表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軟包装  作者: なるる
9/24

組織。

月末の営業会議はいつも営業部長のワンマンショー。


1人ずつ、「今月このお客さんは予算達成できました。」「顧客先のパンのキャンペーンが終わり、予算が達成できませんでした。」などと説明していく。


本社営業部は、器が小さくて低身長だけど、態度はでかくて高圧的な能力のない部長とその腰巾着4人+新人2人からなる組織である。


運が良ければ、会議中営業部長は居眠りで無言。

運が悪ければ、徹底的に「お前はだからダメなんだ!」「お前は営業マンじゃない、さっさと辞めてくれ!」と上司を順々に怒鳴ったのを聞いたあと、もれなく自分の番が来る。


営業は数字だ!

なんて言うのは建前で、予算を達成した月に限って、いつも以上に部長からのいびりは強くなる。

それは上司も新人も同じだった。頑張って予算を達成した事を褒めるどころか、妬みの種にする。

この会社の営業部は、異様な雰囲気だった。

それに気づくまで、入社してから1ヵ月もかからなかった。


「うちの会社はチームワークでやっている。」

そんなの綺麗事で、軟包装の営業マンは基本的に個人作業で、自分の担当している会社によって、忙しさは違う。

毎週の在庫集計で二時間かかり、さらに月末の在庫集計を5社分やるだけで、4~5時間かかる。


内勤女性が手書きでノートに書くと言う、史上最悪な在庫のつけ方をしている会社で、内勤の書き忘れ、数字の書き間違いが頻発して、毎週お客さんから間違っていますと怒りのメールが来るわ、時間も長時間かかるわ…。


かたや、在庫をしない商社しか担当していない人たちは、在庫集計に時間もとられないし、こっちが在庫集計で困っているのを知っていても、誰一人手伝わない。


受注も一緒だ。

大手を担当していると、特別なことをしなくても、毎日新版の依頼が来る。

多い時は、一日に12件来た。

その日中にパソコンの中に製品情報を登録して、製版部門に渡すための製版指示書を作成し、印刷オペレーターが使うためのでかい規格表を作り、それぞれの見本を貼る。インキ発注担当のために、どこのメーカーの何て言う名前のインキを頼むかを書いた紙も作る。

(リピートで注文が来た場合、その紙を探し出して、コピーして営業が渡す。)

ペーパーレスが最初の会社だったため、

全て紙を使うやり方は時間がかかるから苦手だ。


原紙やインキの着日を確認するなどの、仕入れに関する仕事もやりながら、普通の新規開拓や顧客訪問、クレームの報告書作成も自分一人でこなさなきゃいけない。

毎日5時半で帰る、給料泥棒と呼ばれている部長もいれば、毎日0時直前に退社する一般社員もいる。

実務は誰も手伝わないと言うチームワークだ。



こんな仕事をしたいと希望に溢れて入社したはずが、「会社のために働く」と言うのを美徳とする会社のために、自分を犠牲にして働いた結果、会社だけ良くなる。

昔の軍隊のような発想だ。

特攻隊のように、自分が死ぬことがみんなのためになる。

それがチームワークと言う名の裏に隠された事実である。



本当はもっと会社の為じゃなく、お客さんのために働いて、自分のために働く事が大切なはず。

会社のためとか、仲間のために働きます!なんて、嘘をつくやつは信用ならない。


自分が良い製品を作りたいから、作る!


金を稼ぎたいから、働く!


そう言うシンプルな方が、好感がもてる。

自分が稼ぐために働く事が、会社の利益に繋がり、会社は繁栄していく。


何より、営業マンたちがいきいきと楽しく仕事をしていない会社は、緩やかに衰退していくだろう。




職安で、よく知らない会社が載っていて、応募した。

入社日、自分以外に28才の若い男性もいた。

1人の予定が2人採用したらしい。後に理由が判明する。他社で営業マンとして実績のある若い人を自社に呼んで働かせていたが、営業部長のいじめに耐えられず、営業を辞めて工場に移ったのだ。

その次にまたも20代の若い男性が営業部に入ったが、一ヵ月で営業を辞めたいと言いだし、結局半年で営業を辞めて、工場に移った。

たて続けに若い人が辞めたから、入ってきた人がまたすぐ辞める事を見越して、2人採ったのだ。

その考えが功を奏し、同期の20代の男性が入社8ヵ月で営業を辞め、入社してから1年2ヵ月というスピード退職をしたが、すぐには困らなかった。

結果的に私も部長の思惑通り、1年5ヵ月で辞める事になった。


一般的な会社で言えば、この1~2年で若い人が4人も辞めれば、指導力がない、管理能力がないと評価されて降格処分になるが、この会社では「若い子はすぐ辞める。」「あいつもあいつも、営業には向いてない。」などと、全部人のせいにすることがまかり通ってた。

実際に私が辞めた会社で、直属の上司が管理能力がないと、支店長から降格処分になった会社もあった。

不良品が問題になり、上司が減給処分になった会社もあった。

親会社が私を辞めさせた上司を辞めさせろと社長に怒り、辞めさせなかったことで倒産に追い込まれた会社もあった。

部下が辞めると上司は痛い目を見るのが、本来の世の常だ。


見た目も性格も違う4人。

当然、入社当時は営業マンとして頑張るぞ!と夢を持っていたわけだ。とりあえず半年働いて、辞めればいいやと思って入ってくる人はいない。

若者が夢を見れるようにしたい。

そう思う会社ではないのは確かだ。


営業マンが辞めて、他の部署で残ってくれる場合は、まだいい方だ。

いじめ抜いて辞めさせた営業マンは、その後、他社に移ったあと、もれなく自社の悪い評判を宣伝してくれるセールスマンになってくれる。もちろん無期限、無料、無制限。さらに自社の情報も垂れ流し状態だ。


面接に行けば、前の職場はこういうひどい会社だったから辞めたと説明するだろうし、友人や知人にも話す事はある。

次の企業で、前の職場でこのお客さんにこんな商品を、毎月どれだけ売っていたとか、新しくこういう商品を作ろうとしていた・・・なんて情報は、営業マンという職種が一番活用できる。コンプライアンスを守っていない会社の社員は、辞めた後も守ることはない。そういう教育を受けて育てられたから当然だ。

前の会社の悪口を言ってはいけない。情報漏れはいけないなんて綺麗事は、同業他社の転職が横行している軟包装業界では通用しない。


そのお手本に、同業他社を渡り歩いた営業部長と、その巾着で転職してきた次長は前の会社はここのお客さんにこの商品を売ってたと、常日頃社内で話していた。

前の会社の情報駄々漏れ。


野放しにした営業マンは誰にも止められない。

定年になるまで、話し続けるだろう。

軟包装の質の悪さは、どの業界ともつながりがあるということ。

食品の袋から、自動車関係、建築用に壁紙や養生シートもある。薬なんかの医療から、通販会社のカタログ、トイレットペーパーの日用品。

ありとあらゆる業界につながる。

包装資材を使わないメーカーは、バナナ1本を袋に入れて売るようなご時世に見つからない。

完全に縁を切ることはできない。

「あいつはダメな奴だった」と会社が噂を流すのと、「あの会社はダメな会社」だと人が言うのと、どちらの影響力が強いか一目瞭然である。


最後にしっぺ返しを食らうのは、誰なのか考えれば分かることだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