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11.目覚めたもう1人の私(4)

「......今すぐにこの村を出る。心残りがあるなら...」


言いづらそうにベノムは言葉を濁す。

私はそれを聞いて思わず笑ってしまった。


「な、笑わないでくれよ!」


『だって...あまりにあなたが殊勝なこと言うから...』


あーおかしい。笑いすぎて涙が出てきた。


『ここまで来ておいて村に帰りたい?そんな馬鹿な話ないって。それに、家族からしたらもう私は死んだような人間。今更帰ってきて、なんて言えばいいの?天使様が嫌で帰ってきちゃいましたって?』


無理無理。私の実家、教会だもの。

ベノムは何とも形容しがたいような顔で、私の話を聞いていた。ベノムさん、お口がありえないくらいにひん曲がってますよ。


「...教会は、神を祀るところじゃあ...」


『ふふ、ひっかかるとこそこなんだ?教会が神を祀ってたのなんて何百年前...あぁ、あなた、400年前の人だものね』


知らなくて当然か。

魔族との戦いが終わってから、私たち人間にとって、天使は神すらも超越した存在なのだ。神殿も、教会も、修道院も信仰の対象は全て天使様。私たちにとって天使様は苦しみから私たちを救い、幸福を与えてくださる存在。

でも、本当は違うのかもしれない。

今回のラグエル様もそうだし、ほかの町や村を統治しているほかの天使も、清廉潔白で噂通りの方ではないのかもしれない。


『──決めた。私、この目で天使を見に行く』


なんだいきなり、とベノムは首を傾げる。


自分で考えなくていい世界は、随分と楽だった。他人の言うことをただ信じていれば良くって、免罪符は “だってみんながこう言うから” 。あらかじめちゃんと逃げ道が用意されていて、誰も傷つかず、傷つけない生き方。



でも、もういい。



今は傷つかないよりも、傷ついてもいいから自分で考えて、自分なりの答えを見つけたい。


『ベノム!!』


「な、なんだ?」


『私はユーリア・サントブルグ。私、この世界の本当の姿をこの目で見たい。誰かの考えを自分の考えだと偽るのはもう嫌』


唖然とするベノムに、私は笑いかけた。

こんなに晴れ晴れとした気分になるのは久しぶりだ。


『──だから、私に力を貸して。私と一緒に旅に出て、一緒に世界を見てほしい。それで...私に足りないものをちゃんと教えてほしい』


ベノムはしばらく口を開けたままポカンとしていたが、やがて口角をニヤリと上げた。なんだか楽しそうだ。


「──いいぜ、ユーリア。お前が喧嘩を売った世界だ。一緒に喧嘩を売ってやるよ」


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