能力測定②
また説明文が長めです。
そもそも能力とはいかなるものか。
それは人間が生まれながらにして持つ才能。
大きく分けて以下になる。
『力』 ~ 筋力の質、武術の才能を推し測る数値。RPGでよく見る攻撃力とか防御力とか素早さみたいな項目は、全部これに入る。ぼくらが見ることのできるのは、全てを合算した後の数値だけ。実は小分類と言われるものがあって、攻撃いくつとか、素早さいくつとか、剣術いくつとかも測られるらしい。見られないから分からないけれど。
『魔力』 ~ 扱える魔素の総容量を指す。高ければ高いほど、強力な魔法が使える。これも見られるのは合算された後の数値で、各属性に数値が割り振られているらしい。見られないから分からないけれど。
『知性』 ~ ずばり頭の良さ。脳ミソの容量だ。前世でいうところのIQとほとんど同じだと思う。
『精神』 ~ さて『知性』と何が違うのか。こちらは我慢強さとか、根性とか、前世ではそんなアバウトな感覚のもののようだ。傾向としては、『知性』が高いと学者気質で、『精神』が高いと政治家気質らしい。ちなみに両方が高いのはお医者様。
『適性職』 ~ あなたの向いている職業はこれですよ。これを目指せば、他ほど苦労せず、早く出世できますよ、たぶん。ていうもの。これは結構アテにならないらしい。
父から聞いた話、父は『政治家』だったらしい。母は『弓師』。そりゃあ生まれた環境で、進む道なんて限られる。王家の生まれの男子が『農家』なんて出たって、実際に農家になれるはずないよね。
ざっとこんな感じだ。
それぞれの項目に数値が付けられる。1からおよそ100まで。
ん? なんでおよそなのか? 簡単、満点は100でないからだ。
よっぽどの才能があれば、100以上の値も出るらしい。
ちなみに、
1~10 ~ 才能なし。努力するだけ無駄。というか生れつきの病気がないですか? 早く精密検査した方が良いですよ? くらいの数値。
11~30 ~ 努力大事! やれば少しは上手くいくかも! でも、他の能力でもっと高いのあるなら、そっちを努力しなさい! てな感じ。
31~60 ~ まあまあ普通。平凡。人並みの努力をして身体や心を鍛えれば、人並みになるよ。
61~80 ~ 秀才。やればやるほど身に付く。もっと頑張ればもっと伸びる! と信じて疑わなくなるくらい。この国では、『力』の平均値が大体この辺に来るらしい。筋骨隆々の男女が多いのは、概ね間違いじゃないということだ。
81~100 ~ 天才! 1を聞いて10を知る! 能力にひとつでもこのくらいの数値があったら、徹底的にそこを活かす仕事をしなさい!
101以上 ~ 偉大な人物だと崇め奉られるくらいには、何かで功績を残せるかもしれない。父曰く、『見たことのない』数値らしい。
ちなみに、50が平均ということではない。
聞いた話ばかりで恐縮だけど、この国では『力』の能力が高いひとが多いから、平均は70に近いらしい。
反面、『魔力』は低水準で、40前後が平均とのこと。
「これより測定を開始します」
ありゃ。
考えごとをしていたら、始まるみたいだよ、いよいよ。
入室してきた受験生の顔と番号と書類を見比べること約1分。
開始の合図をしたのは、見るからに小さい、ぼくよりもさらに小柄な少女であった。
長く伸ばした黒髪を二つに束ね、きつく鋭い目付きをしている、少女。10歳くらいに見える。
まさか本当に見た目通りの年齢ということはないだろう。この国の最高学府の試験官なのだし。
「でもその前に、言っておくことがあります」
部屋に並んで立たされたぼくらは、姿勢を正した。
別にそれまでがだらけた格好をしていたわけじゃない。
けれど、彼女の言葉はなぜか、気を付けの姿勢を強要させるような強さがあった。
「これから行う能力測定は、試験の一部ではありますが、この結果が必ずしも皆さんの合否を即座に決定するものではありません。あくまで参考にさせていただくものです。
ですから、もし結果が良くても、安心してはいけません。
もちろん高ければ高いほど、心証は良くなります。ですが、もしこのあとに控える試験での結果が悪ければ、才能があるのに努力をせず、無駄な15年を過ごした怠惰な人物として、より大きなマイナス点となるでしょう。
逆にこの結果が悪くても、後に続く試験で良い結果を出せば? 恵まれない才能を努力によって補える、忍耐強く向上心のある人材として、好評価となります。
我々は、いま優秀な人材ばかりが欲しいわけではありません。
あくまでこれから将来を担うべく、伸びてくる人材が欲しいのです。
それを努々忘れることなく。この測定の結果を受け止めて、今までの自分を省みて下さい。
――それでは、各自席について下さい」
長い前置きを、なんの淀みもなく言った少女。
やべー、今の言葉を聞くだけで、ちょっと安心したよ。
この結果が全てを決めるものではない、と。
まあ方便かもしれないし、なんとなく、この部屋以外に案内された受験生も、同じ話を聴いているのだと思った。
本当になんとなく、だけど。
とにかく、ここまできたらなるようにしかならない。
大切なのは今ではなく、今までとこれから、ということだ。
ぼくは自分の番号が掲示された席に座る。
試験官の簡単な説明を受けて、器械に手を伸ばす。
――でもどうか、いい数値が出ますように!
一分ほど経って、出た結果は。
『力』 ~ 94
『魔力』 ~ 6 兆
『知性』 ~ 88
『精神』 ~ 101
『適正職』 ~ 魔術師 115
という、へんてこりんなものだった。