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回顧
私の世界は音で満ちている。
人が喋る音。
人が歩く音。
人が笑ったり、泣いたりしている音。
それはその人にとっては
当たり前のものでしか
ないんだろうけど、
私にとっては世界を認識するための
唯一の物で、
そこから感情を読み取って、
人の心の機微を感じたりしなければならない。
それは今でこそなんなく出来ても、
昔は苦労したものだ。
空気が音でできているわけでもなし、
言葉が音でも、心は音でできていない。
だから私は人と付き合うことが
難しかったと思う。
それは、そんな昔の私の話。