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第三十話 阪元さんと語る

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 今日も朝からルークさんと訓練。

 いつものこと……なんだけど、最近ルークさんが張り切っていて、訓練がなんかハードになっているんですけど~!

 何かあったの?

 「リョウヘイには早く一人前になってランクを上げて欲しいからな。」

 ぼくはFランクの仕事でも結構稼げているから、急いでランクを上げる必要を感じないんだけどねぇ。

 「南の森の奥に入るにはBランク、上位パーティーに参加する場合でもDランクはないと許可が下りないからなぁ。」

 ルークさん、何さらっとぼくを危険地帯へ連れ出そうと考えているんですか!

 「アイテムボックス……いや、魔法倉庫(マジックストレージ)持ちにはそれだけの価値があるってことさ。」

 あ、荷物持ち要員か。

 「南の森は広い。その奥深くに分けいるだけで何日もかかる。持ち込む荷物も多くなるし、途中で倒した魔物の素材を持ち帰れないことも多い。」

 そう言えば、東の森で倒したイエローモンキーも一部しか持ち帰れなかったっけ。

 「魔物との戦いで食糧を失ってやむなく引き返すこともあれば、大物を仕留めたのに持ち帰れずに泣いたことが何度あったことか! そんな時に魔法倉庫(マジックストレージ)、いや魔法鞄(マジックバッグ)でもあればどれほど助かることか!」

 うわぁ~、何か切実だなぁ。

 「リョウヘイならば守りも硬いし、今でも精鋭パーティーに十分ついて行けるだろう。早くランクを上げて南の森の探索を手伝って欲しいところだ。」

 うーん、予備の魔法倉庫(マジックストレージ)を貸し出すだけで十分に目的を果たせそうだけど、あれを公開するのは問題ありそうだからなぁ。

 「同じように考えてお前を狙っている奴もいるから気を付けろよ。中には功を焦って無理をする者もいるからな。」

 いや、ルークさん自身が狙っている一人でしょう!

 そういえば、レイモンドさんもそのうち手伝って欲しいようなことを言っていたけど、アイテムボックスを活用した商売を狙っているのかな?


 さて、南の森に限らず、パーティーの荷物持ちの件はしばらく先の話になる。

 ぼくは今、冒険者ギルドに保護されている状態なので、ギルドの許可なくパーティーに加わることができないのだ。

 ジョン達のパーティーとは冒険者としての訓練用にギルド側の意向で組まされたものだ。一般の冒険者がぼくをパーティーに誘うことは禁止されている。

 もちろん何の実績もない初心者(ニュービー)のぼくをわざわざパーティーに勧誘する意味はない。けれども魔法倉庫(マジックストレージ)を持っているとなれば話は変わって来る。ルークさんも目の色が変わっているくらいだからね。

 おっさんからも不用意に勧誘に応じるなと念を押されていた。

 うかうかと誘いに乗ってしまえば、危険地帯にまっしぐら~だったり、下手をするとヤバい物の運び人をやらされたりと、ろくでもないことになること間違いなし!

 うーん、便利になると思って頑張って覚えたアイテムボックスだけど、予想外に面倒なことになったよ~。


 このところごたごたしていたから、今日の午後は仕事も訓練も休んでのんびりしよう。

 ふぅ。

 まったり~。

 …………。

 ああ、そう言えば気になっていたことがあったんだっけ。

 ぼくは魔法倉庫(マジックストレージ)の蓋を開けて阪元さん話しかける。

 阪元さんってどうして封印されていたの?

 『俺っちっスか?』

 ――うむ、興味があるな。

 あ、黒歴史の星さん。いきなり出てきたね。

 ――どこの星だ!

 ……白鳥座X-1とか?

 ――ブラックホールではないか!

 黒歴史さんにぴったりの暗黒の星!

 ――()は光すら逃さぬ暗黒の星、事象の地平に刻まれし記憶に汝の姿を焼き付けん……

 うきゃぁー! 止~め~て~。それは、「最近の異能バトルでは重力使いはありふれてるよね」とか言って没にした呪文!

 『お兄さん、相変わらず面白いっスね。』

 ハアハア、それより今は阪元さんの話だ。

 ――うむ、そうであるな。

 『俺っちのは大した話じゃないっス。美女に一目惚れして告ったら、上司の娘だったっス。』

 ――悪魔も色香に迷って道を踏み外したか。

 『色欲じゃないっす、真実の愛っす! 最も尊いものは愛だって、メフィスト先輩も言ってたっス。』

 その真理にたどり着いたのはファウスト博士の方じゃなかったっけ? よく知らないけど。

 『その後メフィスト先輩も愛に目覚めたっス。博愛精神に目覚めたメフィスト先輩は、魔界都市で魔界医師をやっているって風の噂で聞いたっス。』

 何その人体実験とかやっていそうな怖いお医者さんは。

 まあ、それよりも、悪魔なのに真実の愛に目覚めたから封印されたってこと?

