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軟包装  作者: なるる
17/24

新しい年の幕開け。

平成30年が始まる

「仕事は順調ですか?」

口火を切ったのは、大室さんだった。

丸みを帯びた顔立ちに、黒く長い髪を低い位置に一つに結っていて、それが一層若さを象徴していた。


「順調と言えば、順調ですかね。結局、3ヶ月更新で、正社員になれず、派遣のままで。次は3月までの契約です。仕事はどうですか?」


「話す人がいないんですよねー!同じ部署に5人女性がいるんですが、一番新しく入った人で34で、一回り違うんですよ。後は40代や50代で、話が合わなくて。」


「分かる!私も話す人がいなくて。前にいた先輩が辞めて、二人が一人になったから、一日中、誰とも会話をしていない日がけっこうあって。」

「他の会社の仲良くしている人はどうなったんですか?」

「最初の1ヶ月は色々話をしていたんだけど、昼休憩も好きな時間に行くから、2時とか3時に行ったりして。その前後にトイレとか行くから、トイレでも会わなくなって。そしたら、全然誰にも会わないから、話さなくなっちゃった。去年、髪を切った時も、誰にも何も言われなかったよ。席が離れているから、わざわざ今日は雪が降ってますね!と近寄って話しかけるのもなんだし。」


話をしながら、昨日も同じような話をしていたことを思い出した。

昨日は仕事初めで、定時に終わり、携帯電話の着信履歴を確認すると、古い付き合いの前の会社の亀山先輩の名前があった。

女子トイレに駆け込み、電話をすると「おぅ!今、どこにおるんや?仕事でむしゃくしゃしたから、呑みに行かへんか?」と、いつもの声がした。

亀山先輩の会社は地下鉄で一駅の距離。

「いいですよ。どこにいるんですか?」

「名古屋駅や。」


週末の金曜。明日から3連休。断る理由もなかった。それから約2時間愚痴った。

最早、昨日喋り過ぎたせいで、今日は愚痴もあまりでなかった。


「嫌みを言ってくる人はいないし、新丸みたいに今すぐ辞めたいってのはないんだよね。年末も年始の時も、新丸の時は、下っぱが全員を一人ずつ回って『今年、一年ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。良いお年を!』って挨拶やらされたけど、今の会社はそれもなかったんだよね。全員でお疲れ様でした~って挨拶して終わっただけだし。新年も、入る時に明けましておめでとうございますって入っていっただけで、一人ずつは挨拶しなかったし。」

「それって、新丸がおかしいですよ。クリーニング屋の時も、そんなことやらなかったですよ。」


確かに、年末年始に最後に一人ずつ下っぱが回って挨拶をさせられる会社と、やらない会社がある。

上司が一人ずつ回ることはないし、格差がはっきり浮き彫りになるイベントの一つではある。


「ふざけて、すれ違った時にしゃべったりする人が欲しいよね。」

「給料いいし、休みもあるし、続けられるっちゃ、続けられるんですよね。私からは以上です。」

ファミレスで一時間ほどランチして、手早く近況報告は終わった。

9月末まで一緒に働いて、その後は2回ごはんに行っているから、さすがに3度目では新しい話題は出てこない。

大室さんにしてみれば、新しい職場でまだ2ヶ月しか経っていない。


お互い、充実感があるわけではないが、辞めたいと言い切れるほどでもなく、しばらく働ける雰囲気ではある。

会話が短めに終わったのが、新丸の時のように漆黒のブラック会社ではない証拠だ。


簡単に初詣をして、また次回会社が変わっていないよう、祈っておこうと笑い飛ばして解散した。

今年の正月は穏やかだ。


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