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魔法のある世界に来たのだけれど、指パッチンができなかったので魔法使いになれません  作者: 水無月 黒


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第十二話 ルークさんと模擬戦

2021/12/21 誤字修正

 ふ、ふ、ふ。ついにこの時が来た!

 「お、自信ありげな顔をしているな。何か策でも考えてきたか?」

 まあ、いつものルークさんとの訓練なんだけどね。

 でも、今日は練習していた原始魔術が形になってきたので、ルークさんで試してみるつもりだ。

 ルークさん、今日こそ一泡吹かせてやるぞー!


 「それじゃ始めるか。どっからでもかかって来い!」

 ルークさん、ぼくが策を講じていることを見抜いているのに余裕だ。これまで、ぼくの小細工は全て粉砕してきたのだから当然だろう。

 しかぁーし、今回はその余裕が命取り!

 ぼくは素早く魔法文字を書いて、セルフブーストとセルフプロテクションを発動する。この間僅か0.1秒! 計ったことないけど!

 セルフプロテクションはいつものように纏ったまま動ける鎧形態。最近は魔力の鎧も三十分くらい持つようになった。

 そして、今回はそれ以外にも魔法文字を書いている。

 喰らえ! 先制の原始魔術!


 ――ピカァー!


 「うぉ! 眩しい!」

 これこそ、セルフライティング改!

 光球を自分の近くに浮かべるのではなく、自分自身の身に纏うようにしたものだ。

 練習していたのは攻撃魔術だけではないのだよ。

 今は胴体部分だけを光らせている。これだと、自分では光源を直視しなくて済むからあんまり眩しくないのだ!

 対するルークさんは、ぼくの方を見ないわけにはいかない。咄嗟に左腕で目を庇ったのはさすがだけど、いつまでそうしていられるかな?

 ぼくはルークさんに走り寄り、手にした木剣を振り下ろす!

 「えい!」


 ――ひょい!


 「やー!」


 ――ひょい!


 「とりゃぁー!」


 ――ひょい!


 「うわぁー、やりにくいなぁー。」

 そんなことを言いながら、ルークさんはぼくの剣を楽々と躱して行く。

 くー、やはりこれだけじゃ決定打に欠けるかぁ。ならば、次は……


 ――コツン!


 ん? ルークさんが軽くといった感じで突き出した木剣が胸の辺りにぶつかった。魔力の鎧で防いでいるし、ダメージはないんだけど……あ。

 「うぎゃあー。目が、目が~!!」

 しまった! 光源を直視してしまった! セ、セルフヒーリング~!

 ハア、ハア、ハア。

 「なかなか面白い技だっだど、目立つから魔物を引き寄せる危険がある。使う時には気を付けろよ。あと、夜にやると虫に集られるかもしれないな。」

 いつの間にか距離を取ったルークさんがそんな風に評する。

 うーん、やっぱり目立つよね、この技。

 虫に集られる……嫌だな~、セルフプロテクションの鎧で防げるだろうけど……インセクトアーマー! 嫌すぎる~。

 とりあえず、纏っていた光を消す。次だ、次行ってみよう!

 ぼくは新たに(イグニス)の魔法文字を書く。そして、魔術を発動する!

 すると、ぼくの周囲に火の塊が浮かんだ。

 「へー、魔力の鎧を変形させて、その先に火を纏わせたのか。」

 さすがはルークさん、一発で見抜いた。

 まあ、以前にもセルフプロテクションの鎧を変形して武器代わりに使うのはやって見せてたからね。

 ただ、あくまで防壁の変形なので、剣や槍の形にしても切ったり突いたりするような攻撃力はほぼない。

 でも、その先に火を灯すことで無視できない攻撃力を得るのだ! ヘイヘイヘイ、触ると火傷するぜ~。

 それに、この方法だと射出しないせいか魔力の消費も控えめみたいだし、何よりこちらに向かってこない分怖くなくていい。

 「だが、おかげで突起の位置がはっきりとわかるぞ。」

 ルークさんが躊躇なく近づいてきて、あっさりと火の塊を躱してぼくに肉薄する。くっ、止められない!