 『違うっス。彼女は俺っちを振ったうえに、親にあることないこと報告したっス。俺っち上司の陰謀で色んな罪を被せられて封印されたっス。』

 ……悪魔にもあるんだね、パワハラ。

 ――結局は痴情のもつれではないか、くだらん!

 『俺っちもう女はこりごりっス。メフィスト先輩も女に懲りて男色に走ったっス。』

 それはなんか違わなくねぇ?


 あきれ返った黒歴史さんが引っ込んだところで、ぼくはもう一つ阪元さんに聞いてみたいことがある。

 ねえ阪元さん、ぼくは元の世界に帰れるのかな?

 『お兄さん、帰りたいっスか?』

 うーん、どうしても帰りたいというほどでもないんだよね。

 こっちに来てから親切な人に恵まれて、そんなに嫌な思いもしていないし。

 日本に未練が無いとは言わないけど、命をかけてまで帰りたいと思うほど必死にはなれないかな。

 あと、みんなこの話題を避けているみたいなんだよね。多分帰る方法が無いのか、あっても凄く困難か危険なんだと思う。

 それにさあ、今から帰っても高校受験やり直しで一年浪人とか、最終学歴中学中退で就活しなければならないとか、ハードモードな人生が待っている気がしてならない!

 でもさ、帰れないのと帰らないのは違うと思うんだ。

 方法があるのならば知っておきたい。

 『そうっスか。お兄さんも大変っスね。結論から言うと、お兄さんが帰るのはかなり難しいっス。』

 うん、まあそうだろうと思っていた。簡単に帰れるならだれかが方法を見つけているはずだよね。

 『まず、異世界は無数にあるっス。何らかの繋がりが無いと、元の世界を特定することができないっス。』

 何らかの繋がり?

 『一時的に別の世界から呼び出す召喚術なら、呼び出した時の経路(パス)を残しておくっス。その経路(パス)を使えば簡単に戻せるっス。でもお兄さんの場合、事故みたいな物っス。経路(パス)は残っていないっス。』

 その経路(パス)以外に何かないの? ぼく自身やぼくの持って来た物に元の世界の痕跡が残っているとか?

 『可能性はあるっス。ただお兄さんの肉体は、時間と共にこの世界の物質と入れ替わるっス。持ち物の方が可能性は高いっス。』

 そっか、日本から持って来た物は大切に保管しておこう。あんまり大したものはないけどないけど。アイテムボックスの中なら盗られたり失くしたりする心配もないからね。

 『そこは任せるっス。』

 そう言えば阪元さんも別の世界から来たんだよね? 元の世界とは繋がっているの?

 『向こうから切られたっス。繋がりが断たれたせいで元の世界基準の刑期が減らなくなったっス。』

 容赦ないなぁ。まさに悪魔の所業だ。

 『上司は昔から親ばかで有名だったっス。』

 動機がちょっとあれだけど。

 『俺っちはこれでも悪魔っス。封印さえ解ければ、時間はかかっても元の世界を見つけ出せるっス。でも普通の人はその前に寿命が尽きるっス。』

 阪元さんは頑張れば帰れるのか。ぼくは繋がりが無ければ無理そうだけど。

 『それからもう一つ、元の世界に戻るには大きなエネルギーが必要になるっス。』

 エネルギー? 世界の壁を越えるためとかの?

 『世界にはそれぞれ基準となるエネルギーがあるっス。エネルギーの高い世界から低い世界に行くには余剰のエネルギーを捨てればいいっス。でも逆は不足するエネルギーをどこかから持ってくる必要があるっス。』

 元の世界の方がエネルギーが高いってこと? 魔力を注ぎ込んでどうにかならない?

 『たぶん世界を渡った際の余剰エネルギーの一部を利用してお兄さんに能力を与えているっス。この世界の神様がそういう仕組みにしているんだと思うっス。』

 え、『渡り人』のチートってそういう仕組みだったの!?

 『だから、少なくともお兄さんの全魔力の数倍のエネルギーが必要になるっス。』

 そっかー、チートを作り出す元のエネルギー以上のエネルギーがいるのかぁ。つまりチートを全て犠牲にしても元の世界には届かないと言うことなのか。

 『ドラゴンの魔石にお兄さんの魔力を何年かかけて溜め込めば、必要なエネルギーに届くかもしれないっス。』

 ここでもドラゴンの魔石が必要になるの~!

 ドラゴンの魔石なんて個人で買えるものじゃないし、自分でドラゴンを倒すなんてもっと論外!

 実質的に不可能だよねぇ。


実は阪元さんに関しては出してよいものかちょっと悩みました。

脳内会話を行うので、黒歴史さんとちょっと立場が被るもので。

しかも亮平の知らないことは知らない黒歴史さんと違って、阪元さんはどんな知識を持っていても不思議はないですし。

まあ、黒歴史さんと阪元さんの掛け合いも面白そうなので、今後もどうにか阪元さんと黒歴史さんを出して行きたいと思います。

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