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魔女の変わり身  作者: 桜木はる
【魔女の孤独】
5/14

「あ、せっかくだし、お昼は、カジュエルフのレストランに行くか!」

「カジュエルフのレストラン……?」


 時々変わる口調に少し違和感を感じる。

 カジュエルフってこの森にすむ四種族のうちの一種だよね。

 ちょっと他の種族も見てみたいから、行くのもない話ではない。


「カジュエルフはね、本当に家庭的で知的な種族なのよ。基本は家事を得意とする種族なの。魔術での戦闘能力に優れたものもいるけれど、大体平和思想で戦闘は好まない。研究者や学者が多い感じね。他の種族の子ども達も、カジュエルフの村の学び舎を目指して勉強してる子たちが多いわ。……でも私的には、学力よりも種族の長所を伸ばす方がいいと思うけどね」


 プッチは少し悲しげな顔をしながらそう言った。

 家事や学問に特化したエルフかぁ……。

 プッチ、バカにされそうだなぁ。

 私はプッチの後に話しながら付いていった。


「そういえば、ダクエルフとカジュエルフについてはなんとか理解できたのですが、トゥエルフとダダエルフってどんな面をお持ちなんですか?」


 そう聞くと、プッチは歩きながら頬に人差し指をつけ頬杖をついて考え始めた。


「そうね……簡単に言うと、ダダエルフは特に戦闘に優れた種族で、トゥエルフは何にでも平均以上の能力を持っている種族よ」

「平均以上?」

「そう。つまりある程度何でも屋ってことね」

「それって、4種族の均衡保ててるんですか?」

「うーん。トゥエルフは何にでも一定以上の能力を得ているからこそ不利な点があってね。それが性格上の問題なのよ」

「え?」


 え?

 2回疑問を覚えるくらい意味不明な話。


「なんというか、ウザイのよね」


 普通に聞いたらただの悪口だとしか思えないけれど、理由を聞くと納得した。

 プッチ曰く、「トゥエルフは煽りスキルも平均以上」。

 特定のある人がプッチをめちゃくちゃに煽ってくるらしい。

 前言っていた、エルフの一年に一回の大会で、決勝まで残ったプッチが最後に戦ったのがトゥエルフ。

 何百人も大会に出た中、プッチは奇跡的に勝ち残っていったらしい。

 大会の内容は、予選が四つの組にわかれていて、一組何十人かで、森の一定範囲を使った戦闘をする。

 ちなみに、武器は弓矢のみで、なんとプッチの組はほとんどがカジュエルフで、弓矢における戦闘が不得意なエルフばかりだったため、プッチがなんとか奇跡的に勝ち上がった。

 で、準決勝での学問勝負。

 お題が農業問題。

 あっさり勝てたらしい。

 それで、決勝でそのトゥエルフと、弓矢で素早く動く的を正確に射る勝負をした。

 つまりクレー勝負のようなものだ。結果は、決勝とは思えないほどの惨敗だったらしい。

 そこから、そのトゥエルフに異常に馬鹿にされるようになったのだとか。

 今までで特に一番ムカついた言葉が、「奇跡の農専決勝惨敗エルフ」だそう。

 ……長い。


「着いちゃったわ。長々と話てるうちに」


 ずっと愚痴言われてて聞いてるこっちの身にもなってほしかった。


「うわぁ、すごい賑わってますね」


 広い正円の広場が柵で囲まれ、中央には周りより一回り大きな樹がある。

 その樹の中腹部にはツリーハウスが設けられていて、玄関の上には大きな文字で何か書いてある看板があった。

 私が見た事ない字だ。

 広場には椅子やテーブルが並べられていて、漫談を楽しみながら食事をするエルフたちが沢山いた。

 エルフは皆楽しそうにしていた。

 それに、料理も美味しそうな物ばかりだった。


「ここは私の幼馴染がやってるレストランでね。最初は繁盛していなかったんだけど、色々あって段々注目されるようになったのよ。それから口コミで広がって今に至るわけ。すごいでしょ?」

「すごいです。それで、色々っていうのは――」

「……さ、行こう」


 プッチは私の話を無視して先に歩いて行ってしまった。

 あれ、聞こえなかったのかな?

 ツリーハウスに続く螺旋階段を上がって、ツリーハウスの中に入ろうとしたその時、扉から綺麗な金髪のエルフが出てきた。


「あら? プチじゃない」

「うわ」


 扉から出てきたほんのり赤みを帯びた金髪の女性はプッチに話をかけた。知り合いなのかな。


「出たわねルンベリー……!」

「ふんっ。出た、とは失礼な物ね。私はこれから急いで帰らないといけないの。貴女みたいな馬鹿にかまってる暇なんてないのよ?」


 その女性はプッチを嘲笑って立ち去ろうとした。プッチは何も言えずに目に少し涙を浮かべながらそのルンベリーと呼ばれるエルフを睨んでいた。


「あら? その子……? ん……あれ? ちょっと待ってプチ。その子何処で見つけたの?」


 立ち去る直前に私の顔をじっくり見つめてから、プッチに問いかけた。


「この子は森で迷っている所を私が保護したんだ。それがどうかしたか!」

「い、いえ……何でも? エルフじゃなかったから気になっただけよ」

「あっそう!」


 すると何故か、ルンベリーと呼ばれるエルフはもじもじし始めて、少し顔を赤くして私の顔をじっと見た。


「あ、あのさプチ……?」

「なによ」

「私、貴方達にちょっと付き合ってもいいかな?」


 え? え? どういう経緯で?

次話もよろしくお願いいたします!

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