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一切合切省みず
ざっざっ、
ぱきぱき、
森のなかを歩く音、
枯れ木を踏み折る音、
森の中で私だけが異物だった。
鳥の音すら遠く、
私の息遣いと足音しか聞こえない。
私のこの心中を、
そのまま投影したのなら、
不安と歓喜が跳ねているだろう。
ありったけの歓喜に紛れた
ひとしおの不安。
誰かは言った。
不安は自由の目眩だと、
自由だからなんでもできる。
それ故に不安が伴う。
だけれど私は逃げる道をあえて絶った。
自らは自らを愛さなくては
生きる糧にすらならない。
他人の優しさに触れながら
人は生きていくのに、
私はそれすら得ることはなかった。
そう、あのときまでは、
一時の感情で衝動に任せて
行動することは容易い。
だが、なにかを得て、
なにかを自らの物にしなくては
それは愚行と成り果てる。
私の頭の中は渦巻いていた。
後悔すら、
滲んできそうな
私の心は、
波のように揺らめいた。
まず、森を抜けなくては、
そこから私の世界は始まる。
夕暮れに染まりそうな森の中、
それでも私は歩みを
止めないように努めた。