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5.聞こえた声

「だが、目障りなゴミにも多少の使い道はある。昔から聖人聖女は見目麗しい者が多い。貴様は...まあ私の好みではないが、ちょうど風呂の装飾が寂しいと思っていたところだ。歴代の聖女と共にそこに飾ってやろう」


なにそれ失礼すぎる。

つい、余計なお世話だとこんな状況も忘れて言い返しそうになった。


まあそれは置いておくとしても、よくわからない事が多すぎる。何を基準に私が聖女だと言うのか。歴代の聖人聖女たちはいつの時代に生まれた人達なのか。聖人聖女が天使に歯向かうとはどういう事なのか。

わからない事だらけだ。


「...さて、無駄話もほどほどにして、この世とお別れの時間だ。貴様のだぁい好きな天使様へのお祈りは済んだか?」


天使のために天使のためにと村人は汗水垂らして頑張っている。その努力は、苦労は、全部報われない。今思えばなんてくだらないことをしていたのか。

捧げ物?

そんなものただの生贄じゃないか。


でも、ひとまずはこの状況をどうにかしなくては。さすがにこのまま天使に殺されるのだけは嫌だ。


いつの間にか天使の手に握られていた大きな剣は、鈍く赤い光を放っている。

鉄の剣だ。赤く光るわけが無い。じゃあなぜ赤く光るのか。そんなの、言われなくてもわかるし、もう言われたくもない。

その赤色は、人を、殺し慣れた色だ。


絶体絶命。そんな言葉が頭をよぎった。


逃げたくても髪の毛を掴まれたままだから逃げられない。それにうつ伏せのまま顔を上げたような体勢だから、起き上がるのにも時間がかかる。


どうする?!

焦りだけが募っていくばかりで、何もいい案なんて思いつかない。こんな荒事とは無縁の世界で生きてきた自分が憎い。これも天使の計算かと今更気づいたけどもう遅い。


こうなったら最後の抵抗にその薄くて寂しい髪の毛でも引っこ抜いてやろうか、とか馬鹿なことを考えて、しかもそれを実行に移そうと私は手を伸ばした。


その時ふと、頭の中で声が響いた。




『助けてやろうか』


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