ありふれた尊き
1日が長く感じる。
全ての雑事を済ませ
揺ら揺らと椅子で
舟を漕いでいた私は思った。
擦りきれる程に読んだ本も
日にかざすと眩いばかりの砂糖を
沢山入れた紅茶も
いつもより物足りなかった。
鮮烈な体験を人がすると
今までの日常では満足できない…
そんな1文を思い出した。
だけれど私は人でない人でなし
無縁の話と鷹を括ってた。
だけれど今の状況は?
今私が少なからず感じてる欠乏感は?
どうやって
どんな学者が
どんな名医が
頭を唸らせても正解はでない。
私は口が笑みを象るのを
我慢できなかった。
クスクスと笑い声さえ零れ落ちる。
単純だ。
私も人と同じことがあったのだ。
これが寂しさ、これが別れ、
そんな誰しも厭うであろう
この感情を持てたことが
彼が残した少しの幸せ。
たった一度の邂逅が
私の価値観を引っくり返した。
生きるとはこんなにも
複雑怪奇な迷路のような物なのか。
私がいた世界はなんて
小さいものだったのか。
私はある想いを募らせていた。
ただの思い付きの
ただの絵空事。
だけれど私の世界が
広がっていく事を
ひしひしと肌で感じた。
ならば準備をしなくては、
明日からの私は変わる。
籠の鳥は、いつしか籠を抜け出して
大空へ飛び立つように、
私も羽を携える準備を
大きく広げるための
小さな勇気から始めよう。