼくの仕事はちょっと変わった。

 まず、朝一でぼくは一人リントの冒険者ギルドに戻り、前日に狩った魔物を引き渡してきた。

 いやー、まとめて出すとすごい量だったよ。ギルドの職員総出で対応していた。

 それから東の森の北にとんぼ返りで戻り、魔物を討伐している各場所を廻って倒した魔物の死骸を回収して行った。

 これが本来のぼくの仕事だよねぇ? 魔物をガンガン倒して行った昨日の方が間違っているよねぇ!?

 まあ、本来の仕事でも予想以上に荷物持ちの仕事は大変だったよ。

 ついでに、ちょっと苦戦していると討伐の方も手伝わされたから、遊撃要員みたいになっちゃってたけど!

 ぼくの作った爆音石(おっさん命名)は予め冒険者に配られて、それなりに活躍したそうだ。


 さらにその翌日、討伐はもう一日延長された。

 やったことは二日目とほぼ同じ。さすがに三日目となると出てくる魔物の数がだいぶ減ったようだ。

 それにしても、三日連続で大量に出てきた猿や狼はどれだけの数が棲息しているのだろう?

 まあ、ともかく東の森で活動する魔物を一定数間引くことができたのは確かだ。

 追い立てて出で来る魔物の数が減ったこともあり、今回の討伐はこれで終了することになった。

 実は今回の作戦のために東の森を抜ける街道と東の森を北側に迂回するルートを通行止めにしているので、あまり長く続けていられないという事情もあったそうだ。

 そんなわけで、四日目の朝、ベースキャンプを設営した日も含めれば五日目の朝に、ぼくたちはベースキャンプから撤収した。

 ぼくが作った堀と鉄柵は、「出来がいいからこのままにして、次にまた使おう。」と言うことになった。それでいいのか?

 もしかしたら第三回東の森掃討作戦の可能性を見据えているのかもしれない。根本原因である南の森の異変については手付かずなわけだし。

 まあ、後のことは後として、ぼくたちは全員無事にリントに戻ってきた。

 リントの冒険者の大半を巻き込んだ、このお祭りのようなイベントは、一人の死者も重傷者も出すことなく無事に終わりを……って、まだ終わらないんだよ、チクショー!

 本祭が終わってもまだ後夜祭が残っている。その名を「解体祭り」と言う。

 今名付けた!

 前回よりもたくさんの魔物の死骸があるんだよ。ギルドの職員や解体業者だけでは手が足りないのは当然。低ランクの冒険者はほぼ強制参加!

 ぼくが先行して倒した魔物を届けていたから、実は撤収前から始まっていたんだよね、「解体祭り」。

 ジョン達もしっかり巻き込まれていたよ。頑張れ、冒険者ならだれでも通る道だ! 報酬もそこそこいいぞ!

 ぼくも強制参加だけどね。

 本当は阪元さんにも手伝って欲しいところだけど、みんなで解体作業するからちょっとね。

 魔法倉庫(マジックストレージ)に魔物を入れます。しばらく待ちます。はい、解体された素材が出てきました!

 便利すぎる魔法倉庫(マジックストレージ)だと言い張っても、便利すぎる阪元さんを紹介しても、どちらにしても大騒ぎになるだろうなぁ。

 ここはもう解体の練習と割り切って頑張って作業しますか。

 ちなみに、解体祭りに参加しない高ランクの冒険者には、東の森の様子を監視したり、南の森に偵察に行ったりする仕事がある。こればっかりは任せるしかないから、誰も文句も言えないんだよね。


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