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軟包装  作者: なるる
22/24

営業納品。

「大関のチーズのスリットが19日なんだけど、山田さんが19日に欲しいって言ってるんだけど、営業納品するしかないよね。」


中年小太りの櫛田係長が、

大きな声で言ってきた。


山田さんは私に担当替えになり、

挨拶してきたばかりのチーズメーカーだ。


営業納品。


今までの会社と違い、

今の会社は基本的に営業納品を禁止している。


つい数日前にも、

幸田主任が営業納品をしようとした事が、

社長たちの逆鱗にふれ、

赤帽を手配して納品に切り替えたばかりだ。


山田チーズさんは人柄も良く、

私は営業納品で秋田や神奈川県まで行った事もあるから、

納品自体は普通に行ける。

ただ、

主任がめちゃくちゃ責められて、

怒られたばかりで、

二の舞を踏みたくはない。


山田チーズの前担当の海野課長は、

「じゃあ、19日納品するって、お客さんに返事するよ。」と何も考えずに返事しようとする。


「ちょっと待ってください!今、現場の人たちに回覧板を作るので。19日に必ず出来るかも、現場に確認していないのに。予定が変わる事もあるんですから。」


営業が勝手に○○日に出来ると決めつけても、

実際は現場で急用が割り込む時もある。

現場に確認をとらずに、

お客さんに回答するのは危険だ。


それを櫛田係長と海野課長は分かっていない。

海野課長が「19日には出来るから、持って行きますわ。」と、返事を待たずに山田チーズさんに電話していた。


回覧板も作り終わっていないのに、

勝手に約束しないで欲しい。

仕方なく、

19日の予定に工場と山田チーズを書き込み、

営業車の予約をした。


「どうしても必要だから、19日にお客さんが取りに行くって言ってるけど、営業納品するって言っていいだろ?」


こちらから、

取りに来てと頼む前に言ってくれるなんて、

なんていいお客さんだ!

なんて思ったのは束の間。


課長や係長が「担当替えしたばかりだから、お客さんと仲良くなるチャンスだよ!ここで持っていけば、持ってきてくれたんだ!って喜ぶよ。それに、値上げ認めてくれたしね。」


「どうする?持ってくだろ?」

何言ってるんだ、

こいつら。


「私なら、持って行かないですね。クレームの作り直しでもないですよね…。お客さんが、

取りに来てくれるなら、来てもらった方がいいと思います。」


櫛田係長と北山次長が鼻で笑いながら、

「お前が行かないとかじゃないんだよ。会社として行けって言ってるんだから、行くんだよ。値上げも認めてくれたし、お客さんと仲良くなるチャンスなんだよっ。」と毒づく。


「一回持って行ったら、また次も持ってきてくれると思われませんか?」


「それはない。」


「じゃあ、営業納品したら、仲良くなって、売上伸びるんですか?」


「それはないよ。」


「じゃあ、お客さんに取りに来てもらったら、なんなんだアイツは??ってなって、仕事もらえなくなるんですか?」


「そういう事はないよ。」



「会社方針として、営業納品はしないって言ってて、この前も幸田主任がすごく怒られていたじゃないですか。」


「自分が怒られるのが嫌なのか!!」櫛田係長のイライラがピークに達している。

「営業納品するのか!しないのか!」

「それは、上の判断に任せます。」


「北山次長が営業納品した方がいいって言ってるだろうが!」


「じゃなくて、もっと上の営業部長に聞いてみます。」


それからは重たい雰囲気で沈黙だ。


今までも、

社長や幹部と先輩たちは考え方が違うため、

言うことに差があった。


次長以下の人たちに言われるがままに行動すると、

幸田主任のように社長と部長二人から叱責されるはめになり、

出世ルートからも外される。


部長たちの言う通りにすれば、

課長や係長達からは非難される。


どちらを選んでも両者から納得されることはないのなら、

権力の強い方に従う方が賢明だ。



それに、先輩ならば、

自分の部下や後輩が怒られないように間に入るのが普通だと思う。


何故わざわざ後輩が部長に怒られるように仕向けようとするのか。

より一層、こいつは先輩でも上司でもない

ただの肉の塊だと思った。

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