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バスに乗って早、幾月。フアンズここに復活


 バスに乗ったのは、ほんの五分ほど前のはずなのに、フアンズは永久の時を感じていた。

 乗車をした時、確かに季節は真冬だった。

 席に座り、不安げに、窓の景色を眺めていると、そこには一面の桜が広がっていた。

 目的地はまだかと不安を募らせると、汗が噴出して止まらなかった。

 それなのに、フアンズは今、秋めく寂しさを肌で感じている。

 寝てもいないのに、おかしな夢を見た。

 夢の中でフアンズは見知らぬ町に降り立っていた。

 お金がないとフアンズはオレオレ詐欺を実行に移すのだが、犯行は未遂に終わった。

 そこには、おかしな少年もいた。

 彼が、フアンズが騙そうとした対象であったが、彼とフアンズは奇妙な会話を繰り広げたのだが、

肝心の内容は、夢だけに一瞬にして忘却のかなたに消えていった。


 気がついたら、冬は終わり、春も夏は過ぎ、秋の入り口に入っていた。

 隣にいた危ない奴もフアンズに危害を加えることはなかった。

 ただ、早く、町に降りて、何かをして、一発当ててやるといきり立っているだけだ。

 波乱に満ちた町には、ギャンブル場があるという。

 もちろん無法地帯だけに、許可を何もいらない。

 いくら金を賭けても自由なら、なにを対象にしても自由だ。

 風に流れる噂によると、とんでもないギャンブルが行われているという。

 なんでも、殺人に関する賭けまであるという。

 フアンズは私見であるが、この危ない奴は、ロクな目に合わないだろうと思っている。

 ギャンブルで至福を肥やすものが、十いるならば、死滅に向かうその他十万の一人にしか見えない。

 いくら、フアンズは自分の人生や、自分の住む町の風向きを変えようとして、無法地帯に向かっていても、ギャンブルに身を滅ぼすことにはならないだろう。

 それはなにも、フアンズに勝負運があるとか、勝ち逃げのタイミングを知っているからではない。

 フアンズはギャンブルで一攫千金をしても、何も意味もないと思っている。

 苦労して得た金でなけらば、身には残らないし、使っても幸福感を得られないとの信条があるからだ。


「波乱に満ちたまち~ 次は波乱に満ちた町入り口~」

 場内アナウンスは野太く、規律正しい。

 なにせここはもう、波乱に満ちた町の領域、今のアナウンスは嘘で、違う町におろされると、フアンズは身構えいたのだが、隣の危ない奴が、降りる準備をしているので、

だましはないと感じ取った。

 とはいえ、波乱に満ちた町と見せかけて、他の町で降ろしたのなら、そこは他の町なので明確に偽証罪であるのだが。

 ただいくら払えばいいのか、よくわからない。

 乗車賃の表示がどこにもないのだ。

 バスといえば、客の向かう正面の上部に運賃表示があるものだが、このバスにはそれがない。


 フアンズは様子を伺い、危ない奴に頼ることにした。

 あいつが、いくら払うか、凝視して、それに倣うとの考えだ。

 ふぬけなフアンズにしては、上等なアイデアであるが、危ない奴は、乗降口で何も払わず、そそくさと、

乗降ループを降りていったのだ。

 定期を見せたり、電子マネーやカードで清算したりしたそぶりはどこにもなかった。

 奴は、素通りしたのだが、そのことを運転手に咎めらこともないし、他の客が不審に思うこともなった。

 ここは、町。規則もなければ、規律もない町なのである。

 金を払わずしても、法律に触れらければ、規範をおかした罪悪感にさえなまれることもない。

 バスの運賃くらいケチることもないだろうとの思いが普通であるが、フアンズは違う。

 フアンズはニートである、高校時代に働いたわずかな蓄えがあるにしても、基本的にお金はない。

 許されるならば、乗車賃もけちりたい立場にある。

 フアンズも続いた。 

 運転手にちらりと見ると、ただ正面を見ているだけ。

