プチギフト。
この小説を全ての元上司に捧げます
「この前大きな声を出してごめん。」
低いトーンで次長がロクシタンの紙袋を渡してきた。
「ありがとうございます!」と素直に受けとる。
経理の女の子にも次長が渡しに行く。
数日前に次長が主任に朝からキレて、机を蹴って、書類を2度にわたってぶちまけて、怒鳴り付けたことがあった。
前の会社でもキレて机を蹴る同期を2回見た。(机には未だに足の跡が残ってる。)
他にもキレて怒鳴り付けて、ノートを投げ付ける営業部長も見た。
あいつにいたっては、九州の営業を電話で怒鳴る時に「そんなのただのオマエがマスターベーションしてるだけだろ!」と、必ず下ネタに例えるような無能な奴だから、言い返せない時はとにかく怒鳴ったり、物を投げたりしていた。
次長は怒った数日あと、
何故か私に「この前大きな声を出した時に、いた?」と聞いてきた。
「いましたよ。次長を怒らせないように気を付けます。」とにっこり笑顔で返した。
それを気にして、女の子たちにロクシタンのプレゼントを買ってきたのだ。
怒鳴られたのは主任であって、社内には色々幹部もいたけど、何故か女子にだけお詫びを買ってきた。
謎の行動ではあるが、なかなか気にしぃのかわいい人である。
それにしても、ロクシタン。
最初の会社で知り合った原紙メーカーの課長にロクシタンのハンドクリームを一人で5本もらったことがある。
私の手は一体何本あるんだ。
かれこれ5年くらい前。
その時に初めてロクシタンというメーカーを知った。
前の会社の内田専務も、中国出張に行くと、
ロクシタンのハンドクリームを買って女子にだけ配った。
ハンドクリームを使わないから、
他の女子社員に私の分をあげようとすると、
「いらない。実は・・・」と引き出しを開けて、
中にたまって使われていないハンドクリームたちを見せてくれた。
1シーズンに何回、
ハンドクリームを買ってこれば気が済むんだ。
ロクシタンのハンドクリームの小さいチューブは1000円前後でプチギフトにはいい価格帯だ。
中国の出張の免税店では、
さらに安く買えるらしい。
パッケージもかわいらしいのだが、
ここのハンドクリームをプチギフトに送られた途端、
どこか飲み屋のネーチャンにプレゼントで買わされて、
覚えたんだろうなって気がしてしまう。
昼休みに次長が「それ、食べ物じゃないよ」と言ってきたので、
「わかりますよ。内田専務も、よくロクシタン買ってきましたね。」と笑うと、
「中国出張の時だろ?空港の免税店で800円とか、下手すると3分の1で売ってるから、ネーチャンに買っていくんだわ。」との返事。
「そんなイメージです。」
くすくす笑いながら、紙袋を開けるとリップクリームが入っていた。
今シーズンはまだリップクリームを買ってなくて、ちょうど欲しいと思いながら、数カ月過ぎていたから、素直に嬉しかった。