 「おっと!」

 しかし、そこでルークさんは唐突に距離を取った。

 「火を纏った突起の他に、見えない突起も混ぜていたのか。考えたな。」

 ふ、ふ、ふ、派手な攻撃の中に見えない攻撃を紛れ込ませるのは、マンガなんかでもよくある定番だよ。何でルークさんは初見であっさり見破っちゃうの!?


 ――パリン! パリン!


 しかも、あっさりと火の灯った鎧の一部を破壊してしまった。

 火を纏わせた部分は、魔力の鎧の一部を細長く伸ばしたものだから強度はあまりない。でもあっさりと壊せるのはルークさんの腕が凄すぎるから、だと思いたい。

 ま、まあ、これも想定の範囲内! どんどん行くよ!

 「うわぁ、なんだ、それゃ!」

 大量の火の塊が現れた。主にぼくの背後に!

 いや、鎧の正面をとげとげにしたら動き難いでしょう。

 それに、背後からの攻撃を受け難くなっただけじゃないんだよ。


 ――パリン! パリン!

 ――サササ!


 ルークさんに折られた分を即座に背後から補充する。

 魔力の鎧を変形して伸ばしたものだから、割と自由に動かせるんだ、これ。

 本当は、火の球を浮かべて相手に押し付けるだけならば、魔力の鎧に纏わせる必要は無かった。射出せずにただ火球を浮かべるだけならば、ぼくの周囲をある程度自由に動かすこともできる。

 でも、火球を二、三個浮かべたくらいではルークさんなら簡単に避けるだろうし、数を多くするとぼくが制御しきれない。下手をするとぼくが火球に突っ込んで魔力の鎧の耐久力をがりがり削ることになりかねない。

 そこで考えたのが、魔力の鎧に火を纏わせてしまう方法だ。これならば個別に制御しなくても勝手にぼくの周りに追随するし、必要な部分だけ魔力の鎧を動かせばいい。

 名付けてファイヤーファランクス!

 手にした木剣の攻撃に合わせて、ルークさんの避ける方向に火の塊を向ける! ついでに火のついていない見えない棘も混ぜる。

 手が何本もあるようなものだ、さすがにルークさんでも容易には攻め切れまい!

 「ヨッ! ハッ! ホイッ! なかなかやるじゃないか。」


 ――パリン!

 ――パリン!

 ――パリン!


 くっ、さすがはルークさん。火を纏った突起をガンガン壊して行く。

 ぼくも負けじと予備をどんどん投入していく。予備はたくさんあるし、追加で投入もできる。

 いくらルークさんでも剣で戦っている以上全部一度に壊すことはできないだろう。

 でもまだルークさんには余裕がありそうだ。

 よし、ここでもう一押し。奥の手を使う!

 タイミングを計って、ぼくは左手をルークさんに向けた。

 「おっと。」


 ――ひょい。


 え? これも避けるの!


 ――パシン!


 ワンテンポ遅れて、左手の前に厚めに展開していた魔力の鎧に魔術が着弾する。

 使用したのは風系の魔術。圧縮した空気の塊をぶつけるものだ。空気爆弾(エアロボム)と名付けた。

 模擬戦でいきなり致命傷を与えるような攻撃はできないということもあるけど、空気の塊は見えないから避け難い、はずだったんだけどなぁ。

 けれどもこれで終わりじゃないよ。奥の手というのは伊達じゃない!

 この空気爆弾(エアロボム)は、着弾すると圧縮した空気が弾けて――


 ――ブウォーーー


 周囲に強風を撒き散らす!

 問題は、至近距離で炸裂するから自分も確実に巻き込まれること。

 セルフプロテクションも防壁だったら風も防げるんだけど、鎧モードではどうしても鎧ごと風にあおられてしまう。

 それでも来ることが分かっている分、完全不意打ちのルークさんよりましだ。

 ルークさんが体勢を立て直す前に、一撃いれる!


 ――ゴツン!


 「あ痛!」

 セルフプロテクションの鎧の防御を一撃で~!

 「面白い攻撃だったけど、自分の技で自分が体勢崩してどーする!」

 実にごもっともな意見なんだけど、どーしてルークさんの方が先に体勢立て直しているの~!?


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