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第二十四話 魔術の修行をしてみた テイク4 その1

 今日は新しい魔術に挑戦しようと思う。

 なんか、前にも同じようなことやった気がするけど、今日は一味違うぞ!

 ジャーン!

 この前古本屋で買った本~!

 なんとこの本、空間魔法の本なのだ!

 こんなお宝が古本屋で埃を被っているとは思わなかったよ。

 なんと言っても空間魔法だよ! 空・間・魔・法!

 アイテムボックス! ストレージ! インベントリ!

 ワープ! テレポート! 瞬間移動!

 夢が広がるよね!

 魔法だからまだ使えないけど、魔術として再現すればいい。

 無理なら魔法が使えるようになるまでお預けだけど、覚えておいて損はない。

 銀貨三十枚もしたけど、安い買い物だったよ。

 それでは、早速読んでみよう。

 ………………。

 …………。

 ……。

 ……Zzzzz。


 ハッ!

 なんだこれ、睡眠(スリープ)の魔法でもかかっているの!?

 さっぱりわけが分かんないよ~!

 テンソルって何さ!

 微分方程式って何なの!

 古本屋さんで、「誰も読める者がいなかった」ってそう言うこと?

 お願いだから日本語で書いて下さい~って、あ、これ、日本語で書いてある。

 そっか、日本から来た『渡り人』が書いた本だったのか。そりゃあ、誰も読めないよね。

 頭のいい人もいるんだな~。

 ぼくには無理だから、理論編はパスしよう。

 目次、目次っと。

 おっ、あるじゃないか、アイテムボックスの魔法!

 思えばこの前の下水道の仕事でも、アイテムボックスの魔法さえ使えれば人間クリスマスツリーにならなくて済んだんだよ~。

 えーと、この辺かな……。

 うっ、これ中級魔法だ。魔法術式の解析、大変そうだなぁ。

 あ、なんか注釈が書いてある。

 へー、ダンジョンの宝箱からたまに出て来る魔法倉庫(マジックストレージ)と言う魔道具(マジックアイテム)を解析して作った魔法なのか。

 そう言えばこの世界にはダンジョンがあるんだよね。この近くには無いけど。

 リントの冒険者は南か東の森で魔物と戦いながら仕事をするんだけど、場所によってはダンジョン攻略を目的とする冒険者が集まる迷宮都市なんてものもあるらしい。

 ダンジョンでしか得られない貴重な魔道具(マジックアイテム)は、数が少ないこともあって無茶苦茶高値で取引されるらしい。

 高価で入手困難な魔道具(マジックアイテム)に代わる魔法だからぜひとも覚えたいところだけど……魔術で再現するのは難しそうだから後に回そう。


 えーと、他には……

 お、テレポートの魔法もあるよ!

 どれどれ……。

 ぐはぁ! これ上級魔法だよ。

 魔法術式の文字数も半端なく多いし、見た感じ消費魔力も凄そうだ。

 エリーザさんなら発動できるかな?

 あ、これも注釈が付いている。

 なになに、ダンジョン内の仕掛けを調べて作った魔法?

 テレポートのトラップとか、ボスを倒すと一気に出口まで送ってくれる仕掛けとかあるのかな?

 しっかし、ダンジョン大活躍だな。

 もしかし、この本の著者は迷宮都市で活躍していたのかな?

 でもさすがに上級魔法は手が出せないなぁ。

 これもできたらすっごく便利そうなんだけどなぁ。


 初級魔法はないものか?

 うーん、空間魔法は難しい物ばかりだなぁ。

 もう少し簡単なのはないのかなぁ?

 えーと、あ、あった、あった、初級魔法。

 なになに、空間認識の魔法?

 よく分からないけれど、魔法術式は簡単そうだし、試してみようか。

 空間(ローカス)の魔法文字を書いてっと。

 魔力制御はこんな感じかな。よし、発動!

 ……。

 ……?

 ……。

 なんとなく周囲に何があるのか分かるような気がする。

 これだけ?

 なんだか地味だなぁ。

 セルフブーストで視覚や聴覚を強化すれば似たようなことはできるし。

 でもまあいいや、とりあえず空間魔術成功!

 この調子で色々試してみて、空間魔術の感覚を覚える。

 それで理解が深まれば、中級魔法の再現にも手が届くはず!

