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幸セノ終ワリト絶望ノ始マリ

「悪いがここ先は通行止めだ」


 キリヤさんに言われた場所、その一つ上の階で止められた。黒い靄と青い靄が道を塞いでいる。


「ベインさん……その先で何をするんですか」

「なに、一人殺すだけだ」

「殺……す?」

「そうだ。何があってもここから先には通さないし、邪魔をするなら実力をもって排除する」


 いきなり真っ黒な槍を創り出して向けてくる。


「ベインさん、さすがにこんなところで戦闘行動は……」


 あっちこっちにセンサーがあるから、すぐに隊長格が飛んできて鎮圧される。鎮圧できないのはスコールさんとレイズさんの喧嘩くらいだ。悪魔の上級種であっても隊長さんたちは止まらない。


「俺はレイズの為であれば誰であろうが倒す。頼むから下がってくれないか?」

「い、嫌と言ったら」

「通せば俺がレイズに殺される。お前にケガさせれば俺がスコールに消滅させられる。んなもんで……真面目なお願いだ、帰ってくれ」

「だったら私は――通ります!」

「あ、ちょっ、待てっ!」


 すっと伸ばされた手を躱して階段を飛び降りる。

 通しちゃいけないけど私には手出しができない、だったら無理やり行ってしまえばいい。それに正式な手続きをしていない通行止めなら強行突破しても上から怒られないし、ここでベインさんが先に手を出せば隊長さんたちの猛攻にさらされるのはベインさんだけだ。


「行くな! 頼む!」


 着地してすぐに態勢を低くする。するとすぐ上をベインさんが通り過ぎて壁に激突した。ゴォンッ! とすごい音がして壁が凹んで……あーこれは後で酷いことになりそう。


「邪魔しないでください」


 ベインさんが動き始める前に走り出す。何があるのか見てしまえばそれで終わる。こんな通行止めを用意するということはそこそこ疚しいことなんだろう。ベインさんも一人殺すと言っていたし。


「チィッ、闇よ」


 目の前に黒い靄が噴き出て、立ち止まった瞬間に光の槍が床から突き出た。一瞬で槍が消えたけど……天井に穴が……。


「べ、ベインさんいくらなんでもそれはないんじゃ……」

「属性を考えろよ。俺は黒と青、つまりは闇と水だ。今のは光の槍、俺のじゃない」

「え、じゃあ」

「よく見ろよー」


 黒い靄がまき散らされ、廊下が若干陰りを帯びるとそれが良く見えた。天井壁床中空すべてに白い魔方陣が刻まれている。魔方陣と言っても白い円で外側に三角形が並んで円の中に文字? が一つあるだけ。


「自然消滅型の刻印型神術、スコールのものだ」

「スコールさんの……。でもスコールさんは今までこんなの使ってませんでしたよ」

「あいつはな、基本的には使わない派なんだよ。出来得る限りは自力、危なくなれば魔法か魔術、最後に神術。でも事情が事情なら最初から使う」

「これ解除できます?」

「解除したら解放された力の流れにさらされて俺たちが倒れるけどな」

「だったら」


 踏まないように、じゃなくて魔方陣の延長線上に触れないように通ればいい。あっちこっちにあるんなら触って動くとかいうものじゃないだろう。


「やめとけ」


 でも首根っこを掴まれて進めなかった。


「どれかを避ければ別のに当たる。そういう風に配置してある」

「…………。」


 よく見れば途中から完全に進めないようになっていた。


「諦めろ。無理やり行けば死ぬぞ」


 ひらひらとベインさんが手を振って戻っていく。

 だけどまだ諦めない。見る限りは廊下だけ、換気口には仕掛けられてるようじゃないし、最近清掃が入ったから綺麗なはず!

 近くの空き部屋から椅子を拝借して、換気口を開ける。ここのは引っ張って持ち上げたら開くタイプだから簡単。縁に手をかけてぐっと体を持ち上げて匍匐前進。

 ……これ、出るときどうしよう。

 やってしまった後で急に来る不安を抱えながら進んでいった。

 しばらく進んでいくとスコールさんたちのいる部屋の中が見える位置に着いた。そぉっと覗く。

 するとレイズさんと目が合ってしまった。あっちはぎょっとした表情だけど、私もびっくりして動けない。


「レイズ……いいんだな?」

「……うん」


 ベッドの上に身体を寝かせたレイズさんが不安そうな表情をして見上げてくる。スコールさんにズボンを脱がされて恥ずかしそうに膝を擦り合わせてもじもじしているけど、抵抗しようとか逃げようとかする素振りが一切ない。

 これってもしかして……いや、もしかしなくても……。


「怖いか」

「…………怖い、初めてだし、それに」


 ちらっと私に目を合わせてくる。


「始めるぞ」

「……んっ」


 そんなレイズさんの顔を隠すようにスコールさんの頭が覆いかぶさって、離れた。スコールさんがレイズさんの下着に手をかけ始めると、レイズさんが口の動きだけで「ごめんなさい」と……。


 私は……最後まで見ることはなく、これ以上見たくなくて逃げ帰った。




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