 金を払わずして、素通りもなんともなく慣行できると、フアンズはたかをくくったのだが、運転手はフアンズを呼び止めた。

「お客さん、お金、お金」

 フアンズはたじろいた。

 フアンズは、何事にも無頓着で、一見ただの厚顔無恥に見られるが、人一倍気が小さい。

 ただ、呼び止められただけで、心臓は十の倍の速さで心音を刻み、手首は震えで小刻みに動き、唇は一瞬にして砂漠のように乾く。

「ああ、はい、なんでしょうか…?」

「なんでしょうかじゃないでしょ、お金だよ、お金!」

「お金すか? さっきの人も払ってないように見えましたけど…。無法地帯だから無賃でもいいのかと思って…」

「さっきのは、オレの息子! だから無賃だったの! 家族は顔パス!」

「あ! そうなんすか! あ、でも運賃いくらかわからなくて…。ほら、バスのどこにも書いてない」

「書いてないからなんなんだよ」

「書いてないと、わからないじゃないでしょうか…」

「なんで!?」

「なんでって…」

「このバスは一律なの!」

「一律! マジですか! だから運賃書いてないと」

「そうなんだよ、一律200円、どこから乗って、どこから降りても一律!」

「へえ~ 初耳だ」

 初耳も何も、地元の町から乗ったバス、フアンズも子供のころから何度もなく利用したバス会社のバスだ。

 一律なわけがない。

「あ、わかりました…一律すね…」

 財布を開くが、小銭をかき集めても、200円になりそうもない。

 フアンズは、お札を入れようとしたのだが、バスに乗るのも久しぶりなのか、両替口がわからなかった。

「どこでしたっけ、両替…?」

「こっちだよ、この口」

 フアンズは運転手を盲目的に信用した。

 フアンズは5000円札を運転手が指定した口に放り込んだ。 

 だが、5000円札は、吸い込まれたまま、一向に小銭になるそぶりを見せない。

「出てこないんすけど」

「そっちは乗車料金の口だよ」

「え、だって、運転手さんがこっちっていうから」

「信じるほうが悪い、ここは無法地帯だよ」

「それじゃあ、お金は」

「返すわけねえだろ」

 フアンズは、運転手に払うように、バスの外へと突き落とされた。

 フアンズは、もちろん納得したわけでもなかったが、これも波乱に満ちた町を肌身で知る授業料として、この件を早く忘れることにした。

 

 フアンズの目の前には、あの危ない奴がいる。

 奴は、ふーふーと不気味な吐息を一定のリズムで出し、ずいぶんと興奮している。

 とにかくアイツには近づかないようにするか、アイツでもこの町ではひよっこで、アイツを避けようとして、別のもっと

危ない奴に接近することになるかもしれないとフアンズは案ずる。

 ところが、フアンズの不安はすぐに泡と消える。

 なにも、アイツがこの町で一番危ないと決まったわけでもない。

 危ないアイツは、この世から消えるのだ。

 危ないアイツの後方から、バスが襲い掛かる。

 もちろん今までフアンズたちが乗っていたあのバス。発車して次のバス停留所へと向かうと思いきや、引き返し、危ないアイツの後方につけて、一気に跳ね飛ばしたのだ。

 波乱に満ちた町は無法地帯だ。これも罪になるかといったら、ならないのだろうか。

 親が子を引くという行為は規範から外れているに違いはないは、あの運転者からして気にしないだろう。

 見た目通り、ひき殺したいくらいの子なんだろうし、もしあの子が、生きていたら、今度は、復讐を企てるだろう。

 だから、スピードを目いっぱい上げて、一気に息の根を止めにかかったのだろう。


 フアンズは死体を身に、アイツの元へ行くことを辞めた。

 事故に、死体に、誰が集まるわけでもなかった。

 なぜなら、ここの町はそこら中で犯罪が多発して、そこらに死体が転がっているのだから。

反響極めてなにもないため限定的に復活

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