12話 エピローグ
ブレイブ王立学院にてサウロス王子は信頼できる数人だけを自室に呼び、情報を整理していた。
側にいるのは、従妹のフローラ、その従者エドワード、学年主任のカールの三名だ。
「……それで、ナインデス男爵の身を呈した告発によりバンデット公爵家は失脚。ウィザード家の冤罪は晴れ、公爵家に復帰となったと。」
「――なら、なぜアルスメリアは学院に戻ってきませんの!?」
「幼い少女を庇うためとは言え、男爵に手を出したことに対するケジメなのでしょう。あの一件の後、その場にいた全員が引き止めたにも関わらず、ルールは守られる必要があると孤児院を出て行かれましたから。」
アルスメリアの退学から1ヶ月。その影響は学院中のみならず、国にすら重大な変化を引き起こした。
フローラ及びエドワードの報告を受けてから、サウロスの行動は素早かった。
ナインデスとコンタクトをとり、充分な不正の証拠を揃えた上でバンデット公爵家を糾弾。国への反意は明らかとし、王子の権限を用いて速やかに捕縛。
同時に、ウィザード家失脚騒動に関わった貴族達を徹底的に調べ上げ、冤罪だったことを明らかにした。
真相を明らかにし、責任者を処罰し――
事件は既にほとんど片が付いていた。
ただ一つ、アルスメリア エル ウィザードが学院からいなくなったことを除いて。
彼女が姿を消して、1ヶ月。
ウィザード家当主にも、アルスメリアは社交会に復帰しても何も問題ないと伝えているのだが、本人が決めた生き方なので尊重したいと頑なだった。
「全く、アルスメリア君の美点とは言え、彼女は少々自分に厳しすぎる……責任と言うならば、あの実習の話が出た時、もう少し私も何かできたはずだ。」
「ならば、わたくし達全員で責任をとりましょう。」
フローラに全員の視線が集まる。
「わたくし達全員、アルスメリアに大切なことを教えられた恩がある。そんな彼女の立場を守れなかった責任も。ならば、彼女が貴族社会でやりたかったことを、代わりにやるのがわたくし達の責任のとり方ではないでしょうか?」
不正を正し、弱きものに寄り添い、自らも勤勉に学び続けながら学問を普及させる──そう続けるフローラに全員が力強く同意した。
☆☆☆
ブレイブ王国。
偉大なる勇者王が仲間たちと建国したという歴史の長い国だが、その最盛期はサウロス王が治世した時代である。かの名君と、同時期にさまざまな功績を残した傑物達は歌劇にもなり広く知られることとなった。
貴族と庶民の距離を縮め、幅広い層から親しまれた社交会の大輪フローラとその名従者エドワード
実用的な学問に加え学ぶ楽しさを説き、優秀な人材を輩出し続けたブレイブ王国学院長のカール
教育と技術修得に力を入れ、孤児たちの貧困の連鎖を断ち切った孤児院の名院長ミリス
身を呈した告発により、政治腐敗にメスを入れたのちに転身。莫大な利益のほとんどを孤児院に寄附したと言う事業家、ナインデス。
そして、面白いことに彼らは皆、影響を受けた人物について問われたとき、口を揃えて、一人の女性の名を口にした。
アルスメリア エル ウィザード。
大貴族ウィザード家の娘であった彼女は、慈愛に満ちた女性であったという。また、自らの信念に基づき一生を庶民の身で過ごしたそうだが、その詳細は謎に包まれたままだ。
ちなみに、同時期、メリアと言う金髪の美しい女冒険者が活躍しており、それが彼女と言う説もあった。
しかし、ロリコンの冒険者とコンビを組み、彼女自身は喧嘩も絶えない乱暴者だったと言う証言が多かったため、現在は否定されている。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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あと、大ファンの中村颯希先生の新作に刺激され本作の番外編を書きました
2024年12月15日に投稿予定です
中村先生の新作
「東の魔女のあとしまつ」Nコード:N8570JU
https://ncode.syosetu.com/n8570ju/
本作に大きな影響を与えてくださった名作
「無欲の聖女は金にときめく」Nコード:N3386DB
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