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普通を探す旅
私はバッグに物を詰めた。
なるべく軽く、
そして生活が
私のままでいられるように、
紅茶は必要。
調理器具は包丁だけ、
鍋はなるべく小さいのを、
そんな風に詰めていった。
幸い家にある物は少ないからか
すぐ終わった。
心地よさを感じる。
自分の事を考えてすることなんて
なかったから、
今、私の考えていること、
決意してることを誰かが否定しても
私はやってみたいと思った。
初めて衝動に身を任せ、
自らの足で歩くことを
肯定できる。
そして牛舎に向かう。
何故かここに
連れて来られた時からあった。
なかに牛もなく、
ただあるのは干し草だけ、
だけどそこにいると
一人でない気がした。
もうここにも来ることは
ないのかと考えると心の奥底は
寂しさを覚えた。
「ふぅ…」
落ち着いた。
今は昼。
太陽は燦々と大地を照らし、
冬の風が肌に当たる。
鞄を持って、帽子を被り、
扉から出る。
私の責任で、私の裁量で、
当てなき道を進む。
侮蔑が私を引き留めることはない。
新しい私は新しい感情を得るために
何気ない一歩を踏み出す。