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魔女の変わり身  作者: 桜木はる
【魔女の薬屋】
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 草むらにあった少し大きめの石に躓き、尻餅をついて転んでしまった。

 その時、ポーチに何かが入っていることを気づいた。

 そうだ、これはルンベリーからもらった、私の本……

 私はその本をポーチから取り出し、立ち上がって、崩れ込んだエリに近づいた。


「あの、これ」


 エリの目前にその本を差し出すと、エリちゃんはその本を両手で手に取り、不思議そうな顔をして私の顔を見た。


「その、あの人から、あなたにだって」


 エリちゃんは首を傾げた。


「これは、なに?」

「たぶん、薬の本かな……」

「おくすりのほん……」

「その本に書いてある薬を使えば、町の人を救ってあげられるって。次はあなたが町の人を救う番だって言ってたよ」

「ナズさんが……」


 エリちゃんはその本をじっと見つめる。

 そして、何かを決意したように力強くうなずいた。


「――私頑張る」

「…………」


 何も言えなかった。


 これをこの子に押し付けてもいいのか?


 こんな重大な責任を……。


 ――私は現実から逃げた上に、人に全てを擦り付けた。

 最低だ。


 魔女の仕事をエリちゃんに頼んだんだ。


「きっとこれは、ナズさんの最後の言葉なんだ。ナズさんが来ないんだったら、今度は私が皆を助ける」

「…………」


 エリちゃんはやけにやる気だった。

 そう……突発的にやってしまったことだ。

 私も責任を取らないと。

 これでいいのかは分からないけど…………


「困ったときは、〝北の森に住む女性〟を訪ねなさいだって言ってたよ。ただし、その森のことは誰にも言わないことって」


 何故こんなことを言ってしまったのだろう。

 自ら居場所を教えてしまうなんて。

 でも、


「……うん! お姉さん、ありがと! 私、ナズさんの想いをきっと受け継いで、皆をこれからも守り続けれるような薬師になる!」


 これで良かったのかもしれない、と、少しだけ思った。

 エリちゃんはは立ち去って行ってしまった。

 また、静かな空間が訪れた。

 私は何をすればいいのか分からなくなって、立ちすくんだ。


「――これがマグナの解なのか」


 セピの声が後ろから聞こえた。


「うん。これでいいの」

「しかし、自分の居場所を教えてもよかったのかの?」

「いいの」

「そうか」


 数秒間の沈黙が続いた。

 気まずい空気だったからか、セピが話を切り出した。


「今日はもう帰るとするだの。魔物共に火を全て消させ、撤退命令はもう下したでの」

「そう……またね」

「また……あぁ、もちろんだの」


 セピは私を気遣ったのか、静かにその場から消えていった。

 さて、私も帰ろう。今日はもう疲れた。すぐにシャワーを浴び、もう寝てしまおう。

 私はネオクリスタに魔力を注入し、自分の家を思い浮かべて転移をした。

 明日はあの森に行くんだ。

 絶対に、ルンベリーの正体を暴いてみせる。


 そして、きっと――


 私は気を失うように、すっと寝てしまった。

次話もよろしくお願いいたします!

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