 目標はアイテムボックスだ! やるぞ~!

 ………………。

 ………………。

 ………………。


 行き詰ったぁ~!

 初級の空間魔法は数が少ない上にみんなしょぼい。

 空間の歪みを感知するとか、特定の場所をマーキングしてそれがどっちの方向か分かるとか。空間認識の親戚みたいな魔法しかない。

 一応魔術で再現できたけど。

 どうも初級魔法では空間を感知する系統のものばっかりみたいで、空間を歪めたり繋げたりするのは中級以上になるみたいだ。

 そんでもって、初級から中級の壁が分厚い!

 中級魔法と言っても、初級に毛が生えた程度のものから上級の一歩手前まで幅があるんだけど、空間魔法の中級は上級に近い物ばかりだ。

 初級魔法を頑張って魔術で再現しても、中級魔法にはちっとも届く気がしないんだよ。

 うーん、初級の空間魔術をいくら練習しても、中級以上の練習にはならなそうだし、ここはひとつ、

 「アイテムボックスの魔法術式を解析してみるか。」

 すっげーめんどくさそーだけど。

 ………………。

 ………………。

 ………………。



 フ、フ、フ、ついにやったぞ! アイテムボックスの魔法術式を解析完了!

 いや~、一週間近くかかってしまったよ。

 まあ、これだけやっていたわけじゃないけどね。

 朝はいつも通りルークさんと訓練しているし、本を買うために使った分のお金を補充するために簡単な依頼を受けたりもした。

 いや、「都市防壁の補修工事の手伝い」の依頼は結構ハードだったけどね。一日中セルフブーストかけっぱなしだったよ。我ながらよく魔力が持ったもんだ。

 もちろん指パッチンの練習もしていたよ! 指パッチンさえできれば、空間魔法ももっと簡単に使えるようになるはずなんだよ!

 まあともかく、どうにか魔法術式は読み解くことができた。魔法で何をやっているのか、だいたいのイメージはつかめたよ。

 苦労したよ~。

 中級魔法ともなると使われる魔法文字の数も多いし、その表現も複雑だ。少しでも文字数を減らしたり、素早く書けるように使用する魔法文字やその並びを工夫して難解な表現をすることもあるそうだ。

 空間魔法特有のものなのか、知らない魔法文字も使われていたりして、エリーザさんに聞いてみたり、ギルドの資料室にあった魔法関係の資料を見せてもらったりもした。

 空間魔法の本を見せたら、エリーザさん驚いていたっけ。珍しい魔法の本はあんまり出回らないらしい。

 それから、エリーザさんはアイテムボックスの魔法を使えなかった。

 初級魔法ならば正しく魔法術式を書けば誰がやっても発動する。魔力で魔法文字が書けて、指パッチンさえできれば!!

 しかし、上級の魔法や中級でも複雑なものは少しでも魔法術式を短くするためにイメージや魔力操作で補う前提で作られているのだそうだ。

 そうでもしないと魔法文字が消えるまでに魔法術式を書き終えられないからだ。

 魔力適性Aのエリーザさんでも、全身を使って一度に複数の魔法文字を書いてどうにか発動できるのが大魔法だからね。もっと適性の低い人はギリギリまで魔法文字を減らさないと中級魔法でも使えない。

 だからイメージと魔力制御が必須となるのだけれど、空間魔法のイメージは難しかったみたいだ。

 本の注釈にもイラスト付きでイメージの説明が載っていたけど、師匠から実物の魔法を見せてもらってイメージを作るのが一般的なのだそうだ。

 魔法でも難しいものを魔術で再現できるのかって?

 できるんじゃないかな、たぶん。

 アイテムボックスの魔法のイメージはあるからね。マンガとかアニメとかでみたイメージだけど。

 魔力制御についても、魔法術式の解析結果と注釈にあった説明でだいたい理解した。

 難しい魔法だけあって、注釈の説明がうっとおしいほどに量が多いんだよね。

 それじゃあ、試してみようか。

 空間(ローカス)の魔法文字を書いてっと。

 魔力注入~!


長くなったので、次回に続きます。


亮平は頭が悪いわけではありません。

ただ中学生の学力でいきなり一般相対性理論レベルの空間理論の論文を読んでも分からないだけです。

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