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第6話 キューピッド

「……なるほど。それは確かに一目惚れかもな」


 俺の長話でも一切身じろぎせずに聞いていた春季は、俺が一通り話し終えた所でようやく食べかけのカレーに手をつけ始めた。


 待っててくれてたのか、紳士かよ。


 ちなみに春季には女装のことは話していない。

 さっきの話も、女装やピクチャングラマーに関することは可能な限りぼかして説明した。


 俺がカフェとか可愛いものが好きなのは知っているから、割とすんなり納得してくれた。


「それで、次の日も大学終わりにちらっと寄ってみたんだ。そしたら同じ席にその人が座っててさ。常連さんなのかなーって思うんだよ」

「それがわかったならその人に声かけたりすれば……ってそうだった。お前女の子とまともに話せないんだもんな」


 それが一番の難点だった。

 以前別の男友達に合コンの人数合わせとして誘われた際、女の子達を前で雨に濡れた子犬みたいに震えて、気味悪がられてしまったことがある。


 二度と合コンには行かんぞ。


 なんでここまで異常なほど緊張してしまうんだろうな、と我ながら思う。


 思春期のチェリー感覚を引きずるにしても限度があるだろ。


 万が一、彼女の前でそれが出たら?

 ファーストコンタクトでキョドって失敗してしまったら目も当てられない。


 ドン引きする顔が目に浮かぶ。

 うん、間違いない。


「ある程度慣れてしまえば、どうにかなりそうなんだけどさぁ……」

「とりあえず、他の誰かにさりげなく間に入ってもらったらどうだ?」

「誰かって誰よ」

「この大学の奴とか? お前のことよく知ってる奴に、結太はキョドり癖があるけどそれ以外は良い奴だよって紹介してもらうんだよ」

「な、なるほど?」

「そのカフェがどこにあるかわからないけど、大学の近くなんだろ。だったら大学関係の人かもしれないし、誘いやすいだろ」


 たしかにそういうフォローがあればいきなりドン引きされることもないな。


 ただ課題は、それをしてくれる人がいるかどうかなんだよな。


 俺が大学で絡んでる奴らは、男子連中だけでいえばそれなりにいる。


 ラグビー部所属でいつも豪快に笑ってる関口、ナンパが趣味で茶髪陽キャラの津上(合コンに誘ったのもコイツ)、オンラインゲーム繋がりでたまに遊ぶインドアな館山くん、その他諸々。


 全員性格バラバラだけど仲はいいし、気のいい連中だ。


 だけど、女の子との間に入ってほしいとは頼めない。というより、頼みたくない。


 関口は可愛い娘を前にすると鼻の下を伸ばして鼻息荒くするから駄目だ。ぜってーエロいこと考えてる。

 津上なら女の子の扱いに慣れてそうだけど、ナンパ師の血が騒いで奪われてしまいそうだ。やめておこう。

 館山くんは……恋愛よりゲームしてた方がいいって言ってたな。頼む以前の問題だった。


 あと頼めるとしたら春季ぐらいだけど……。


「ああ、悪いけど俺は無理だからな」

「心を読むなよ。というかなんで?」

「提案したからには協力してあげたいけど……なんて言ったらいいかな」


 割となんでもズバズバ指摘する春季が、珍しく言い渋っている。

 そんなに言いにくい事情があるのか?


 春季の困った顔を見るのも珍しいな。


 なんでもできそうな春季が参加できない理由といえば……。


 あ、もしかして。


「もしかしてお前、その娘が春季に興味持っちゃうんじゃないかって気にしてんのか?」

「え?」


 可能性はあるな。せっかく春季が俺を立てても、彼の王子様オーラが全てをかき消してしまったら全部台無しになる。

 春季はきっとそれを自覚して回避しようとしているんだろう。


 普段なら自覚してるイケメンにはムカつきもするけど、今回はその気遣いに涙が出そうだ。


「春季は本当にできた王子様だよなぁ。こんな俺の恋路を成功させるためにそんな……」

「う、うん……そういう感じ。本当に悪いな」

「気にすんなよ。他に探しておくからさ」


 無理強いしても仕方がない。

 それで友情に日々が入る方が大問題だしな。


 頼みの春季が無理となると、他を当たるしかない。


 じゃあ誰に頼るか。もう一人いるじゃないか。

 女の子とのコミュニケーションにおける、心強い味方が。


 今こそ、ピクチャングラマーゆい☆の出番だな。


 ここまで読んでいただきありがとうございました。


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