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6.聞こえた声(2)

若い男性の声だった。

でもこの広い豪奢な部屋には私と天使と先程の女性しかいない。

しかも天使の様子を見るに、天使にはこの声は聞こえていないようだ。私だけが、聞こえる声。


一体誰なの?

声に出して聞いた訳では無いのに、まるで私の頭の中を覗いたかのように返答があった。


『俺はお前だ。どうでもいいが早くしないと死ぬぞ』


この男の声が私?

さっきからわからない事だらけで頭痛くなってきた。まあ頭皮は物理的に痛いんだけど。


ていうか、この際私でも悪魔でも魔物でも神でも天使でもなんでもいいから勿体ぶってないで助けてってば!早くしないとって私にはどうしようもないんだって!


『...はぁ?お前もしかして知らないのか...?って前前!』


「え?」


言われるがまま前を見ると眼前には何やら銀色の細長い形状の物が。

まってこれってもしかしなくても。


「っ、ぎぃやぁぁああぁあぁ!!」


色気ねー声...と頭の中で呟かれた気がしたけどそれどころじゃない。


もう本当に終わりだ...!

私は衝撃に備えて目を強く瞑った。

あぁ今思えば短い人生だった。こんな所で終わるとは思って......たけど、でも悔いが残る最期だった。こんな気持ちの悪い天使に食べられるくらいなら自分で死んだ方がマシだった。


だけどいつまで経っても想定していた痛みどころかなんの衝撃もない。

恐る恐る目を開いてみると剣は私に触れるギリギリの所でピタリと止まっていた。


天使は額に汗を浮かべながらギリギリと歯軋りをしている。

天使が持っている剣は小刻みに震え、そこからも手に力が籠っているのがわかる。


『......なるほど、お前、聖女か』


なにやら頭の中の声は納得したらしいが、私にはさっぱりわからない。

わかるのはひとまずの危機を脱したことだけ。


『この守りは一時的なものだ。とっととその場から離れろ』


無理だってば!!私の考えてることがわかるんならこの状況もわかってるでしょ!髪の毛掴まれてるんだってば!私の髪の毛全部抜けるかしないと無理だよ!


『お前馬鹿か?抜かなくても刃物で髪切ればいいだろ』


「だからその刃物がないって...あ、」


思わず声に出して反論しかけたとき、私は気がついてしまった。

そういえば私の村に代々伝わる祭事用の首飾りは森に住むガルメスという獣の角を円形に限界まで薄く削って出来たものだ。


要するに、めちゃくちゃ切れる。


私は首飾りを手に取り、躊躇いなく髪の毛を中ほどから切った。まとまった量の髪の毛を犠牲に天使の手から逃れた私は、立ち上がり、できるだけ天使から距離を取った。

扉の手前まで逃げて、半ば体当たりするように扉を押す。

さっき来る時は普通に開けられたのに、なぜかうんともすんともいわない。

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