表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/47

8.目覚めたもう1人の私

「貴っ様ぁ...よくも私をコケにしてくれたな...!」


天使は血走った目で剣を床に叩きつけた。

硬質で大きな音が辺りに響き渡る。


私はやれやれとため息をついて、わざとらしく首を振ってみせている。

待って、お願いだから火に油を注ぐような行動しないで!


「慢心したのはそっちだろ。......それよりも、久しぶりだな。ラグエル。お前も随分と出世したもんじゃないか」


天使は胡乱げな顔をして、誰だ貴様はと問いかけた。


「おいおい...薄情だなぁ。──明星の騎士。忘れたとは言わせねぇぜ?」


「みょうじょ...!?貴様もしや、ベルリアン・キリシュタインか!?くそっ!!また私の邪魔をする気か!!」


激昂した天使に臆することなく、私は飄々と受け流して薄く笑った。


「おっとそいつは捨てた名だ...今の俺には宿主がいるんでね...」


やはり私には訳の分からない話ばかりだ。


シスターを志していたため、普通の人よりは博識な類だと思っていたが、明星の騎士など聞いたことも無い。

というか、そもそも騎士などいなくなって久しいのだ。あの魔族との長かりし戦いが終わってから、騎士は廃れて形骸化してしまった。しかも天使の統治により、人々の犯罪は全くなくなった。ゆえに、それを取り締まる衛兵も騎士も、武人も必要なくなってしまったのだ。

確か...戦争が終わったのは二百年ほど前、兵制度が廃止されたのは百年と少し前だったはず。


ということは...ベノムは百年以上前の人物なの?


私は浮かんできた疑問を何とか形にすべく考え込んでいたが、突然響いた天使の哄笑で一気に現実に引き戻された。


「そんな小娘が宿主?貴様こそ随分と出世したじゃぁないか。女の体ではお得意の剣も振るえまい!」


「...なに、弘法筆を選ばずってやつさ。女の体だからといって、できない事ばかりじゃあない。それに、万全の体制なら今の弱りきったお前じゃ歯も立たないだろ?ハンデだよ、ハンデ」


ありがたく受け取っときな、と天使に負けず劣らず傲岸不遜に鼻で笑う私──いや、ベノム。こいつが私だなんて絶対に信じられない。


とりあえず、今この状況からわかることと言えば、私の中にもう一つの人格?みたいなものがあって、そいつが私の体を使って天使と対峙しているということだけだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