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フアンズはめげずに、冒険をしてみる

 フアンズは、危険に晒されていることを理解しなければならなかった。

 フアンズが文字通り、不安げに、ぼんやりと焦点が定まらない眼で町を見つめていると、恰好の獲物を狩ってやろうと、ならず者たちがターゲットを

絞る。

 フアンズが財布を出すやいなや、ならず者たちが、フアンズに向かって、一斉に飛び掛ってくる。

 その数や一人や二人ではない。

 片手で数えられぬほどが襲いかかり、見事、フアンズの財布をせしめたのは、一番早くたどり着いたものではなく、フアンズが財布を隠そうと、後ろ手に

持っていたところに、たまたまいた者が奪い取ることができたのだ。

 フアンズていどの誰でもこませる獲物は、早いもの勝ちであるが、それとて早いものが勝つわけでない。

 結局、運が見方をした者に、成功は訪れるのだ。

 財布を奪ったものはそのまま逃走。フアンズは、追いかける足がすくみ、いや、追いかけるどころか、彼は羽交い絞めにあう。

 見るからに貧乏そうな青年のフアンズが財布以外取るものがないと、ならず者たちは、フアンズをストレス解消の道具にした。

 フアンズは殴られて、蹴られて、髪の毛を引っ張られて、鼻の下にマジックで、一見ちょび髭に見えるほどの、太い黒い線を引かれ、あげく、

修行僧風の男には、祈られる。

 フアンズを祈ったところに、どんな効果があるとも思えないが、フアンズは沈んだ。

 フアンズには、明確な夢も、洋々とした希望もなければ、もはや、お金もないのだ。


 フアンズは一文無しになった。

「これが無法地帯か」

 フアンズは、バスの乗車賃の払いすぎを、高い授業料としたはずなのに、何も学んではいなかったことになる。

「どうしようか」

 いつまでも、沈んではいられない、フアンズはむっくりと立ち上がった。

 オレを狙うものはいないかと、きょろきょろと見渡すが、いまさら注意深くなっても、フアンズを狙うものはいないだろう。

「あ、そうか、財布が今すられたところ」

 フアンズには、金銭的価値が何もない。

 汚い洋服に、さびたベルトに、いかにも安売りの靴屋で、値も張りそうもない靴を履いているフアンズを誰が狙おうか。

 ホームレスに衣装を貸してやるといっても、嫌がるだろう。

 それほどの貧相な身なりであるから、安心を保障する。

 フアンズは、とたんに強気になった。

「オレは、一銭も持ってないぜ」

 フアンズはよく通った声で叫んだ。

 狙われるものを持ち合わせてなければ、狙われるわけがない。

 ただ、フアンズの通った声が、ごく少数の、癇に障るものは許しては置けない人々の怒りをかった。

 広く一般的に使用される基本的な魔法『ボルケス』を、そのうちの一人が放出。

 フアンズていどの腑抜けたものでも、使える、使えるといってもなんとかであるが、魔法なだけに威力はないが、鬱憤を晴らすていどには

最適の危害を加えることができる。

 真っ赤な炎が、後ろすがたのフアンズに、飛んでいく。

 フアンズのおしりが焦げ付くと「あち」と悲鳴をあげるのだが、失うものがないとフアンズは復讐を企てる。

「奪われたなら、奪い返す、それがルールのない町の町のルール」

 誰が、魔法を使ったか、わからなければ、広範囲に打てばいい。

 単純な思考であるが、この町では正解。

 誰が誰を傷をつけても、誰にも裁かれないのだから。

「ボルケス」

 バカのひとつ覚えのごとくボルケスである。

 これしか使用できないのだから、しようがないにしても、炎一切れが飛んでいく、それだけが武器であり、必殺技である主人公とやらも

悲惨なものだ。

 だがしかし、フアンズはこれでも、主人公である。

 主人公となれば、つきものなのは奇跡である。

 時に、ご都合主義と訳されるが、とにもかくにも、フアンズは奇跡をたやすく起こせる立場についているのだ。

 フアンズが起こした奇跡。

 わずかな炎が飛び出すはずが、フアンズは、いつのまにか、半径どれくらいであろう、とにかく人数人分ほどの半径の炎の円の中心にいた。

 ボルケスのはずが、飛び出した魔法は、レベルの段違いに高い、『エル・ボルケス』であった。

 フアンズは奇跡を起こす。出せないはずのレベルの魔法を繰り出し、仕返しとはいえないレベルの惨状をもたらす。

 それって主人公なのかよと。

ここまでたどり着いた奇異な方いらっしゃいますか?

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