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1.生贄になった私

はじめまして!ゆきのわです。

とりあえず1日1回更新をめざして頑張っていきたいと思います。皆様には気長にまったりとお付き合い頂けたらと思います!

天使様のおかげで、私たちは今日も平穏に生きている。

水があるのも、火を起こせるのも、野菜が育つのも、みんなみんな、この村を統治する天使様のおかげ。犯罪がないのも、諍いがないのも、魔物が村を襲うことがないのも、全部天使様の御加護あってのことだ。


私たちの生きる世界は、長い間、魔族との戦いに明け暮れていた。多くの血が流れ、多くの命が失われた凄惨な過去。人々の心は荒れ果て、些細なことで諍いが起き、命を奪うことに感覚が麻痺していた人々は、時に同胞の命さえも奪い去った。

そこらには父を失った子供と母親が溢れかえり、食べるものがないと口ぶちを減らす為に我が子を手にかける親。どうしても食べるものに困れば、我が子の肉でも食らった。

飲み水を求めて歩き回っても、川には死体が浮き、池には魔物が住み着き、井戸には毒が流されている。そんな日常が何百年と続き、人々は疲弊しきっていた。


その歴史に終止符を打ったのが、天使様たちだ。

突然現れた天使様たちは瞬く間に魔族を制圧し、私たちの生活には平穏が訪れた。

その天使様に私たち人間が尽くすのは当然のことで、疑問に思ったことなんてなかった。


天使様は年に一度、捧げ物を所望される。

それは村の若い男女から選ばれ、盛大な祭りをしたあと、天使様に渡される。

そして、帰ってきた者はいない。

それでも、それすらも村人は許容している。むしろ名誉な事なのだと言ってはばからない。それが異様だと、誰も気づかない。


きっとそれも天使のなにか不思議な力のせいなのだろうな、と私は気がついたけど、自分に自分でツッコミたいくらいだ。

いや、もう遅いって。


だって、今年の生贄は私なのだから。


もちろん私だって天使様への信仰がなかった訳では無い。というかむしろ私は敬虔なシスターだった母の影響で、シスターを志すくらいには天使様を信仰していたと思う。

だから、私が選ばれた時には驚いたけど、たとえこの命がなくなろうと天使様のお役に立てるなら喜んでこの命を差し出そうと思っていた。

皆からも祝福され、盛大な祭りを開いてくれて感謝しかなかった。


だが、祭りが終わって、天使様のお住まいに行った私が見たのは信じられない光景だった。


贅を凝らした装飾、あられもない格好をした使用人。村人は貧しいながらも細々と暮らしているのに、ここにいる人達は皆食べ物に困っている様子はない。そしてなにより、目に優しくない色をした壁に掛かっていたものを見て、私は自分の目を疑った。



そこにあったのは、

見目麗しかったであろう人たちの生首だった。



私は言葉を失った。

だが、その悪魔の所業とも言うべき行為を、まさか天使様がしているわけが無い。希望的観測だということはわかっているが、心のどこかでそう信じていた。


だけど、実際に会った天使様は、


「ほぅ...今年はおなごか。...私はもう少し肉付きの良いものがいいと何度言えばわかるのだ」


肉付きがいいのはお前だ。

私はその言葉をすんでのところで飲み込んだ。

天使様の御前ということもあり、慌てて頭を垂れて表情を隠した私は、腕のすき間から天使様を伺った。

相も変わらず不満げに文句を言ってはいるが、どうやら私の反応は特に気にも止めていないようだ。


だが、それにしても...なんというか......。

よく内面の美しさが外見にも現れると言うが、まさしくそれだ。

贅沢を極めた体型に、涼しそうな頭。部屋に充満する体臭のようなものはツンと目に染みるほどの刺激臭だ。おまけに割と整っていない顔立ちは、獲物を見つけた獣のように醜悪に歪められている。

この時点で多分、私の洗脳はだいぶ解け始めていたんだと思う。


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