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軟包装  作者: なるる
13/24

尻ぬぐい。

派遣は辛いな。

「12時の回で来たデータで、送り先が北海道なんですが、今日出荷の明日着になっているものがあるんですが。商品コードは・・・」

物流会社の担当さんから電話がきた。

毎時00分に物流センターに入力したデータがとぶ。

実際に確認できるのは、

20分くらい経過したあと。

何か間違えていれば、

このくらいの時間に電話がくる。


送り先が北海道。


北海道に納品先があるお客さんが頭に浮かぶ。


今週から総務の係長と、

先輩と3人で出荷指示の入力をしている。

どちらかが間違えたな、とため息がでる。


「北海道だから、翌日なんて着きませんよね。分かりました。確認してすぐ折り返します。」


当日出荷のタイムリミットは13時。

自分が今やっている作業の手を止めて、

すぐに確認して正しい情報を伝えないといけない。


隣の席の係長に声をかける。

「今日出荷指示を入れたもので、北海道に送るものありませんか?今日出荷で明日着になっていると連絡が来たんですが・・・」


「あぁ。北海道のあったよ。」


1枚のプリントを差し出す。

そこに北海道工場への出荷指示を印刷した紙に、

坪内先輩のハンコの付箋が貼ってあった。


「次長より。第2工場へ全量送る。坪内。」


第2工場??

北海道工場への送り先に、

第1工場や第2工場なんて登録はない。

「第2工場?これって、本当に北海道に送るように言われたんですか?第2工場なんて聞いたことないんですが。」


「いや、分かりません。第2工場に送るように次長から頼まれただけなので。」と、坪内先輩が断言する。


第2工場と言われたら、どの場所なのか普通確認するだろう。

派遣として働いて2ヶ月。

最初の配属は希望していない営業サポートと呼ばれる、内勤事務。

派遣ともなると、「それは○○係長がやりました。」「××先輩が指示したやつなんですが。」なんて、気軽に言えない。

「人のせいにするのか」と陰口叩かれそうだし、無責任な人だと思われたくない。

怒っているように、周りからみられないように、慎重に言葉を選びながら、先輩と係長に聞く。


「北海道だと、今日出して明日には着かないんですが、本当に全量を北海道に送ってくれって言ってたんですか?」


「あっあっ。次長から頼まれただけなので、分からないです。」


坪内先輩が吃り出す。

時間の無駄だと思い、

左手はすでに受話器をとって次長にかけていた。


「剣先袋を今日出しで、北海道工場に頼まれましたか?」


「違うよ。うちの大口工場に検品で全部戻してくれって頼んだんだよー。」


「分かりました。ありがとうございます。」


先輩がしっかり納品先と何故送るかを確認してない。

さらに係長も第2工場と書いてある付箋を見ずに、デフォルトで登録してある『北海道工場』にそのまま翌日着で入力している。

北海道なんて、

常識的に考えたら翌日に着くわけないから、入力時に気づくはず。


2人のミスの連発のせいじゃん。


そんなことを言っても解決するわけもなく、相手が2人とも自分より上の立場だから、間違えてるよ!と注意もできない。

苛立ちと仕事が進まなくて半泣きの気持ちをこらえて、

受話器を再びとる。


「申し訳ありません。北海道送りのデータは間違いです。弊社の第2工場に戻していただきたいのですが、今から切り替えられますでしょうか・・・」


一日に何回、私が謝らなきゃいけないんだ。

全部、私が悪いのか。


言われた通り引き受けた内勤の仕事は、誰も長続きしないと上司から聞いていた仕事である。

私に任せてください!と、3週間前に宣言した自分が恥ずかしくなる。

今週月曜から、毎日他の人のミスの電話がとまらない。焦って自分もしたことのないようなミスをする。

自分のカバーをするだけでも精一杯なのに、人の分も降ってかかる。

ミスが更なるミスを呼ぶ。


これも私の仕事だ。

これは私の仕事だ。

これが私の仕事だ。



ひたすら謝って、

納品先を変えてもらった。


社内では全てうまくいっているように、ふるまうしかない。何か人に言われないように、泣いてるところも、怒っているところも見られてはいけない。


目に熱いものを感じながら、「納品先、第2工場に変えました。」と、にこっと先輩に笑って、またパソコンに向かった。







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