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慈愛の公女は幼女にときめく  作者: いのりん
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3話 アルス、授業をうける(表)

「おい、あのアルスメリアって子すげぇな。フローラ様のとり巻きと話すときも全く物怖じしていないどころか、本人のこともフローラって呼び捨てにしていたぜ。」


「バッジはサルビアだが、元々はすげぇ高貴な身分のご令嬢だったんだとよ。彼女にはフローラ様から挨拶していたしな。でも、全く気取った所もなく、俺達にも自分から挨拶してきてくれて、感じ良かったぜ。しかも可愛いしな。」



講堂にて午前授業中の王国学院中等部。近くに行事予定もない学期半ばと言うこともあり、普段はのんびりした空気が流れているのだが、今朝は少々勝手が違っていた。隣り合わせとなった生徒達が囁きをかわし合う。


学院では、庶民は知恵を意味するサルビア、貴族は誇りを意味するツバキと言うように、身分ごとに異なるバッジを着用することが義務づけられていて、基本的に同じ身分同士で交遊関係を結ぶのがほとんどである。


そんな中、庶民のバッジをつけながら、編入初日から伯爵令嬢のなかでも抜きん出た存在であったフローラと対等な関係を結んだアルスメリアは話題の中心、注目の的となっていた。そんな当人はと言うと






(おいおい、この授業、最高かよ!)


アルスは感動していた。貴族様のうける授業なんて自分には縁遠くて退屈だと思っていたが、どうやら幅広い教養を身につけるために庶民の生活に根差した内容のものも多いらしい。ちなみに現在は薬草の市場価格と流通についての話である。


冒険者は引退後、それまでの稼ぎを元に商売をすることが多いのだが、知識不足で苦労するものが大半である。ここの授業をしっかり受けておけば、苦労しないどころか一歩抜きん出た知識で成功し、大金を稼ぐことも出来そうだ。実にワクワクする。


「さて諸君、以上が前回の復習で、次いで今回の授業といきたいところだが……本日は新入生がいるからね。一度、彼女の習熟度を確認しておこうと思う。アルスメリアくん、立ちなさい。何、庶民向けの、簡単な質問にしておくから安心すると良いよ。」


しかも生徒個別に確認までしてくれると言う。フローラ様は担任のカール先生は厳しいことで有名な方なので気を付けてくださいませとか言ってたけど、むしろ優しいではないか。


とか思っていると、フローラ様がなぜか「貴族向けの問題にするべきではありませんの」とかハードルを上げようとしているんだが。


いやいや、先生の言うとおり庶民向けの問題の方が良いよ?自分は庶民なんだし、むしろそうするべきだろうと説明して、なんとか引いてもらった。


「では問題だ。西部の漁村トノグドラの名産について、知っている範囲で答えなさい。」


「はいカール先生、海蛙の胆です。様々な薬の材料になります。漁期には冒険者ギルドへ依頼をだし海獣対策をしています。」


懐かしいな。昔依頼を受けたことがあるよ。胆が良い精力剤になるとか、中年のオッサン達が言ってたな。


「次だ。魔獣ホーンラビットを調理する際に気を付けることは何か。」


「皮と内臓に毒気があるので、剥いで良く洗い、火を通します。解毒作用のあるキアの葉と一緒に食べると薬味と中毒予防になるので一石二鳥です。」


冒険者は現地調達で魔獣を食べることが多いから、サービス問題である。


「古エルフ語で、清貧、優しさ、壁、をそれぞれ意味する単語は」


「ナイチチ、バファリン、ナナジュウニ」


昔、偶然出会ったエルフ族の冒険者に教えてもらったのを思い出す。寿命の長いハイエルフには合法ロリがいると信じて頑張ってマスターしたのに、成人までは人族と同じ成長速度と知って落ち込んだ苦い思い出がある。


「……驚いたな、大したものだ。しかし、これだけ知っているならば本日のこれまでの授業は少々退屈だったのではないかな?興味深そうに聞いていたので知らないものだとばかり勘違いしてしまっていた。申し訳ない。」


「いえ、今日の授業はとてもワクワクしました。そして先生の考えられた通り私は何も知りません。どうぞこれからもご教示お願いいたします。」



その後、先生はオーバーに喜ぶ仕草をして、学生の鑑だと誉めてくれた。簡単な質問に答えて当たり前のこと言っただけなのに、どうやら誉めて伸ばすタイプなのだろう。優しい先生で良かったと思うアルスであった。



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― 新着の感想 ―
おい、古代エルフ人。ただの日本人じゃねぇか。転生したんか…? 最後のだけ分からなかったから、思わず調べたわ。なるほど、ア○マスのネタ…。オタクじゃねぇか!
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